オリンピック・パラリンピック開催まで約半年と迫っている中、「東京2020公式アートポスター展」が2月16日まで東京都現代美術館で開催中だ。オリンピックをテーマとした12作品、パラリンピックをテーマとした8作品が展示されている。これを記念して、会期中には公式アートポスター制作アーティストによるトークショーが実施されており、1月25日には画家の山口晃氏が登壇した。

  • 画家の山口晃氏

    画家の山口晃氏

「オリンピックには興味がなかった」

公式アートポスターは開催都市契約に定められた要件の一つとされ、オリンピック・パラリンピックの認知と理解を促進するため、20世紀初頭から各大会の組織委員会が制作している。

東京2020大会では絵画やグラフィックデザイン、写真のほか、日本が世界に誇る文化である漫画や書など広範なジャンルから、現代を代表する国内外のアーティスト19組が公式アートポスターを新たに制作。

アートやスポーツの素晴らしさ、ホストシティである東京の文化の多様性や豊かさを感じられるバラエティに富んだ計20作品が、東京2020公式アートポスターとして完成した。

  • 東京2020公式アートポスターの展示風景

    東京2020公式アートポスターの展示風景

山口氏は2012年より東京、茨城、ロンドンなどの美術館で個展を開催するほか、2013年には著書『ヘンな日本美術史』(祥伝社)で第12回小林秀雄賞を受賞。絵画のみならず、パブリックアート、新聞小説の挿画、漫画連載など幅広い制作活動を展開しており、昨年には大河ドラマ『いだてん』(NHK)のタイトルバックにおける東京の街並みを描いた絵でも話題になった。

トークショー冒頭、「冗談めかして言っちゃいけないですけど、私これ御用納め後の12月30日に出し、休日を返上して印刷を回してくださったということで、本当に申し訳ございません。ありがとうございます。先日行われた公式アートポスターの発表会で、荒木(飛呂彦)先生に締め切りを聞かれて『30日です』と言ったら、『僕も30日だよ』ということでしたが、よく聞いたら先生は11月の30日でした。一瞬、同じだと思って気がラクになったんですけど……」と、会場の笑いを誘った。

「話がきて、最初に思ったのは『なんで僕なんだ』と。どっかの利権にお金が流れるだけじゃないかって、オリンピックには興味がなかったほうですから」と、オファーがきた際の率直な感想を苦笑しながら明かした。

各大会の特色を世界に伝える役割も果たす公式アートポスターだが、近年は国際的に活躍するアーティストやデザイナーを起用。各大会の文化的・芸術的レガシーとなる作品が制作されるようになり、その中からは時代のアイコンとなるような作品も生まれているという。

最終的に引き受けた理由については「検討するための資料をいただきましたら、デイヴィッド・ホックニーが描いていたり、オスカー・ココシュカが描いていたり、センシングなアートポスターができあがっていることを知りまして。もともと作品というものは自己目的化していくもので、どんなに目的が設定されても、それを軽々と無視していくのが作品ですので、『じゃあ、やってみようか』と思っちゃったんですね」と、振り返っていた。

  • 山口氏が制作したポスター『馬から矢を矢ヲ射る』

    山口氏が制作したポスター『馬からやヲ射る』

日本の伝統的絵画の様式と油画の技法を用いて、人物や建築物を緻密に描き込み、ユーモアやシニカルさを織り交ぜながら、時空を自由に混在させる作風を特徴とする山口氏。今作では和装姿の上肢欠損の女性が、首から下が車椅子の馬に跨って、弓に矢をつがえる場面を描写。背景には福島のイメージなどをブリコラージュ的に描き込んだという。

「そういう競技はありませんが、"アーチェリー流鏑馬"のようなイメージです。"現代を映す"ことがお題の一つとしてありましたので、開催国のいまを反映していくというときにキーワードとして設定したものを、全部描いていくことにしました。大上段なものもそうですけど、とにかく自分が日々の生活などで経験してきたことを地道に描き連ねていこうということで描き始めました」と述懐。「依頼時の制作要綱にも"復興五輪"ということが大きく掲げてありましたし、引き受けた一つには、ここにインデックスを示して公のところに出すことで、みんながお祭り気分に酔いたいところを混ぜっ返したかった」との思いも語った。

今後、これらのオリンピックやパラリンピックをテーマにした芸術作品は、東京2020大会のポスターとして機運醸成に活用され、3月頃からは東京2020公式アートポスターの公式ライセンス商品を順次展開していく予定だ。