新型コロナウィルスによって世界経済がストップし、21世紀の世界恐慌ともいわれる厳しい状況の中で社会人としてのスタートをきった2020年度の新入社員。この雰囲気の中では給料をもらえるようになったからといって浮かれた気分になる人も少ないでしょうが、100年に1度レベルの荒波を受けて社会人になったのですから、この経験を糧にしない手はありません。

  • 新社会人のお金のキホンを学ぶ(写真:マイナビニュース)

こんなとき不安を小さくしてくれるのは、何といっても「お金」ということを実感したはず。将来のためにお金とどう付き合えばいいのか、貯まる人になるにはどうすればいいかを考えます。

1. 給与明細の内容をしっかり確認しよう

銀行口座に振り込まれるお金を給料だと思う人も多いようですが、それは大きな間違い。実際に自分が受け取っている給料は、会社が支給した金額から健康保険や年金などの社会保険料、所得税や住民税といった税金を差し引いたもの。この内訳を確認できるのが給与明細です。給与明細をきちんと見なければ自分の本当の給料はわかりません。

下は給与明細の見本です。

書式は会社によって異なりますが、書かれていることはほとんど同じです。大きく分けると、「勤務の状況」「支給の内容」「天引きされる保険料」「天引きされる税金」「会社独自の控除」の項目に分かれています。中でも給与の仕組みを知るためにきちんと理解しておきたいのが、保険料と税金です。それぞれについて簡単に説明します。

  • 健康保険: 入社すると、ほとんどの場合、その会社が加入している健康保険組合に入ります。保険料は会社と自分で折半するので、給与明細に記載されているのは自己負担分の半額です。

  • 介護保険: 介護保険料を負担するのは40歳以上。39歳までの人は差し引かれないので空欄になっているはず。40歳以上になると、健康保険料と同様に会社と折半で負担します。

  • 厚生保険: 正確には厚生年金保険料。いわゆる年金の掛け金で、会社員は厚生年金に加入します。健康保険などと同様、会社と折半で負担します。

  • 厚生基金: いわゆる企業年金と呼ばれるもので、加入の有無は会社によって異なります。厚生年金の上乗せ部分になるため、加入していると将来の年金受取額も多くなります。

  • 雇用保険: 失業した時などに給付を受けられる雇用保険の保険料。半分ずつではありませんが、会社と負担を分け合っています。

  • 所得税: 給与額に応じて支払う税金。本来は1年単位で計算しますが、会社員は毎月の給与から概算で「源泉徴収」されます。過不足は12月の給料を受け取るときに「年末調整」を行い精算します。

  • 住民税: 前年の給与に基づき、6月から翌年5月にかけて毎月徴収されます。社会人1年目は前年の給与がないので住民税は差し引かれず、2年目も4月からなので税額は1年の4分の3。1年分全額の負担となるのは3年目からなので、昇給額次第ではあるものの、3年目の手取り額より1年目の方が多かった、ということになる可能性があります。

入社して時間がたつと給与明細への関心が薄れるかもしれませんが、何年たっても1年に1回は給与明細を詳細に確認することを習慣にしてください。手取り額が増えたら貯蓄額も増やすことが、着実に貯められる人への第一歩です。

2. 天引きなどで積み立て貯蓄をスタート

「1カ月生活してお金が残ったら貯金しよう」では、いつまでたってもお金は貯まりません。貯蓄のキホンは「先取り」です。会社に財形貯蓄や社内預金などの制度がある人は、それを活用して天引き貯蓄を始めましょう。制度がない人は、給与振込口座から給料日の翌日に引き落とされるよう、銀行で自動積立定期預金の手続きをしましょう。この手続きをすれば、一定額を確実に貯めることができます。

金額は最低でも手取り額の1割、実家暮しであれば2~3割といいたいところですが、新社会人はイレギュラーな出費もあるでしょうから、あまり無理をすると何かあったとき困ります。また、せっかく始めてもすぐに止めてしまっては意味がありません。まずは、お金を貯めなくてはいけないという意識作りと、金額にかかわらず毎月貯蓄するという習慣作りが大切ですから、金額はいくらでも構いません。とにかく、先取りで積立貯蓄をする仕組みを作りましょう。

3. 家計簿アプリなどで支出をチェック

家計管理のキホンは「何に」「いくら使っているのか」を把握すること。家計簿というと大げさに聞こえますが、要するに使ったお金を記録しておきましょうということ。メモの方法は何でも構いません。スマホの家計簿アプリを利用する、手帳に手書きでメモをする、レシートを保存しておくなど、自分が負担にならない方法がベストです。そして月末には集計をします。大切なのは記録をするよりも、集計をして結果を振り返ること。結果を見れば、自分のお金の使い方の反省点が見えてきます。

記録をすることが苦にならない、むしろ励みになるという人は続けてください。「続けるなんてムリ」という人は1カ月で終わりにしても構いません。ただし、ムダ遣いが増えて来たかも? と思ったら、また1カ月記録をしてみましょう。これを習慣にすれば、使い道を振り返ることでしっかり貯められる人になります。

4. クレジットカードのリボ払いは厳禁

社会人になってクレジットカードを作ろうと思っている人も多いのではないでしょうか。クレジットカードがあると現金を持ち歩かなくて済むため、落としたり盗まれたりする心配がなく安心です。ただし、利用履歴をきちんと管理をしないと多額の借り入れを作ることにもなりかねません。その危険性が特に高いのが「リボルビング払い」、通称リボ払いです。

リボ払いとは毎月あらかじめ決めた一定額を返済する方法で、下図の定額方式や残高スライド方式が主な返済方法。購入した商品ごとに回数を決めて支払う分割払いとは異なり、残高全体に対して毎月返済することで合計残高を減らしていきます。

しかし下図を見てもわかる通り継続的に買い物をしていると、残高は減るどころか増える一方ということにもなりかねません。

リボ払いは残高が増えても毎月の返済額が変わらないため支払残高に対する意識が薄れ、つい買い物をしがちです。しかし借入額が増えるとそれだけ返済期間が長くなり、利息の負担も増えます。ところが返済総額が分かりにくいので、利息の多さを実感できないのです。

にもかかわらずクレジットカード業界はリボ払いへ誘導する傾向があり、カードによっては返済方法の初期設定がリボ払いになっているものさえあります。自分ではリボ払いを選んだつもりがなくても、リボ払いになっているのです。

いまの時代、クレジットカードは必要なものですが、支払いは基本的に1回払い。手数料を払ってまで使ってはいけません。

5. 投資は半年分の生活費を貯めてから

「老後資金2000万円不足問題」が大きく報道されたせいか、20代から老後の心配をする人が増えています。とはいえ預金金利が低いため、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)などで投資をしないとお金が増えないと考える人がいます。もちろん長期・分散・積立で投資をすることは資産形成に役立ちますが、それは最低でも半年分の貯金ができてからにしましょう。

今回のコロナウィルスショックでわかったと思いますが、いざというとき役に立つのはやはり現金です。「ある程度のお金=半年分くらいの生活費」を、すぐに現金化できる預金で持っていれば何があっても困ることはありません。

社会人1年生のときから無駄な支出をせずコツコツと積み立てをして、お金を貯める習慣を身につけておけば、将来、役に立つ日が来るはずです。