音楽フェスとしても成立! 「ミュージックEXPO」の中身

会場が赤坂サカスからパシフィコ横浜に移り、イベント自体が有料化したことにより、大きく変わった部分は「音楽コンテンツ」が充実した点だろう。そもそも、赤坂サカスでは音量規制があるし、無料イベントでは何組ものアーティスト(とそのバンド)を呼んだり、会場を音楽ライブのためにセッティングするなど、コストからいっても人手の問題からいっても不可能なことだった。

まず、ミュージックEXPOの出演者を出演順に確認しておくと、初日(2月10日)は「Creepy Nuts(クリーピーナッツ)」「RHYMESTER(ライムスター)」「クレイジーケンバンド」の3組。2日目(2月11日)は「Roselia」「清塚信也」「クリープハイプ」「井上芳雄」「木梨憲武」の5組だ。感じ方は人によるだろうが、個人的に、このラインアップはかなり豪華だと思う。

「例えば、井上芳雄さんのファンの皆さんは、Roseliaを聞いたことがなかったりすると思うんですけど、これを機会に、お互いのファンの雰囲気も含め、知ってもらえればうれしいですね」。TBSラジオの内田さんはこう語る。これこそ、フェスの醍醐味だろう。ラジオエキスポの楽しみ方(1日の過ごし方)を聞いた際、内田さんは「何を見るかという点については、仕掛けている側の自分ですら悩ましいんですけど、例えば1日中、ミュージックEXPOのエリアにいても、十分に楽しめるはずです」と話していた。

  • TBSラジオ「土曜朝6時木梨の会。」

    TBSラジオ「土曜朝6時木梨の会。」(放送時間:毎週土曜6時~7時)でパーソナリティを務める木梨憲武さんは、2019年12月にアルバム「木梨ファンク ザ・ベスト」を発売したばかり。売れ行きは好調な様子だ。木梨憲武さんはミュージックEXPO2日目のトリだが、リスナーなどで構成する選りすぐりのダンサー(?)集団も登場するらしいので、盛り上がること間違いなしだ

大きな会場で音楽イベントをやっているラジオ局といえば、まず頭に浮かぶのがニッポン放送だ。近年でも、同局でパーソナリティを務める福山雅治さんやももいろクローバーZなどのアーティストが、パシフィコ横浜や横浜アリーナといった大箱でライブを行っている。もはや音楽(あるいはミュージシャン)を活用したイベントは、同局の伝統的コンテンツとして確立している感じだ。

一方、近年のTBSラジオは、情報番組やお笑い番組に強い放送局というイメージだった。もちろん、TBSラジオもイベントは開催しているが、例えば南海キャンディーズらが出演する「他力本願ライブ」のように、お笑いがメインのホールイベントが多かった。ところが、最近のTBSラジオは、音楽畑の出演者が充実してきているし、木梨さんもソロでの音楽活動を始めたばかり。TBSラジオが音楽イベントを仕掛ける上では、今が絶好のタイミングといえそうだ。

  • TBSラジオ「アフター6ジャンクション」

    初日にライブを披露するライムスターの宇多丸さんは、TBSラジオで2007年に「ウィークエンド・シャッフル」を始め、現在は「アフター6ジャンクション」(月曜18時~21時 火~金曜日17時50分~21時)でパーソナリティを務めている

コサキン、爆笑問題、たまむすび…超豪華なエンタメEXPO

次に、エンタメEXPOの内容を見ていきたい。会場となるホールC・Dには、A~Cの3つのステージが用意される。レイアウトは、最も大きいステージAがホール奥側にあり、ホール手前の左右に残り2つのステージがあるイメージ。3つのステージでは同時多発的にトークイベントを開催する。「ハライチのターン!」(毎週木曜、24時から)、「たまむすび」(毎週月~金、13時から)、「かまいたちのヘイ!タクシー!」(毎週月曜、21時30分から)など、タイムテーブルはかなりの充実ぶりだ。お笑いと情報番組に強いTBSラジオの面目躍如といった感じである。

初日の注目ステージは、なんといっても「ナイツ×コサキン EXPOスペシャルトーク!」(19時~20時30分)だろう。“コサキン”とは小堺一機さんと関根勤さんのこと。この2人は以前、TBSラジオで伝説的番組「コサキンDEワァオ!」を放送していた。

往年のリスナーには説明するまでもないが、「コサキンDEワァオ!」はコサキンの2人が独特の笑いのセンスで放送していた人気番組だ。随所で繰り広げられるコサキンのモノマネ合戦やコントが面白く、番組内では「馬鹿じゃないの?」や「くだらねー!」といった“褒め言葉”が飛び交っていた。リスナーからのネタも高度に洗練されたものばかりで、“ムックン”こと小堺さんが紹介前のネタに目を通して笑い泣き状態に陥り、しばらく言葉に詰まる場面はもはや恒例になっていた。

TBSラジオは2020年1月3日、「令和に復活 ぼくたち『コサキンDEワァオ!』です、ワァオ!」という番組を放送していたが、「コサキンDEワァオ!」のリスナーだった経験も踏まえて僭越ながら感想をいわせてもらうと、その内容とノリは昔とほとんど変わっていなくて、存分に楽しめた。なので、今回のステージにも大いに期待したいところだ。ちなみに、同ステージに関してTBSラジオの内田さんからは、「当日、何らかの発表があるかもしれないので、お楽しみに」との意味深なメッセージをいただいている。

  • 小堺一機さんと関根勤さん

    「コサキンDEワァオ!」は20年以上も続いた伝説の番組。面白い歌を発掘したり、大物俳優を独自の解釈でネタにしたりといった内容だったが、今でも時々、ふとした瞬間に、「スジですねー!」などというワードを思い出して笑ってしまうことがある

ほかにも、言及しておきたいステージは山ほどあるのだが、そうもいかないので、あと1つだけ。ラジフェスを楽しんできたTBSラジオファンであれば、見逃すわけにはいかないのが「爆笑問題カーボーイ スペシャルステージ」(2月11日、16時から)だ。ステージには「火曜JUNK 爆笑問題カーボーイ」(毎週火曜、深夜1時から)と「爆笑問題の日曜サンデー」(毎週日曜、13時から)を担当する爆笑問題のほか、「水曜JUNK 山里亮太の不毛な議論」(毎週水曜、深夜1時から)の山里亮太さん(南海キャンディーズ)、「アルコ&ピースD.C.GARAGE」(毎週火曜、24時から)のアルコ&ピース、「うしろシティ星のギガボディ」(毎週水曜、24時から)のうしろシティ、「マイナビラフターナイト 空気階段の踊り場」(毎週金曜、24時30分から)の空気階段が出演する。

TBSラジオのイベントで爆笑問題と山里さんが共演するとなれば、赤メガネの運命に注目しないわけにはいかない。

ちょっと野暮な気もするが経緯を押さえておくと、始まりは2016年のラジフェスだった。そこではバナナマン、おぎやはぎ、山里さんの3組がトークイベントを行っていたのだが、同ステージに突如、爆笑問題の太田光さんが乱入。おもむろに山里さんのメガネをはぎとり、客席に投げ込むという暴挙に出たのだ。その結果、山里さんのメガネは真っ二つに割れてしまう。翌2017年にも太田さんは上記3組のステージに乱入し、全く同様の所業を働いた。

ラジフェスではバナナマン、おぎやはぎ、山里さんの3組が「ヤングJUNK」と名乗り(名乗らされ?)、トークイベントを行っていた。これは、TBSラジオで放送中の深夜番組「JUNK」(月~土、深夜1時~3時)の中で、(相対的に)若いパーソナリティであることからのネーミングだ。JUNKの残りのパーソナリティは伊集院光さん、爆笑問題、エレ片(エレキコミックと片桐仁さん)の3組だが、爆笑問題の太田さんとしては、「爆笑問題と伊集院光は、ヤングじゃないというのか」ということで、ヤングJUNKの面々に対し、多少のわだかまりを持っていたような節がある。その気持ちが、ラジフェスでの暴挙に結び付いたのだろう。

こんな経緯を踏まえておくと、ラジオエキスポの爆笑問題ステージをさらに楽しく見ることができると思う。

  • 因縁の2人が共演する爆笑問題のステージは要チェック。「生」のステージでの暴走っぷりには定評のある太田さんのことだから、当日はどんな事態となるのか、とても楽しみだ