NHKの大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(毎週日曜20:00~)で、阿部サダヲ演じる田畑政治とともに、1964年の東京オリンピックを盛り上げるべく尽力していく岩田幸彰役の松坂桃李を直撃。日本オリンピック委員会常任委員となった岩田は、流暢な英語で田畑たちをサポートしていく重要な役どころだ。
ようやく平沢和重(星野源)の名スピーチで東京オリンピックの開催が決定し、いよいよ田畑を事務総長にした組織委員会が発足。顧問に大物政治家の川島(浅野忠信)を迎えるが、川島は東京都知事選の際に、田畑との間に因縁があった。また、メダルを獲れる競技を正式種目に取り入れようと考えた田畑は、女子バレーボールチームに注目する。
――宮藤官九郎さんの脚本作品への出演は、日本テレビ系「ゆとりですがなにか」シリーズ以来となりました。今回はどういう思いで参加されたのですか?
2回目のオファーは、プレッシャーでしかなかったです。1回目は「僕に興味を持っていただけて、本当にありがとうございます。精一杯やらせていただきます」と、振り切ってできました。でも、2回目は「前回とは違ったものをちょうだいね」ということを、勝手に自分が感じてしまい、それが怖いし、プレッシャーにもなり、より緊張感が高まりますね。
――実際に参加されてみて、どんなことを感じましたか?
オリンピックの裏で、これだけの人たちが動いていたのか! と驚きました。東京で開催するまでに、並々なら血と汗と涙、鼻水の結晶と、そこの人情、生き様みたいなものが、ストレートに伝わりますが、時には変化球で、くすっとした笑いも入る。あとからじわじわといろいろなことを思わせてくれる本を、宮藤さんは書かれたなと思いました。
――先日、『いだてん』の撮影が無事終了されましたが、その感想を聞かせてください。
いろいろ振り返ってみると、すごく印象的だったのは、去年の9月に撮影したシーンです。上野かどこかのロケで、いきなり「東京」と掲げるシーンでした。まだ、全体の台本がなかったので、気持ちのつながりがわからなくて、阿部さんや松重さんと一緒に「このシーンはどういうテンションなんだろう?」と言いながら撮影したのを今でも覚えています。その時、全員が熱量を大爆発させてやろうと思って臨んでいました。
――その後、しばらく出番がなく、阿部さんが主人公となった第二部で久しぶりに登場されましたね。
秋に撮影があり、その後、まったく撮影がなかったのでで、このままフェイドアウトかなと思いました。実は松重豊さんと、ドラマ『パーフェクトワールド』でもご一緒していて「もう僕たちの出番はないのかな」と話をしていたんです。年をまたいでのドラマ撮影は初めてでした。
――それで、ようやく“チーム田畑”の組織委員会が始動し、また現場に呼ばれた時は、どんな気持ちでしたか?
再び入った時は、改めて「クランクインしました」という気持ちがすごく強かったです。その間、僕もいろいろな仕事をさせてもらっていたので、もう一度入るまでは、完全に岩田役が抜けていました。再び入った現場が都知事室で、ああ、こんな感じでした!というところから、少しずつテンションが戻ってきて、そこからだんだん田畑ブロックのお芝居が定着化していく感じがしました。
――岩田はチーム田畑の一員となりますが、松坂さんから見て、岩田が田畑政治に惚れ込む理由をどう捉えましたか?
阿部さんが演じた田畑さんは嵐のような人です。本来なら、嵐は避けたいところですが、田畑さんは、どこか巻き込まれたいと思わせるような魅力を持っているんです。たぶん、チーム田畑はそういう人たちの集まりだと思います。田畑さんは、すごく口が悪いし、せわしないし、よく怒るし、なんだか情緒不安定です(苦笑)。文字だけ並べていくと、どうなんだろうと思いますが、実際に目の前にしてみると、一緒にいると楽しいことが待っているんじゃないかと思わせてくれるんです。熱量もありますが、それは演じた阿部さんの魅力も大きいんじゃないかなと思います。
――実際に、松坂さんのそばに田畑さんのような方が現れたらどうしますか?
僕だったら、避けたいです(笑)。でも、方向性が合えば、乗っかってみたいとは思いますが、目指すところが違うのであれば避けたいかなと。
――阿部さんの印象についても聞かせてください。
阿部さんは、場の空気を一瞬で変えることができる方です。阿部さんとがっつり共演させていただき、改めてそう思いました。そこは僕自身も、俳優という仕事を続けていくにあたり、身につけていきたいものです。
――東京オリンピックの開催が決まり、『いだてん』がクライマックスに向けての最終クールに入りました。最後にその見どころを聞かせてください。
やっとチーム田畑が動き出し、初回にぽつぽつ出ていた人たちが再登場し、また新たに違う物語の波が生まれると思います。田畑さん演じる阿部さんをはじめ、ちょっと空気が変わって、よりコミカルになるのではないかと。そして初回からの伏線を徐々に回収していきます。きっと、最後のほうで「これが宮藤さんの脚本だ!」と、改めて実感できると思いますので、宮藤さんファンの方も含めて楽しんでいただけたらと思っています。
松坂桃李(まつざか・とおり)
1988年10月17日生まれ、神奈川県出身の俳優。2009年に『侍戦隊シンケンジャー』で俳優デビュー。2019年には『孤狼の血』(18/白石和彌監督)で第42回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。他の主な近年の出演作は、映画『不能犯』(18)、『居眠り磐音』(19)、『新聞記者』(19)、声の出演をした『HELLO WORLD』(19)など。NHKの大河ドラマは『軍師官兵衛』(14)に続き2度目の出演となった。
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