――キャスティングはかつて坂本作品で活躍されたアクション志向の俳優さんで固められている印象ですね。
時代劇専門チャンネルの方たちから『影の軍団』(1980年)シリーズみたいな往年の東映アクション時代劇をもう一度復活させたい、という思いを強く感じました。それなら、演技はもちろん、激しいアクションを自分でこなせる俳優をキャスティングしないと成立しません。刀を構えただけで"この人は強い!"と観ている方に感じさせないといけない……と意見が一致しまして、役に合ったキャストを厳選していった感じです。
――シナリオ作りの段階から、この役者さんを想定している"アテ書き"のような印象を受けるほど、役柄のイメージどおりの俳優さんがキャスティングされていると思いました。
そういった部分は大きくありますね。今回の映画に出てくる「根来衆(ねごろしゅう)」や「戸田重次(とだ・しげつぐ)」という人物は、アニメ版とのつながりを持たない実写版オリジナルのキャラクターなんです。これらはハヤシさんが作られたストーリーに、僕のほうから「こういうキャラを出したい」と提案した部分です。もうこの時点で、このキャラはこの人に演じてもらいたいと想定し、オファーをかけていきました。
――当初は短編映像作品だった企画が、どんどん構想を膨らませることによって、90分越えの「単体作品」へと発展していったわけですね。
そうですね。30分じゃもったいないから「30分×3話」のミニシリーズにしましょうか、というところまで話が広がっていて、3話ぶんの構成にしたんですけど、1本にまとめて編集したバージョンを観ていただいたら「これは分割ではなくて、1本の映画として観たほうが作品の醍醐味がより伝わる」とプロデューサーが判断され、単体作品として世に出ることになりました。
――アニメ作品『BLACKFOX』とこちらの実写版『BLACKFOX: Age of the Ninja』は、時代設定がまるで異なっているとうかがいましたが、いくつかのキャラクターの名前や性格設定などが連動しているそうですね。
主人公はアニメも実写も「石動律花(いするぎ・りっか)」ですし、アニメの「ミア」にあたるのが、矢島舞美ちゃんの演じる「宮(みや)」なんです。ミアはチェスが得意という設定ですが、宮は将棋が上手いという風に、アニメと実写がリンクしているようなキャラ設定が考えられています。アニメ映画を観た後に、こちらの実写版を観ると、そういった関係性がわかって面白いと思います。
――坂本監督から見た、主演・山本千尋さんの魅力とは何か、聞かせていただけますか。
千尋ちゃんは子どものころから中国武術をやっていて、日本人でありながら本場中国の選手を抜いて世界チャンピオンになった人。「世界」で頂点をつかみとるには、よほどの特性や努力がないとたどりつけません。それを成し遂げた時点で、背負っているものが違うと思うんですよ。ですから、彼女がアクションをしていると、体の中からオーラというか、目に見えない気迫のようなものが出ているんです。そういうところがとても稀有な存在だと思います。これまで僕が一緒に組んだ作品では、千尋ちゃんの得意とする中国武術を前面に押し出したキャラクターとして描いてきましたけど、今回は中国武術をあえて"封印"してもらって、彼女の違った魅力を引き出したいと思って取り組みました。