「ウルトラマン」「仮面ライダー」「スーパー戦隊」などの特撮人気シリーズに参加し、数々の傑作を生みだした特撮界のキーマンと呼ばれる坂本浩一監督がメガホンをとり、次代の本格派アクション女優として注目される山本千尋が主演を務めた時代劇専門チャンネルオリジナル特撮アクション時代劇『BLACKFOX: Age of the Ninja』が、「第29回映画祭TAMA CINEMA FORUM」で1日に上映され、坂本監督と主演の山本がトークを行った。本作が東京で上映されるのは、これが初となる。

  • 左から山本千尋、坂本浩一監督

アニメーション映画『BLACKFOX』との連動企画として製作された『BLACKFOX: Age of the Ninja』は、近未来における忍者の末裔を主役にしたアニメ版を受けて、本格的な「時代劇」として製作されており、アニメ版の主人公と同じ名前を持つヒロイン・石動律花(いするぎ・りっか)が己の信じる道を突き進むため、邪悪な敵に立ち向かっていく姿を描いている。

上映後に行われたトークでは、坂本監督が本作に込めたオマージュの数々が明かされた。少年時代に『魔界転生』(1981年)や『伊賀忍法帖』(1982年)などの作品に夢中になっていたという坂本監督。『BLACKFOX: Age of the Ninja』で律花の友人・宮(みや)の命を狙う凄腕の忍者集団"根来衆(ねごろしゅう)が使う武器である鎌は、なんと『伊賀忍法帖』で実際に使われていた小道具の寸分違わぬレプリカであるという。坂本監督から小道具の担当者に「根来衆の武器にはこういう鎌を使いたいんです」と、『伊賀忍法帖』の鎌を参考画像として送ったところ、「それならあるかも……」とそのものズバリが出てきた、と時代劇の本場というべき東映京都撮影所ならではのエピソードが語られた。

また、劇中で律花が着る着物が"青色"なのは、『伊賀忍法帖』で渡辺典子が演じた篝火の着物が青色であったから。渡辺典子は坂本監督にとって"初恋の人"だったそうで、衣装合わせにも並々ならぬ情熱が傾けられていたという。山本によると、律花の衣装合わせは1時間もの時間がかけられたが、そのあとに控えていた石黒英雄の衣装合わせは5分で終了。山本は「だから入りの時間はずいぶん違ったのに、終わりはほとんど同時だったんです」と語り、会場の笑いを誘った。

さらに、劇中で亡き父親・亜廉(あれん/演:島津健太郎)が遺した仮面と甲冑を身に着けるシーンについて、坂本監督は「『ランボー』(1982年)とか『コマンドー』(1985年)で、シルヴェスター・スタローンやアーノルド・シュワルツェネッガーが戦いに向かう時に装備を身につけるシーンが印象的に描かれているでしょう。あれがやりたかった」とコメント。なお、律花のコスチュームは「牙狼<GARO>」シリーズなどに参加しているJAP工房が手がけている。アクションをするにも動きやすく、かつ光沢と質感も素晴らしいクオリティー、と2人とも感心していた。

後半のファンからの質問コーナーでは、「根来衆の黒竜を演じる中村浩二さんの劇中の"あるセリフ"は『仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』(2010年)の『オレのメモリ!!』のオマージュですか?」という質問が寄せられた。坂本監督は「中村さんは、あえてそこにかぶせたということではなく、偶然だと思います。それよりもあのシーンは、サモ・ハン・キンポーが『ペディキャブ・ドライバー』(1989年)という作品で、戦闘中にずっと食べながら戦うというアクションがあり、中村さんにはそのイメージでお願いします、とお伝えしました」と、制作の裏側を明かした。

本作では、得意な中国武術をあえて封印し、さまざまなアクションに挑んだ山本。現場でいつになく厳しかったという坂本監督は、「千尋ちゃんに本物のアクションスターになってほしいという願いを込めて、妥協せずに撮りました。撮影に入る前から、今回は厳しくいくよと声をかけていました」と振り返った。その思いに応えた山本も、「特撮アクションと時代劇が一緒にできるの!?と思っていましたが、今は新しいものに挑戦できたと胸を張れます。たくさんの人に見ていただきたい」と呼びかけた。

『BLACKFOX: Age of the Ninja』は、「Amazon プライム・ビデオ」など各種動画配信サービスで配信中。さらに、12月16日に新宿バルト9で山本千尋、矢島舞美、大久保桜子、久保田悠来、宮原華音らキャスト陣が登壇する上映イベントが行われることが発表された。