「レット・イット・ゴー」から「イントゥ・ジ・アンノウン」へ。11月22日に公開されたメガヒット中の続編『アナと雪の女王2』が、日本興行ランキングでぶっちぎりのナンバー1をマークし、前作同様に、主題歌も話題になっている。同曲を手掛けたのは、前作から続投したロバート・ロペスとクリステン・アンダーソン=ロペス夫妻。2人はこの曲にどんな思いを込めたのか?
物語の舞台は前作から3年後。2人で仲良くアレンデール王国を治めていたエルサとアナの姉妹だったが、ある日エルサが、自分にしか聞こえない不思議な声を耳にする。その声に導かれ、エルサは未知なる世界へと足を踏み入れていく。
今回、エルサが持つ魔法のルーツに迫るとともに、アナもいまだかつてない試練に見舞われる。クリス・バックとジェニファー・リーという2人の監督はもちろん、日本語吹替版でも松たか子や神田沙也加たち声優陣が続投した。
前作の主題歌「レット・イット・ゴー~ありのままで~」は社会現象を巻き起こし、「ありのままで」が2014ユーキャン新語・流行語大賞のトップテン入りを果たしたが、続編の主題歌「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」もすでにホットなナンバーとなっている。
――クリス・バック監督とジェニファー・リー監督とは、どのようにコラボレートして曲を作っていったのですか?
クリステン:前作の時と同じで、まずはジェニファーから電話をもらったわ。続編では、なぜエルサは魔法を使えるのかという理由を明かしたいという話をされた。そこから話し合いをして、ストーリーを作っていき、ある程度、話が固まったうえで、曲を作るというプロセスだった。
――「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」は、途中で転調してから、ハイトーンのサビの部分に入る部分がとてもドラマティックな歌ですね。ただ、「レット・イット・ゴー~ありのままで~」は子どもたちも口ずさみやすい曲でしたが、今回はカラオケで歌うにはハードルが高い気がします。
ロバート:そうかもしれないね(笑)。ただ、「レット・イット・ゴー」も今回も、あくまでもエルサの心情を描くことが重要だと思っていたので、子どもたちが歌えるような曲調を意識したわけではないから、そこは仕方がないな。
――でも、“未知の世界”同様に、自分の“未知の音域”を引き出してくれる歌になりました。
クリステン:私もそう思うわ(笑)。でも、1オクターブ上がって、戻って、今度また一番高いところへ上がるけど、その音は、「レット・イット・ゴー」の高音と同じキーなの。急に上がるのは、エルサが危険ゾーンに入っていくということを表しているわ。
――確かに、未知の世界へエルサが進んでいく過程をよく物語っています。今回は前作よりも起承転結のある歌が多く、よりストーリーを雄弁に語っている印象を受けました。最初の曲「魔法の川の子守唄」では、今は亡き母親イドゥナが少女時代のアナやエルサに子守唄を歌うシーンで、親子の絆が伝わってきました。
クリステン:イドゥナの子守唄には、親が娘を思う心や、ミステリーの要素など、隠されたメッセージが入っていて、それがエルサにとって、指標となるわ。もしもお母さんが生きていたら、そこに連れていきたいと思っていただろうし、この先、何が起こっても、この子守唄を覚えていてほしいという気持ちで歌ったのだと思う。
もし、映画を繰り返し観てもらうと、この歌にすべてのストーリーが入っていることに気づいてもらえるのではないかと。この歌には全体のテーマがあり、道標や記憶、真実など、あらゆる情報が詰め込まれているわ。
――では、一番苦労したのは、どの曲になりますか?
ロバート:エルサが歌う「みせて、あなたを」かな。
――あの曲は、まさにエルサが、自身のアイデンティを知りたいと願う曲ですね。そこも作品のテーマの1つだと思いますが、どういう点が難しかったのでしょうか?
ロバート:あの曲を作った時、まだエルサのストーリーが完全にできあがってなかったんだ。もちろん今回は、壮大で複雑なシークエンスになることだけはわかっていたけど。そこでまずは我々が曲の一部を提供して、監督たちがそれに合わせてイメージを作り上げた。それを受けて、我々も曲を修正しなければいけなくて、そのやりとりがかなり繰り返された曲だ。何カ月もかかって完成させたよ。
――続いての曲「ずっとかわらないもの」は、アナをはじめ、いろいろなキャラクターがリレー式に歌い上げていきますね。
ロバート:実は、最初は別の曲の予定だった。それは、アナがどれだけアレンデールの街を愛していて、すべてのものを失いたくないという気持ちを歌い上げる曲で、そこから、クリストフ、スヴェン、エルサ、オラフを紹介していったら、すごく長くかかってしまった。そこで、全員を紹介できるような曲にしようとして生まれたのがこの曲だ。
――確かに、あの曲では、主要キャラクターがフィーチャーされています。
ロバート:曲を作る時、「こういうのがいいんじゃない?」と思って最後まで書いたあと、監督たちと話し合い、これではダメだとなって、変更するのはよくあることだ。
――そういう意味では監督とのコラボレーションですね。
クリステン:その通り。最後のほうでジェニファーとクリス、その他20人くらいのクリエイターたちがLAに集まって、またミーティングを開いたの。クリストフのパートなど、物語上でいろいろな変更があり、この歌は「新しいオープニング的な歌にしたい」という話になった。その時は、すべての物語が決まっていたので、そこを踏まえて、最後に書いたのが「ずっとかわらないもの」だ。
――これまですばらしい曲を作られてきましたが、映画のサウンドトラックを手掛ける醍醐味についても聞かせてください。
クリステン:やはりLAで最高のミュージシャンたちを迎えたオーケストラで収録できることかしら。それは、音楽に関わる者にとってはたまらない仕事だと思う。
――『アナ雪』2作は、お二人のキャリアにとってどういう存在になりましたか?
クリステン:私たちのキャリアを作ってくれた作品ね。
ロバート:この2作で、いろいろなことを学んだよ。もちろん、妻についてもね(笑)。
ロバート・ロペス:1975年ニューヨーク州生まれ。クリステン・アンダーソン=ロペス:1972年ニューヨーク州生まれ。夫婦で手がけたTVシリーズ「The Wonder Pets」でエミー賞(08・10)、『アナと雪の女王』(13)では主題歌「レット・イット・ゴー」で第86回アカデミー賞歌曲賞、第57回グラミー賞2部門を夫婦揃って受賞。これによりロバート・ロペスは、エミー(Emmy)賞・グラミー(Grammy)賞・アカデミー(Oscar)賞・トニー(Tony)賞の4つの賞を受賞した12人目の人物となり、10年という最短記録で“EGOT”を達成。2017年の『リメンバー・ミー』の主題歌「リメンバー・ミー」でもアカデミー賞歌曲賞を受賞している