声を出せない少女と、人の心が読める少女の優しい関係を描いた漫画「声がだせない少女の話」と、それに続くストーリー「声がだせない少女の挨拶の話」がツイートされ、大きな話題を呼んでいる。作者は、Twitterなどで漫画作品を発表している矢村いちさん。2人のぎこちなくも切ない交流を描いた淡い世界観に、称賛の声があがっている。

失声症により声を出せない少女・真白さんは、クラスメイトの強気そうな女子・心崎さんを「優しすぎると思っている」。眼差しを向けられた心崎さんは「…何じっと見てんだよ」とぶっきらぼうに口にする。さっと「ごめんなさい」と書かれたスケッチブックを見せられ、心崎さんは彼女を見つめ返す。

  • 矢村いちさんによる漫画「声がだせない少女の話」(1ページ目)

真白さんが転校してきたのは、2週間前。先生も「声が今は出ないらしい。優しく接してくれ」と説明し、最初の頃こそ多くのクラスメイトが話しかけてくれた。真白さんも嬉しく感じていたものの、彼女は会話の度にスケッチブックに言葉を書かねばならない。それもあって徐々に話しかける人は減ってしまい、遂には「接してこないでオーラ」を感じてしまうまでになった。

  • 漫画「声がだせない少女の話」(2ページ目)

それに真白さんは「仕方ない…会話に手間がかかる私のせいだ」「どうすれば人とうまく関われるかな」と思い悩む。そんな彼女の席にバンと、ランチボックスを叩きつけるように置く心崎さん。ポカンと驚く真白さんに、心崎さんは「私、一緒に食べるから」と告げる。「次の授業数学ですよね」や「この学校、食堂あるんですよね」と書く真白さんに対して、決して愛想は良くないものの優しく返答する彼女。真白さんも、そんな心崎さんを察しがよくて「居心地が良い」と感じる。

  • 漫画「声がだせない少女の話」(3ページ目)

真白さんは思う。「…まるで心が読めるみたいだ」。気のせいかとも感じているが、それはまさかの「正解」。心崎さんは、本当に人の心が読めるのだ。彼女が真白さんに話しかけたのは隣の席に座る真白さんの心が「壊れたレコードか」とツッコミそうになるくらい、また、心崎さん自身の調子が狂うほど、自己嫌悪の気持ちを浮かべ繰り返していたから。「自分を責めたっていいことなんてないのに」という思い、「私が接すれば解決する」という思いで話しかけたのだが、「本当に優しいな。大好き」という真っ直ぐな感情を浮かべられると、心崎さんの顔は恥ずかしさで赤くなる。そして、「結局調子が狂う」。

  • 漫画「声がだせない少女の話」(4ページ目)

続くストーリー「声がだせない少女の挨拶の話」で描かれるのは、とある朝のエピソード。真白さんは心崎さんを見つけると、さっと「おはよう」と書かれたスケッチブックを両手に持って掲げる。心崎さんは、スマホ片手に相変わらずぶっきらぼうに「そんなにアピールしなくても分かってるっての」と。そんな彼女に、真白さんは、そっか~と嬉しそうなオーラを漂わせる。

  • 漫画「声がだせない少女の挨拶の話」(1ページ目)

ただし、心崎さんが"分かって"いたのは、真白さんの心の中から「何度も挨拶練習が聞こえてきたから」。真白さんは「よぉーし頑張る…」と思いを胸に秘めながら、「おはよう!」「おはよー」「オッハー」「おはようごゼェます」と様々な挨拶を内心で繰り返す。「この調子で他の人達にも…!」と向かっていく真白さんに、心崎さんは「いってら~」と心の中でエールを送る。

  • 漫画「声がだせない少女の挨拶の話」(2ページ目)

しかし、級友たちは会話に夢中で、スケッチブックを持って挨拶に行く真白さんに気付かない。「会話を中断させてしまうのは…」「どうしよ考えるんだ…」「解決法をえっと…まずは」と頭の中で言葉があふれる真白さんの心の声を聞き取ることができる心崎さんは「うっさい」とイライラ。次の瞬間には「おはよー!」と援護するように声を上げる。

  • 漫画「声がだせない少女の挨拶の話」(3ページ目)

それで真白さんの存在に気付いたクラスメイトたちは、「おっす」と声かけていく。「これで静かになるでしょ」とフンと顔を逸らす心崎さん。そんな彼女を真白さんは、少し驚きながらも見つめる。席が隣同士の2人。隣の席から「さっきのって私のことを気付かせるためにやってくれたんだよね…」「優しいな…」「ほっとくこともできたのに嬉しいな」と何時間経ってもだだ漏れする声を聞き取れる心崎さん。「明日も挨拶して良いかな…嬉しいな。仲良くしたいな」とウズウズされると、「いつまで喜んでんのよ! バカ!! 勝手にしろ!!」と顔が赤くなってしまい、再び調子が狂ってしまう…。

  • 漫画「声がだせない少女の挨拶の話」(4ページ目)

リプライは、前編の物語には「心の声を聞いて紙に書かれた声の奥底にある思いを読む…とても健気で、いい。結論:尊い」「美しくとても優しい世界が広がっていて魅力的でした」「ツインテちゃんが満更でも無さそうなのがまた尊い…」「最高の展開で語彙を失いました…」と称賛の声が。後編でも、「喜ばれ過ぎて照れちゃう女の子可愛いです。学校終わるまでずっと喜んでそうで良い…」「恥ずかしがりつつも心の声ちゃんと聞いてるの可愛いです」「ずっと喜んでるの可愛いしいい子って言うのがすごい伝わってくる…」と様々な描写に賛辞があがり、「やばいやばいニヤケがとまらん!」「めっちゃ素敵で感動したうえにニヨニヨしました」と感動の声もあがった。

この短編の作者は、Twitterなどで漫画作品を発表している矢村いちさん。これまでにも「変わりものの彼女にもう少しだけつきあう話」「部活で一緒の淡々としてる女の子の話」「新学期が不安なパシリ君の話」などの作品を公開し、注目を集めている。今回の作品は『声がだせない少女は「彼女が優しすぎる」と思っている』シリーズの中の二作。Twitterでは、続編となる「声がだせない少女の学食の話」も公開されている。