近畿日本鉄道の新型名阪特急「ひのとり」が2020年3月14日にデビューする。現行の「アーバンライナー」に代わり、大阪難波駅・近鉄名古屋駅を毎時0分に発車する停車駅の少ないタイプの名阪特急は順次、「ひのとり」の運行になるという。

  • 近鉄の新型名阪特急「ひのとり」。11月21日の報道関係者向け車両内覧会でお披露目された

名阪特急の新型車両80000系「ひのとり」は全車両を近畿車輌で製造し、1両ずつトレーラーの陸送で搬入する予定。11月19日の報道関係者向け車両内覧会で「ひのとり」の第1編成がお披露目され、会場の近鉄高安車庫で第2編成の姿も見ることができた。車両の製造費に関して、1両あたり約2億5,000万円と説明も。今後さらに1編成加わり、6両編成の「ひのとり」3編成で来年3月のデビューを迎える。

「ひのとり」の最高速度は、現行の「アーバンライナー」車両(「アーバンライナー plus」「アーバンライナー next」)と同じ130km/h。先進的でスピード感のある車体フォルム、深い艶感のあるメタリックレッドを基調としたカラーリング、先頭車の車体側面に配置した「ひのとり」のロゴマークなどが外観デザインの特徴となる。

両先頭車はハイデッカー構造を採用したプレミアム車両で、他の車両と比べて客室内の床面が約72cm高くなっているという。プレミアム車両では乗り心地を向上させる技術も採用しており、車両内覧会で取材に応じた近畿日本鉄道鉄道本部 企画統括部 技術管理部(車両)課長、岡野友紀氏によれば、「先頭車両に電動式のフルアクティブ制御を搭載しています。『しまかぜ』は空気式のフルアクティブ制御でしたが、電動式とすることで応答速度がより速くなり、揺れの少ない車両となります」とのことだった。

  • 「ひのとり」の先頭車はスピード感ある流線型の車体フォルムに。ロゴマークも掲出されている

現在、名阪特急の主力車両として活躍中の「アーバンライナー next」「アーバンライナー plus」は1両のみデラックスカー、他の車両はレギュラーカーという編成で、6両編成の定員は300名を超えていた。「ひのとり」は両先頭車をプレミアム車両としたこともあり、6両編成の定員は239名となったが、プレミアム車両は全席3列シートで前後間隔が「鉄道で日本最大級」という130cm、ハイデッカー構造を採用したことで、客室内の快適性や眺望性が増している。中間車のレギュラー車両も、横4列ながら前後間隔を116cmとしており、現行の特急車両より余裕を持って座れそうな印象だった。

プレミアム車両・レギュラー車両ともに全席バックシェルを採用してコンセント等を備え、プレミアム車両は肘掛の内部に収納式の大型テーブル、レギュラー車両はバックシェルの背面に大型テーブルを設置。無料インターネット接続サービス(無料Wi-Fi)も提供する。プレミアム車両のデッキ部にカフェスポット、レギュラー車両のデッキ部にベンチスペースを設け、大型荷物を収容できるロッカー等も各車両に用意した。バリアフリー対応として、多目的トイレや車いす対応席も設置している。

  • プレミアム車両は全席3列シート。肘掛の内部に収納式の大型テーブルを備える

  • レギュラー車両は横4列のレギュラーシートが並ぶ

  • 「ひのとり」の乗務員室。窓の外に第2編成の姿も

「ひのとり」では運賃・特急料金・特別車両料金が設定され、大阪難波~近鉄名古屋間の合計金額はプレミアム車両5,240円、レギュラー車両4,540円。車両内覧会が行われている間、「700円多く払ってもプレミアム車両に乗りたい」との声も聞かれた。

■「アーバンライナー」今後は毎時30分発を中心に運用

来年3月から6両編成の「ひのとり」3編成で運行開始した後、2020年度中に全11編成72両(6両編成×8編成、8両編成×3編成)がそろう予定となっている。編成両数を統一せず、6両編成・8両編成を投入することに関して岡野氏に質問したところ、「大阪難波駅・近鉄名古屋駅を毎時0分発の特急で(ひのとりを)運用しますが、お客様の多い時間帯とそうでない時間帯があり、多い時間帯に6両編成だと乗りきれないため、8両編成を入れて運行します。そのような形で6両編成と8両編成を使い分けていきます」との答えが返ってきた。

名阪特急は2020年度中をめどに、大阪難波駅・近鉄名古屋駅を毎時0分に発車する停車駅の少ないタイプをすべて「ひのとり」で運用する予定。これにともない、両駅を毎時30分に発車する停車駅の多いタイプの名阪特急は「アーバンライナー」車両(「アーバンライナー next」「アーバンライナー plus」)を中心とした運用となる。

  • 「ひのとり」全11編成が導入される2020年度中をめどに、「アーバンライナー」は大阪難波駅・近鉄名古屋駅を毎時30分に発車する停車駅の多いタイプの名阪特急を中心とした運用に

「現在、毎時30分発は基本的にオレンジ色の特急車両を使っていますが、今後は毎時0分発が『ひのとり』、毎時30分発が『アーバンライナー』となるため、オレンジ色の特急車両は別の系統で走るか、古い車両については廃車となります」と岡野氏。「アーバンライナー」車両のリニューアル予定についても尋ねたが、「『アーバンライナー』を今後どうするかは検討していかないといけないところです」とのことだった。

車両内覧会では、名阪特急の現在の乗車率が全列車平均で約50%との話もあった。近年は伊勢神宮の式年遷宮、平成から令和への改元などもあって伊勢方面の特急列車が好調で、観光特急「しまかぜ」は現在も約90%の乗車率で推移しているという。「観光に特化した『しまかぜ』に対し、『ひのとり』は大阪・名古屋間を定時で結ぶ特急なので色合いは違いますが、『ひのとり』だから乗りたいという方が増えてくれたら。この列車を目的に乗っていただけるとありがたいですね」と岡野氏はコメントした。