広瀬すず主演のNHK連続テレビ小説『なつぞら』(毎週月~土曜8:00~)の3日放送の第134回で、吉沢亮演じる山田天陽が、彼らしい最後を遂げた。いま、日本中が天陽ロスの真っ最中だ。予告編で「なつよ、天陽くんにさよならを」という副題が明らかになり、天陽に死亡フラグが立った先週土曜日、早速Twitterのトレンド1位が「天陽くん」になったが、恐れていたことが現実となった。
第132回で、農協の仕事で上京してきた夕見子(福地桃子)の口から、天陽が風邪をこじらせて入院したことが明かされた。そして2日の第133回で、一旦病院から家に戻った天陽が、妻・靖枝(大原櫻子)に感謝の言葉を述べて抱きしめる。いよいよかと思ったら、やはりその翌朝、天陽が1人で朝のじゃがいも畑へ向かい、その場で静かに崩れ落ちた。
そもそも天陽のモデルだと噂されている画家の神田日勝が短命だったが、やはり天陽も若く美しいまま、天国へ旅立ってしまった。言うまでもなく、『なつぞら』において、中川大志と並ぶ国宝級イケメン俳優、吉沢亮がいなくなるのは大きな損失だ。
朝ドラにおいて、ヒロインの伴侶とならない二番手の男は、ヒロインとの愛を全うできない悲恋キャラだからこそ、一層の輝きを放つ。近年の朝ドラでいえば、『あさが来た』でディーン・フジオカが演じた五代友厚や、『ひよっこ』で竹内涼真が演じた島谷純一郎、『わろてんか』で高橋一生が演じた伊能栞などがそのいい例で、一番手に拮抗するほどの人気を博した。
なつが上京後、すでに天陽ロスの言葉がささやかれ、天陽が結婚した時も、SNSが祭りになったが、今回の“リアル天陽ロス”はかなりビッグウェーブとなった。その痛手を少しでも和らげるべく、これまで何度も胸キュントラップを仕掛けてくれた天陽の印象的な名シーンを時系列で振り返ろう。
1つ目は第34回。なつが天陽の前で、アニメーターを目指して上京するかどうかを迷っている時にやりとりをしたシーンだ。天陽は常になつの味方で、なつの幸せをバックアップする存在だが、珍しくなつを思う本音を漏らす。「(東京に)行きたいなんて言ってない」というなつに、天陽が「だったら行くなよ」と口に出してしまったのだ。まさに天陽ファンが心を鷲づかみにされたシーンだ。
2つ目は第42回で、なつが天陽から卒業をするシーンだ。スキー大会で照男(清原翔)に勝った天陽は、照男からなつに告白するように言われていたが、結局、その思いを押し殺し、「俺は待たんよ」と、上京することが決まったなつの背中を押すことに。何とも切ない……。
そして天陽は「道に迷った時は、自分のキャンバスだけに向かえばいい。俺となっちゃんは、何もない、広いキャンバスの中でつながっていられる」となつに告げる。これは、なつとの別れの言葉でありつつ、ある意味、永遠につながっていることを伝える究極の告白でもあった。実際、なつはその後の人生でも、何度かこの言葉を反芻することになる。この時、手袋で手を握り合った2人の純愛は、崇高さを醸し出していた。
3つ目は続く第43回だ。上京するなつと雪次郎(山田裕貴)の送別会と、夕見子の北海道大学合格祝いの会が雪月で開かれる。天陽はなつに「今まで本当にありがとう。俺はなっちゃんが好きだ。それはこれからも変わらない」と、これまたドストレートで清々しい愛の告白をする。ここで、純愛が永遠の愛に昇華された。
そして究極に切なかった4つ目は、遂に天陽がなつへの愛を改めて封印することを誓う第60回だ。なつから定期的に届く手紙を読んできた天陽。その手紙には「十勝に帰りたい。みんなに会いたい。だけど今は、振り返りません。私はここで、生きていきます」と書かれていた。
なつを東京へ送り出した時点から、天陽はなつへの愛を断ち切ると決めていたが、そのことを自ら再確認するように、最愛のなつを描いた画を、泣きながら絵の具で塗りつぶすことに。この決別のシーンに、視聴者は涙した。
結局、天陽は、その後、靖枝というすばらしい伴侶を得ることになるが、遠くからなつの幸せを願い続けてきた。言わば、なつのことを心から愛しているがゆえに身を引いた天陽だが、なつの人生に大きな影響を及ぼし、ある意味、彼女にとって“永久欠番男”になったのではないか。
今後、なつが天陽の死をどう受けとめ、そこから何を見出していくのか?ぜひ、そこをしかと見届けてほしい。今週は見逃せない“神週”となりそうだ。
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