新型コロナ・ウイルスへの懸念から、世界中で外出規制や経済活動の停止が広がるなど前代未聞の事態が続いています。これを受けて、世界経済は、1930年代の世界恐慌や、「100年に一度の危機」とされた2008年のリーマン・ショック不況より厳しい、史上最悪の「コロナ大恐慌」が始まっているといった警戒論も増えています。
私は、3月から「そうだったのか! FX大相場の真実」といった連載を書いていますが、その中でもとりあげる「リーマン・ショック」などを参考に、「史上最悪の大恐慌」とは具体的にどのようなものかを考えてみたいと思います。まず今回は雇用と景気について。
【失業】=米失業率10%超、失業者は1,000万人超へ!?
「リーマン・ショック」とは、2008年9月に米大手投資銀行、リーマン・ブラザーズが破綻したことをきっかけに世界的な株価大暴落など金融市場の大混乱が広がり、1930年代の大恐慌以来の「100年に一度の危機」といわれた現象です。 では、その中で雇用情勢はどのような悪化をたどったのか。まず米国の失業率は、2007年までは4%台で推移していましたが、2008年に入り5%を超え、さらにリーマン・ショックの後から一気に悪化が加速しました。そしてリーマン・ショックから約1年後には10%を突破したのです。
雇用状況も、やはりリーマン・ショック以降急悪化となりました。米国の雇用統計にはNFP、非農業部門雇用者数という指標がありますが、それは2009年にかけて1カ月で60万人以上も激減する状況が数カ月にわたって続いたのです。NFPは、リーマン・ショック後の1年で約700万人の減少となりました。
では、次に1930年代前半の大恐慌について見てみましょう。大恐慌とは、1929年10月のNY株大暴落をきっかけとして起こった「20世紀で最も深刻な世界的不況」とされた現象でした。
この時の米失業率はピークで25%にも達しました。失業者は1,200万人にものぼったとされます。どちらの数字も、「リーマン・ショック」をはるかに上回り、確かにきわめて深刻なものでした。
さて、コロナ・パニックが発生した3月の米失業率は、2月の3.5%から4.4%に急上昇、そしてNFPも一気に70万人の激減となりました。初動から、リーマン・ショックを上回る急激な悪化を示す結果となったわけです。
以上のように見ると、リーマン・ショックより厳しい、そして「20世紀で最も深刻な世界的不況」大恐慌に迫る「コロナ大恐慌」となるなら、米国の失業率も10%を大きく上回り、失業者は1,000万人以上発生するような事態も覚悟しなければならないかもしれません。
【景気後退】=景気は少なくとも2年前後は厳しい!?
米国のGDP成長率は、リーマン・ショックが起こった2008年第4四半期に6%以上の大幅なマイナスとなりました。そして2009年第1四半期も4%以上の大幅なマイナスが続き、結果的には約1年マイナス成長が続くところとなったのです。
それでも、世界のGDPの減少率は、リーマン・ショック前後の1年で1%程度のものでした。これに対して、大恐慌では、1929年から1932年にかけて、世界のGDPが25%も減ったといわれていますから、これで見てもケタ違いだったようです。
大恐慌においては、1932年に米国で政権交代が起こり、FDR、フランクリン・ルーズベルト大統領が誕生、ニュー・ディール政策を展開する中で景気悪化に歯止めがかかり、回復に向かい始めました。それでも景気が回復に向かうまでに約3年かかったわけです。
ただ、その後も景気回復は鈍く、大恐慌の悪影響は、1936年からの第2次世界大戦による戦争特需の発生まで残るところとなったのです。
以上のように見ると、「コロナ大恐慌」が展開するなら、少なくとも2年前後は厳しい景気の状況が続くことを覚悟する必要があるのかもしれません。