近年、共働き世帯が増えたことをうけ、住まいでは夫婦ともに家事がしやすい「共家事」「家事シェア」「時短」「家事負担軽減」といった動向が顕著でしたが、このところ多発する災害をうけ、「防災」や「減災」に注力した住まいが登場しています。どんな住まいなのか、さっそくチェックしていきましょう。
「防災」に注目して住まい探しをする人が多数派に
大地震や台風、豪雨による水害、地すべりなどの自然災害が日本各地で多発しています。そのため、住まいづくりでも防災・減災を意識した人が増えており、リクルート住まいカンパニーが発表した「2019年 注文住宅動向・トレンド調査」でも、はっきりとその動向が見てとれます。
実際に住まいをつくった人では、防災を「かなり意識していた」と「意識していた」をあわせると70%に。住まいの安全面を考えるうえで、「防災・減災」は欠かせない要素になっているのです。
では、実際に防災・減災を考慮した住まいとはどのようなものなのでしょうか。キーワードは、「レジリエンス(復興)」です。レジリエンスとは、精神医学・心理学用語では「ストレスや逆境に直面したとき、それに対応し克服していく能力」のことを言います。自然災害そのものはなくすことはできなくとも、被害を最小限に抑える、復旧していくという考え方にのっとり、さまざまな対策が練られています。
電気と水はいつも使う設備が非常時にも役立つ
災害時にまず確保したいのが電気と水、そして食料です。今までも雨水を溜めておく「雨水タンク」、非常用電源となる「蓄電池」がありましたが、価格やスペースの問題もあり、「防災時に必要だとわかっていてもそこまでコストがかけられない……」となかなか普及しませんでした。
そこで近年では、日常時でも災害発生時でも使えるように進化を遂げています。たとえば、太陽光発電システムで昼間に発電し、夜間や停電時に対応できるような蓄電池、気象警報発令と連動し、自動充電される蓄電池が登場。非常時の電源が常に確保できているのはとても心強いことでしょう。
また、近年では水道管の一部に設置する「貯水タンク」も登場しています。常に新鮮な水と入れ替わるため、日々役立ちながらいざというときに「飲料水」や「調理」にも使える設備になっているのです。さらに、タンク内に水を溜めておける給湯設備「エコキュート」「エネファーム」のいずれも災害時の生活用水として活用できると人気を集めています。
被災状況をすぐに把握できる住まいが登場
災害時に水、電気とならんで大切なのが「情報」です。わが家の被災状況がはっきりと可視化されていれば、ときに避難所に行くよりも「自宅避難」のほうが安全なこともあるでしょう。
そこで自宅に地震計・被災度判定計を設置し、地震発生時に震度を感知すると、インターネットを介して、わが家の「リアルタイム震度」「被災度」「被害状況を見える化」した住まいが登場しています。
災害発生時、「自宅が安全かどうか」がわかるのは心理的にも助かるもの。こうした仕組みがあれば、判断の一助となることでしょう。
風水害に強い住まい・建材もチェックしよう
このところ、記憶に新しいのが大規模な風水害です。そこで、水害に特化した住まいを開発したハウスメーカーも登場。ゲリラ豪雨の発生を想定した実験をおこない、床上浸水、床下浸水を防ぐことができました。早ければ今年にも商品として登場する予定です。
また、建材各社も力をいれていて、今までの仕様より耐風圧性能が高い「耐風仕様」の住宅用窓シャッターが登場しているほか、「水密性能」を高めたサッシも登場しています。また、気象警報と連動してシャッターを閉めるといった設備を導入している会社もあれば、既存の窓に後付できる「リフォーム専用窓シャッター」を開発した会社も。
こうしたシャッターがあれば、大型台風で飛来物があっても窓ガラスが壊れることはありません。これまで台風上陸が多いとはいえなかった地域にも、台風が上陸するようになった昨今、対策が欠かせないものとなっていくことでしょう。
最近では、災害発生時に避難所へ行くのではなく「在宅避難」「自宅避難」が呼びかけられています。自分たちにとっても住み慣れていて、プライバシーが守られたわが家のほうが精神的にも落ち着くことでしょう。家づくりの際はぜひ、災害発生時のことも考慮に入れて考えたいものです。