ホンダFF(前輪駆動)のトップガン「シビック タイプR」(CIVIC TYPE R)がマイナーチェンジした。圧倒的な動力性能を持続的に発揮するための冷却性能アップ、ブレーキ性能の強化とフィーリング向上、足回りの熟成などにより、走る、曲がる、止まるの全てが新たな次元に進化したという。日本での発売は2020年夏頃の予定。シビック タイプRの何が変わるのか、事前説明会でじっくり聞いてきた。

  • ホンダの「シビック タイプR」

    マイナーチェンジを経た新型「シビック タイプR」。日本での発売は2020年夏頃の予定(本稿の写真は原アキラが撮影)

歩みを止めることは即、敗北を意味する

ホンダ 商品ブランド部 商品企画課の齋藤文昭氏は、2017年にデビューしたシビック タイプRを「ホンダとして忘れてはいけない提供価値である“操る喜び”を妥協なく追及したモデル」と紹介。発売当時は価格やデザインについてさまざまな声があったものの、実際にドライブしたユーザーからは「これは本物だ!」との声が上がり、「久々にホンダらしい商品が出たと評価された」という。その結果、シビック タイプRの販売台数は計画の2倍となる年間3,000台を達成。当初は納車が1年待ちの状態だったにもかかわらず、「それでも欲しい」という顧客がいたそうだ。

「タイプRブランドはホンダレーシングスピリットの象徴であり、ホンダらしさそのものです。どうしたらこれまでより1段上のクルマを提供して喜んでいただけるのかをシビックチーム全体で考え続け、そのために進化を止めない開発を行ってきました。その思いが詰まっているのが今回のマイナーチェンジモデルです」。齋藤氏はマイチェンモデルの紹介をこのように締めくくった。

  • ホンダの「シビック タイプR」

    タイプRはホンダのレーシングスピリットを象徴するクルマだ

開発に込めた思いと進化点を語ってくれたのは、ホンダ技術研究所 オートモービルセンター所属でタイプR開発責任者の柿沼秀樹氏だ。

「タイプR」というブランドが誕生したのは1992年のこと。その2年前にデビューした「NSX」をベースとし、さらにスポーツスピリットを際立たせたモデルが欲しいという研究所内のエンジニアの強い思いから、同ブランド初のクルマとして「NSX TYPE R」を開発したのが始まりだった。1995年には「FF量産車の常識を覆す圧倒的なハンドリング性能を表現」した「インテグラ TYPE R」、1997年にはホンダが世界のベーシックカーとして開発したシビックをベースにした「シビック TYPE R」(初代)が登場する。

  • 歴代のタイプR

    歴代のタイプR

それ以降、タイプRはホンダのスポーツブランドとして確固たる地位を築いてきた。2017年に登場した現行シビック タイプR(FK8)は、「圧倒的な速さと、かつてないグランドツアラーを兼ね備えた異次元のTYPE Rを作ろう」との考えのもと、「スポーツカーの枠を超えた“アルティメイトスポーツ”」をコンセプトに開発。その結果、英国トップギアマガジン3冠獲得をはじめ、米国、豪州、日本など世界各国のメディアから数多くの賞を受賞した。

「モータースポーツの世界では、歩みを止めることは即、敗北を意味することをホンダは知っています。誕生からの3年間、私たちは立ち止まらず、従来のマイナーチェンジでは不可侵の領域まで足を踏み入れ、期待を超える進化を目指しました」。柿沼氏の言葉からは、シビック タイプR開発陣の意気込みが感じられた。

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    ホンダが歩みを止めずに開発してきたと胸を張る新型「シビック タイプR」

冷却性能、ブレーキ性能、サスペンションが熟成

今回のマイナーチェンジにおける具体的な改良点は以下の通りだ。

サーキット性能の進化については、エンジン冷却性能を向上させるため、フロントグリル開口面積を13%拡大し、内部のラジエーターフィンピッチを現行の3.0mmから2.5mmへと変更した。この結果、最高水温差は-10℃を達成したという。また空力では、フロントスポイラーの形状変更と剛性アップ、ブレーキは1ピースから2ピースフローティングディスクに変更することで、高速域(時速240キロ)からの熱変位が減少し、連続走行時の安定性とフィーリングが向上している。

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    フロントグリル開口面積は13%拡大した

一体感/ダイレクト感の進化については、アダプティブダンパーシステム制御やサスペンションブッシュ、ボールジョイントに至るまでアップデートを行い、コーナーアプローチから脱出までという一連のハンドリング性能とともに、荒れた路面での接地性や制振性などをさらに引き上げた。

インテリアでは、ドライビング空間の演出と質感を向上。ステアリングホイールはホンダ初のフルアルカンターラ表皮を採用するとともに、裏地の2枚巻きによって外径を維持しつつ、握りの質感とフィット感を改良した。また、タイプRの操る喜びの象徴である6速マニュアルのシフトノブ形状については、2007年のタイプRから10年以上使い続けてきた丸型からティアドロップ型に変更。ノブの傾きが認識しやすくなるとともに、ノブ内部に90グラムのカウンターウェイトを埋め込むことで、トランスミッション側の操作荷重とノブ側の慣性重量バランスを最適化している。快適なシフトフィールによってドライバーとタイプRの一体感が高まったとのことだ。

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    ステアリングにはアルカンターラ表皮を採用。シフトノブの形状も変更した

1,000台限定のリミテッドエディション登場

またこの日は、軽さとスポーツフィールを更に研ぎ澄ませた世界限定約1,000台の「シビック TYPE R リミテッドエディション」がお披露目された。防音装備の削ぎ落としで-13キロ、BBS社と共同開発した専用軽量鍛造ホイールにより-10キロ、計23キロの軽量化を施したボディに、ミシュラン・パイロットスポーツCup2専用タイヤと専用セッティングのダンパーシステムを装備。外装は90年代のタイプRを彷彿させる「サンライトイエローⅡ」の塗装とし、ブラックのルーフ、ドアミラーキャップ、ボンネットインテークカバー、販売先の各国名を刻んだシリアルナンバープレートなどを装着した。こちらは2020年秋の発売となり、国内では200台限定で販売する予定だ。

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    「サンライトイエローⅡ」がまぶしい「シビック タイプR」の限定モデル

2017年にデビューしたシビック タイプRは、独ニュルブルクリンク北コースで7分43秒80というラップタイムを記録した。当時の量産FFモデルとしては最速のタイムをたたき出したわけだが、現在はライバルであるルノー「メガーヌR.S. トロフィーR」に最速の称号を奪われている。マイチェン後のタイプRは、果たしてどんなタイムを記録するのだろうか。勝つために前進し続けてきたホンダの底力を見せてほしい。

  • ホンダの「シビック タイプR」
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著者情報:原アキラ(ハラ・アキラ)

1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。