マネースクエア 市場調査室 チーフエコノミスト西田明弘氏が、投資についてお話します。今回は、トランプ大統領が再選を果たすのか注目を集める、アメリカ大統領選挙について、その見どころを語っていただきます。

  • アメリカ大統領選挙、序盤の見どころは?

2020年は米国の大統領選挙の年。投票日は11月3日ですが、共和党と民主党の大統領候補を決める予備選は2月3日のアイオワ州からスタートします。本稿では大統領選挙キャンペーンの序盤の見どころをチェックしておきましょう。

弾劾裁判の影響は?

共和党の候補はさすがに再選を狙うトランプ大統領で決まりでしょう。唯一の例外となりうるのが、現在行われている弾劾裁判でトランプ大統領が「権力乱用」か「議会妨害」あるいはその両方で有罪と判断されて罷免されるケースです。

ペンス副大統領が昇格することになるのでしょうが、その場合には共和党予備選に名乗りを上げる有力候補が出てくるかもしれません。ただ、トランプ大統領が罷免される可能性は限りなくゼロに近いでしょう。

1月21日に始まった上院での弾劾裁判は、検察役の下院議員団の冒頭陳述、対するホワイトハウスの弁護団の反論が終わり、1月30日には陪審員役の上院議員による質疑応答も終了します。その後に証人喚問を行うかどうかが決定されます。

仮に、共和党議員が団結して証人喚問不要とすれば、すぐにでも上記罪状に関して採決が行われてトランプ大統領は無罪放免となる可能性があります。ただ、その場合は民主党の追及を不当に打ち切ったとして、大統領選挙と同時に行われる秋の議会選挙で共和党が有権者から手痛いしっぺ返しを受けるかもしれません。

一方で、証人喚問が実施されるならば、弾劾裁判のある程度の長期化は避けられないでしょう。その場合、民主党の上院議員でもあるサンダース、ウォーレン、クロブシャー各候補はワシントンに釘付けになり、予備選の序盤に十分な選挙運動ができなくなるかもしれません。

いずれにせよ、弾劾裁判の行方は大統領選挙に影を落とすと言えそうです。

民主党候補の争いはどうなる?

米国の政治サイトReal Clear Politicsによれば、1月下旬の世論調査で、民主党候補の支持率トップはバイデン氏で、サンダース氏が僅差で2位、ウォーレン氏、ブルームバーグ氏、ブティジェッジ氏が続きます。ただ、予備選最初のアイオワ州では、1位がサンダース氏、2位がバイデン氏、ブティジェッジ氏、ウォーレン氏と続きます。

サンダース氏やダークホースのブティジェッジ氏が緒戦で勢いをつけて、3月3日のスーパーチューズデー(カリフォルニア州やテキサス州など14州で予備選)で一気に他の候補を引き離すのか。それとも、バイデン氏やウォーレン氏がアイオワ州の次のニューハンプシャー州以降に盛り返しをみせるのか。短期決戦になる可能性が高いだけに、序盤の戦いはとくに重要となりそうです。

市場の目線

市場からみれば、トランプ大統領の再選は受け入れやすいかもしれません。市場は大統領の就任直後から振り回されてきましたが、大統領の予測困難な言動にもある程度慣れてきた感があります。また、この間に景気が比較的堅調を持続し、株価が高値更新を続けているという事実は否定のしようがありません。

市場が懸念するのは、民主党のサンダース氏やウォーレン氏といった、民主党の中でもとくに左寄りの候補が指名争いのトップに立ち、かつトランプ大統領よりも有権者の支持を得る状況ではないでしょうか。一方で、中道派のバイデン氏やブルームバーグ氏が予備選を有利に進めるならば、市場に安心感が広がるかもしれません。

大統領選挙キャンペーンは始まったばかりですが、序盤から目が離せません。