敷金・礼金ともにゼロ円という、「ゼロゼロ物件」を見かけたことはありませんか? 最近では郊外の物件などで「ゼロゼロ」というケースも増えてきました。では、本当に入居時にかかる費用は「ゼロ円」なのでしょうか。注意点やポイントを解説していきます。

ゼロゼロ物件でも前家賃や保証料、仲介手数料は必要に

引っ越しシーズンを控えて、不動産ポータルサイトなどで物件探しをはじめたという人もいることでしょう。近年、目にするようになったのが敷金・礼金ともにゼロ円という、「ゼロゼロ物件」です。

今までは初期費用として「敷金・礼金」が一カ月、もしくは敷金のみ○カ月というケースが主流でしたが、昨今は借り手が有利なため、ゼロゼロ物件が増えているのです。

ただ、ゼロゼロ物件といえども、「0円」で入居できるわけではありません。初期費用には、敷金・礼金の他に、前家賃(日割り計算し、およそ2カ月分など)、仲介手数料、家賃債務保証会社の保証料、火災保険料などが必要になるからです。ですから、仮に家賃が1カ月6万円の物件を契約するとした場合、25万円程度は必要になるということも。これに加えて、引っ越し費用や家具家電の購入費用も必要になります。

それでも、初期費用が「家賃6カ月分」だといわれていたことを考えると、転居のハードルはぐっと下がります。初期費用が抑えられた分、好きな家具・家電などの購入費用にあてることができるのが最大の魅力といえるでしょう。

お得そうなゼロゼロ物件、注意点はあるの?

初期費用を節約できるゼロゼロ物件ですが、一方で注意点もあります。

(1)ワケあり物件であることも

初期費用が格段に安いということは、物件自体に難があり(駅から遠い、築年数が経過している、設備が古いなど)、通常の募集では埋まらない可能性が高いため、「ゼロゼロ物件」になっているものも。また不人気ゆえに、審査基準も低くなってしまい、入居者の質、設備などに問題がある可能性もあります。

(2)リフォーム費用・設備の故障費用を負担する場合も

ワケあり物件だと、設備自体が老朽化していることもあります。そのため、メンテナンスが適切に行われておらず、通常の使用でも設備が故障してしまう、といったトラブルも。

設備の交換、リフォームなどが必要になっても、交換してもらえなかったり、交換の場合は借り主に半分負担してほしいと申し出てくるといったこともあるようです。キッチンやトイレといった水回りのトラブルは生活に大きく影響するので、注意が必要です。

(3)退去時にクリーニング代がかさみがち

通常、退去時には部屋を原状回復する必要があり、借りた側は修繕費を負担しなければなりません。敷金はこの際の修繕費として充当されることが多いものですが、ゼロゼロ物件では、預けているお金がないので、退去時に請求されてしまい、費用がかさむ可能性があります。

(4)家賃滞納時にすぐ退去を求められる

敷金は家賃を滞納した際の充当費用という性格ももっています。ただ、ゼロゼロ物件だと補填するだけの費用がありません。そのため、仮に数日でも家賃を滞納したときに、即座にカギの交換、退去など、強硬な取り決めを設けているケースもあるようです。

(5)家賃が高めに設定されていることも

敷金礼金分を埋め合わせるため、家賃を相場よりやや高めに設定していることもあります。家賃相場はどのくらいなのか、周囲の相場観を不動産会社の担当者に聞いてみましょう。

「ゼロゼロ」で探すなら、他にも選択肢が

敷金・礼金のゼロゼロ物件は増えていますが、初期費用を抑えて、すぐに住める場所を探しているのであれば、「OYO LIFE」のような新しい賃貸サービス、家具・家電付きのサービスアパートメント、シェアハウスという選択肢も考えられます。

いずれも敷金・礼金が不要で、家具・家電付きということが多いもの。家賃は高めなことも多いですが、短期入居であれば、このほうが好都合という人も多いでしょう。

近年はゼロゼロ物件含めて、こうした今までになかった選択肢が増えています。もちろん、選べるのはよいことですが、きちんとメリットとデメリットを理解する必要があります。部屋探しではわからないこと、聞き慣れない言葉もたくさんでてきますが、恥ずかしいことではありません。わからない部分をクリアにしてから契約するのがよいでしょう。

  • 回遊舎

嘉屋恭子

フリーライター。編集プロダクションなどを経て、2007年よりフリーランスで活動。 主に住まいや暮らしに関わる分野で取材・執筆を続ける。FP技能士2級取得