加熱式タバコは、紙巻タバコよりも健康被害が少ないのか? ここ数年、議論が加熱するこの問題についてJTが3月26日に会見を開催。ひとつの指標となりそうなデータを提示した。

JTは昨年、加熱式タバコ「プルーム・テック」に関する生体影響調査を実施。その結果、プルーム・テック使用者らは、白血球数やHDL(善玉)コレステロールなど、喫煙と関連のある疾患に関する7種類の数値が、非喫煙者の値にかなり近いことがわかったと発表した。

  • 非喫煙者と大差なし!? プルーム・テック、生体への影響調査

JTは引き続き調査を継続するとしつつ、この結果について「客にとっても社会にとっても有益になりうる考えている」と訴えた。

プルーム・テックは紙巻タバコより健康被害が少ない?

プルームテックは、カートリッジに含まれるグリセリンを加熱して蒸気化し、ニコチンや香味を含んだ「たばこカプセル」に蒸気を通して吸引することで喫煙感が得られる加熱式タバコのひとつ。

高温で加熱するIQOSやgloと異なり、低温で加熱するプルーム・テックは蒸気もほとんど無臭に近い。そのぶんタバコらしさも少ないとされるが、豊富な蒸気量で吸いごたえがあると人気だ。

タバコ葉を燃やして煙を吸う紙巻タバコと違い、タバコ葉の燃焼を伴わない加熱式タバコは健康リスクも低いと期待されている。一方で、まだ登場から日が浅く、健康影響に関する研究は十分に進んでおらず、健康リスクについて不明点は多い。

プルーム・テック使用者の生体影響調査の結果

今回、結果が発表された生体影響調査では、協力者らを以下の3パターンに分け、採血・採尿を含む各種検査を実施した。

  • 「プルーム・テックのみを3カ月以上、日常的に使用している者」(259名)
  • 「紙巻タバコのみを日常的に1年以上喫煙している者」(100名)
  • 「これまでにタバコ製品、およびニコチン含有製品を使用した経験がない者」(100名)

いずれもJTの社員などを除いた一般人が対象で、それぞれ性別や年齢などを可能な限り平均化。参加者は21歳以上65歳未満の男女で、調査は2019年5月から9月にかけて行われた。

調査では、白血球数やHDLコレステロール値など、紙巻タバコの喫煙によって数値の変動(いわゆる悪影響)が認められている生体指標7種について、プルーム・テック使用者、紙巻タバコ喫煙者、そして非喫煙者からデータを取得。それぞれの平均値で比較した。

結果、測定したすべての生体指標で、プルーム・テック使用者のグループは非喫煙者のグループに近い値であることが判明。いずれのグループも、白血球数は紙巻タバコ喫煙者グループと比べて約20%下回り、HDLコレステロール値は約15%近く上昇している。

JTはプルーム・テックについて、喫煙に伴う健康リスクを低減させる可能性のある「リスク低減製品」であると改めて位置づけ、ユーザーや社会にとって有益になりうると主張。引き続き調査を進めつつ、今後は関連製品の「プルーム・テック+」や「プルーム・テックS」でも同様の調査を進めると語った。

北里大医学部付属臨床研究センターの熊谷雄治教授も会見に同席。調査にあたって助言などを担当した熊谷教授は、「本試験は科学的に妥当なものだ」と述べつつ、「まだ疾病リスク軽減とは結論付けられない。今後も引き続き研究していく必要がある」と釘を刺した。

これまでの調査で、プルーム・テックは世界保健機関(WHO)が指定する「健康懸念物質」を約99%カットしたことも判明している。改正健康増進法の施行が目前に迫り、禁煙ブームにますます拍車がかかろうとしている今、プルーム・テックのこうした検証結果は喫煙者、非喫煙者の双方にとって有意義なデータと なりそうだ。