第一生命経済研究所はこのほど、「新型コロナの情報はどこから得ているのか?― 新型コロナウイルス意識調査より ―」と題したレポートを発表した。
同研究所では、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、人々の生活や意識にはどのような変化が生じているのかを探るための緊急アンケート調査を、首都圏などに緊急事態宣言が発令される直前の2020年4月3日〜4日、全国の20〜69歳男女1,000人を対象にインターネットにより実施。レポートでは、この調査結果から新型コロナウイス感染症に関する情報入手の実態を報告している。
新型コロナウイルスに関する情報収集を、積極的に行っているかたずねた。全体では、7割を超える人が「新型コロナウイルスに関する情報収集を、積極的に行っている」と回答した。性・年代別に見ると、情報収集を積極的に行っている割合は、男性では50代、60代の79.0%が最も高いのに対し、女性では30代、50代、60代で8割を超えており、全ての年代で7割を超えている。
次に、同居家族による傾向を見た。「同居子がいる」家庭、「65歳以上同居者がいる」家庭では、情報収集を積極的に行っている割合が8割を超え、それらと同居していない家庭および、「ひとり暮らし」家庭よりも、情報収集を積極的に行っている傾向が見られた。新型コロナウイルス感染拡大による学校の一斉休校や高齢者への感染リスクなどが報じられる中、こうした層の情報収集への関心がより高くなっていることが推察される。
それでは、人びとは新型コロナウイルス感染症に関して、どのような情報源から情報収集しているのだろうか。調査結果を見ると、全体では「テレビのニュース」が80.3%と最も高く、続いて「インターネットの情報サイト」(54.8%)、「テレビのワイドショーなどの情報番組」(40.2%)と続いた。
官公庁や自治体が公表する一次情報よりも、テレビやインターネット、新聞といった媒体を介した二次情報が、情報収集の主流となっている。性別で見ると、「テレビのワイドショーなどの情報番組」「SNSで不特定多数によって拡散される情報」「人との会話や口コミ」の3つの項目において、男女で5ポイント以上の差が出ており、女性の方が多方面から情報を得ている傾向が見られた。
性・年代別では、高齢になるほど「テレビのニュース」「テレビのワイドショーなどの情報番組」「新聞・雑誌の記事」といった従来型のメディアの割合に高い傾向が見られた。さらに、20代女性の半数が「SNS で不特定多数によって拡散されている情報」と回答している。
同居子がいる家庭や65歳以上同居者がいる家庭では、新型コロナウイルスに関する情報収集を積極的に行っているが、この背景には、感染や生活の変化への不安があると推察される。
新型コロナウイルス感染拡大に関する不安については、未就学児や小学生と同居する家庭で、「自分が感染すること」「家族が感染すること」「感染したかどうかの検査をしてもらえないこと」「家計が苦しくなること」「食品や日用品など、必要なものが手に入らなくなること」「子どもの教育・学力に影響が出ること」について、他の属性よりも「非常に不安」と感じていることがわかる。
特に小学生の子がいる家庭では、「自分や家族が感染することで、差別的な扱いを受けるかもしれない」「子どもの教育・学力に影響が出ること」について、他の属性に比べ5ポイント以上の差がある。65歳以上の同居者のいる家庭では、「収入が減る・なくなること」への不安が高い傾向が見られたが、それ以外は突出して高い項目は見られなかった。
この結果を踏まえ、同居子がいる家庭および65歳以上同居者のいる家庭での新型コロナウイルス感染に関する情報源を見ていくと、大きな傾向は全体と変わらないものの、小学生の子どもがいる家庭では「インターネットの情報サイト」「テレビのワイドショーなどの情報番組」「人との会話や口コミ」への回答が他の属性よりも高く、さまざまな情報源から情報収集していることがわかる。
また未就学児のいる家庭では、「テレビのニュース」「ワイドショーなどの情報番組」「インターネットの情報サイト」が全体よりも低い一方、「SNS で不特定多数によって拡散されている情報」が他属性より高く、情報収集にSNS を利用する傾向が相対的に強いといえる。
新型コロナウイルス感染拡大は、日常生活への制限だけでなく、自分や家族、身近な人の生命にかかわる可能性があるだけに、多くの人は積極的に情報収集を行っていることがわかった。また、年代や同居する家族の属性によって情報収集の積極性や手段に特徴あることが明らかになった。今後は、10万円給付金や各種の助成金などの手続きが本格化する。こうした手続きは、個々が各自治体に申請しなければ受けることが出来ず、情報を知っているか否かが生活にも大きく影響することになるだろう。
情報源の主流となっているテレビやインターネットは、分かりやすく編集された情報や識者のコメントを提供しており、視聴者の理解を深める点で一定の意義がある。ただ、上述したように、必要な人が必要なサービスを漏れなく享受できるように、対象に応じたきめ細かな情報を、様々なチャネルを通じて発信することが、今後さらに重要となっていくものと考えられる。