各位は目上の人に使っても問題ない理由

上司や取引先など、目上の人に使用しても問題ありません。その理由として、「各位」は「皆様」「皆様方」という意味を持つ敬称の一つで、複数人を表す言葉の後ろに付き、「会員各位」ならば「会員の皆様」、「参加者各位」であれば「参加者の皆様」というように、複数の人を対象としながらも、一人ひとりに敬意を表すことのできる言葉だからです。

  • 「各位」の正しい使い方を把握していますか?

【位】という字は「品位」「品格」「地位」を表し、「様」と同様に敬称としての役割を持っているためです。ただし、【各】という字は「おのおの」「それぞれ」などの意味を持ち、複数の人物を指していることから、あくまでも、個人ではなく複数人(2人以上)を対象とするのが適切です。

また、『広辞苑第六版 第二刷』(新村出編、岩波書店)には、「多く、改まった席上や書面で用いる」とも記載されており、改まった席上での挨拶で用いられることもありますが、ビジネスの場合には、文書冒頭の宛名部分で使用されることがほとんどです。

「各位」を使う時の三つの注意点

「各位」を使う時には、幾つか注意すべき点があります。

対象人数によって使い分け

「各位」は、あくまでも複数人に対して用いる敬称であって、個人宛てに使用するものではありません。また、企業や学校などの組織・団体に対しては、「御中」を用いるのが一般的です。つまり、個人宛てには「様」を、組織・団体には「御中」を、そして、複数人に宛てる場合には「各位」を使い分けて使用するのが適切です。

各位 複数人に対して用いる
御中 企業や学校などの組織・団体
個人

敬称の重複に注意

「各位」は敬称ですので、すでに敬意を含んでいる表現です。そのため、「〇〇各位殿」「〇〇様各位」「各位様」と表現するのは、「〇〇様様」と同じことで二重敬語になってしまい、かえって失礼にあたります。

それでも、「様」を付けないとやはり失礼ではないか……と不安に思うようであれば、各位の代わりに「〇〇の皆様」と表記すると良いでしょう。また、「各位」のみで表記しても問題ありません。

敬称の重複が許されるケース

基本的に敬称の重複は不適切ですが、「お得意様各位」と「お客様各位」については例外になります。文法上はいずれも誤りですが、「お得意各位」や「お客各位」という表現が日本語として不自然かつ失礼な印象であるため、「お得意様各位」「お客様各位」という表現が一般化しています。

また、お得意様の中には上得意様のようなひいきにしてもらっているような方の場合は、「各位」でまとめずに、「〇〇様」と個人宛ての文書を作成し、別途送付する方が良いでしょう。

敬称の重複NG 敬称の重複OK
各位様、〇〇様様、〇〇各位殿 お得意様各位、お客様各位

「各位」を用いた例文一覧

基本的に仕事関係で使う事が多い各位の利用方法をまとめてみました。判断材料の一つとしてください

■他社の複数の担当者に宛てる場合

  • ○○株式会社 営業担当各位

■多数の企業や団体、顧客などに宛てる場合   ※「事務所移転のお知らせ」「〇〇セール開催のご案内」「〇〇開催のお知らせ」など

  • 取引先各位
  • お客様各位
  • 株主各位
  • 販売店各位
  • ご来賓各位
  • 報道機関各位

■社内で複数の人間に宛てる場合

  • 従業員各位
  • 開発部 関係者各位
  • 担当各位

■社内で一つの部署・グループに宛てる場合

  • 企画部各位
  • 営業一課各位
  • 〇〇プロジェクトメンバー各位

■社内の役員・一部の役職に宛てる場合

  • 役員各位
  • 店長各位
  • 部長各位

■取締役や専務など上層部も含め社員全員に送付する際に、明らかに高い地位にある人と従業員を一括りにすると、失礼だと感じる人もいるようです。そのような場合には、それぞれ分けて記載すると良いでしょう。

  • 〇〇取締役
  • 専務
  • 従業員各位

「皆様」「各位」の利用率調査結果

「各位」は「皆様」と同義ですが、では、世の中では、不特定多数の人に宛てたメールを送付する際に、「各位」と「皆様」のどちらを使うことが多いのでしょうか? マイナビニュース会員249名を対象にアンケートを実施しました。

調査時期: 2020年1月29日~30日
調査対象: マイナビニュース会員
調査数: 男女249名
調査方法: インターネットログイン式アンケート

Q.不特定多数にメールを送付する際に、「皆様」「各位」どちらを利用しますか?

皆様 : 7.2%
複数の相手と同時にメールのやり取りをしない : 20.5%
その他 : 4.0%
各位 : 44.6%
皆様、各位どちらも使う : 23.7%

調査の結果、「各位」(44.6%)を使う人が圧倒的に多く、次点は「どちらも使う」で23.7%。「皆様」と回答した人は7.2%にとどまりました。

「各位」は文語的、「皆様」は口語的な言葉であるという見解もあるようで、「関係者各位に心より感謝申し上げます」よりも、「関係者の皆様に心より感謝申し上げます」の方が感謝の気持ちが伝わりやすく、良い印象を受けるように思います。

一方の「各位」は、非常にかしこまった印象を受けます。いずれも、文語・口語の両方で使用して問題ありませんが、内容によって使い分けると良いかもしれません。