今や動画クリエイターがテレビ番組に出演し、芸能人がYouTubeに進出するのが当たり前になりつつある時代。子どもたちからも羨望の眼差しを向けられ、令和を代表する人気職業の一つとなったが決して楽な道ではない。
そんな世界に2014年に飛び込んできたのが、ゲーム実況を中心に活動する動画クリエイターの「ミラクルぐっち」さん。小中学生を中心に幅広いファンがいるぐっちさんに、動画クリエイターの道を志した原点と「生みの葛藤」を聞いてみると、多くの人を笑顔にするための努力の一端を垣間見ることができた。
■動画クリエイターの原点
――「笑い」を意識した動画制作をしていますが、その「原点」は?
もともと小学校の時寂しがり屋さんで、友達がいない空間とかがすごい苦手で、「いつかはこいつらと遊ばれへんくなる時が来るのかなぁ」って、心のどこかで思っていたりしていた。だからこそ、「今この一瞬に感動しよう」と思って。
自分のことを覚えてくれてる、記憶してくれてる人の数が多ければ多いほど、きっとそういう人間ってすごい魅力的で、そういう人になりたいって。思春期に入りかけの多感な時期にそんな影響もあって、自分のやってることがちょっとでも、凹んだこととかがあった人に、ぐっちの動画観て元気になってくれたらええなぁって。
――「お笑い芸人」を目指していたそうですね?
自分が芸人を志すきっかけになったのも、枠っていうのが芸人だっただけで、その中にあったものはきっとその動画クリエイターでも叶えられていたと思うんです。
小学生の時って、友達と遊んでいても、夕方なったらお家に帰らないとだめじゃないですか。一人ですごい退屈してて、その時に、ちょうどそのお笑い芸人さんのブームが来てる時で、テレビとしてもすごいエネルギーがあったんですよね。その時に「今、友達とゲームできなくてすごい寂しいけど、この人たちめちゃくちゃエネルギーがあって、なんか俺に生きる希望を与えてくれてる気がする」って、小学校6年生で思ったんです。
――約6年の活動で6,000本以上の動画をアップしていますが、これはかなりのハイペースだと思うのですが……?
好きなタイトルがあったら、視聴者層のニーズとかみ合っていれば、1日3本とかは量産できます。流行るタイトルがあった時は、2017年の暮れくらいで月100本はアップしていましたね。ただその期間はクリエイティブなことはおろそかになってしまって、どうしても一人でやっているので難しいなって思いますね。
――「U-FES.」など、画面上でのコミュニケーションとリアルに会うイベントでは、受ける刺激は違うものですか?
「U-FES.」だったりは、すごく多くのクリエイターさんと、「U-FES.」というお祭りを楽しみにしてくれているお客様やファンがいて、その熱量で会場がすごく一つになっているんですよね。
「U-FES.」では、ステージ自体がチームとして動いたりだとか、掛け合いであったりだとかがを楽しむ場や、僕個人に関しては本当にそれこそ動画のままでいくことで、コメントを打たずに楽しみに観てくれてる人たちもいるわけで、その熱量をそのまま感じられるっていうのは、実際会ってみないと体感できないですね。
イベントっていうものも僕は3年ぐらい前から本格的に立たせて頂いて、動画撮って、モニターに向かって喋って、モニターとにらめっこして作業してて、画面の向こうの人が見えないんですよね。「ホンマに人いてるんか」ってたまに思う。画面の向こう側の人を実際に見てみたいっていう、想いがぶつかった時の感動っていうものは、イベントでしか味わえないですね。
――実際に会うといえば、北海道の小学校でサプライズ授業を行っていましたね。
1度は僕が小学校に行ってみたいなっていう昔からの思いがあって、実際僕のことを知ってくれてる小学生って、どれくらいいるんだろうな?っていうところをリアルにリサーチしたいなって思いもありました。
僕が行くっていうことを子どもたちは知らないわけですから、一発間違ったらこれ大丈夫かなって寸前までドキドキしてたんですけど、「僕のことを知ってる人?」って言ったら、もう9割弱ぐらいは手上げてくれてて、「動画クリエイター、スゲー」って、こんなに子どもたちの日常の中で、動画やYouTubeを観るという習慣が、ご飯を食べることのように根付いてるんやって思いました(笑)
――サムネイルの作り方を教えたり一緒に体育をしたりと、かなり充実して時間だったと思いますが、今後もこのような交流は続けていくのでしょうか?
小学校に行ってみたいっていうのも僕個人の夢から始まったことで、ずっと2年間ぐらい「行ってみたいな」「絶対叶えたい」って野心を抱いていた期間があったんですね。そういう風なこと思ってたら、実際、起きるんですよね。一通の手紙が届いてそれが小学校の先生からだったんです。
ある程度その先生とのお話が決まってから、「実はこういう風なことをしようと思っています」っていうことをUUUMに報告させて頂いて、そこからの僕のやってみたいことを事務所からも、お力添えして頂く形で叶えてもらった。
クリエイターの目指す方向性って、きっと人それぞれで、例えばテレビに出たいとかもそうですし、雑誌や映画に出たいというのもそうです。僕の中では学校に行って、児童と触れ合っていかにフラットな現場で、そこでやっぱり喜ばれる人間であり、クリエイターであり、そういう風な人間で居続けられないと、それがもう“寿命”なんやなっていうのをすごい感じていています。
そういう人間で居続けないと、きっと自分のやってることって、結局のところ人に喜ばれるかどうかじゃないですか? だから人に喜ばれる動画であり、創作物であり、作ってきて良かったなと死ぬ前に思いたい(笑)。
僕の大ファンだった小学生の男の子の笑顔や、別れ際の目に涙溜めているシーンは、もういまだに忘れられないですからね。これは一生忘れない。いかにこの記憶の“感動貯金”を大人になって蓄えていけるかっていうのが、たぶん死ぬ時に「生まれてきて良かった」って思える瞬間なんだなって思うところがある。
動画クリエイターを続けて、一番やりがいを感じてるところとかっていうのは、もうまさにその瞬間かな。僕個人に対するお声がけがあるのであれば、「是非お互いの感動を共有しましょう」という気持ちですね。
■プロフィール
ミラクルぐっち
2014年3月18日からYouTubeチャンネル『ぐっちの部屋(ミラクルぐっち)』をスタートした動画クリエイター。"元芸人"のスキルを活かした関西弁の軽快なトークと、自身が考案した個性的なキャラクターが織りなす物語が幅広いファンの心を掴み、動画クリエイターとして数々のイベントに出演。