東京急行電鉄および東急不動産は8月29日、「エンタテイメントシティSHIBUYA 変わりゆく渋谷」最新情報発表会を開催した。再開発の進む渋谷駅周辺地区にて、これから開業する施設や新たなプロジェクトに関する最新情報が発表された。
今回の発表会は第1部・第2部に分かれ、第1部の発表会では4つの発表があった。最初に「渋谷スクランブルスクエア第I期(東棟)」についての発表が行われ、渋谷スクランブルスクエア SHIBUYA SKY支配人の新屋潤氏が登壇した。
「渋谷スクランブルスクエア第I期(東棟)」は渋谷駅直結で地上47階建て、高さ230mの建物に、商業施設、オフィス、産業交流施設、展望施設を備える。鉄道各線との乗換えにおいては、エスカレーターやエレベーターを利用した縦軸空間「アーバン・コア」の整備により、利便性が向上する。
14階および45階から屋上までは展望施設「SHIBUYA SKY(渋谷スカイ)」となっており、屋上から渋谷駅前のダイナミックな展望を楽しめる。一方、45・46階の屋内ではおみやげショップやカフェ&バーなどが設置され、天候に左右されない環境でも景色やコンテンツを楽しめる。
「渋谷スクランブルスクエア第I期(東棟)」の開業は2019年11月1日を予定している。今後、「渋谷スクランブルスクエア第II期(中央棟・西棟)」が2027年度の開業を目標に建設が進められる予定だ。
2つ目の発表は、「渋谷フクラス」についての最新情報。東急不動産の都市事業ユニット渋谷プロジェクト推進本部執行役員本部長、鮫島泰洋氏が登壇した。
「渋谷フクラス」は、下層階が「東急プラザ渋谷」を中心とした店舗、上層階がおもにオフィスとなる。今年11月から順次開業する予定だが、施設によって開業月日が異なるとのこと。「東急プラザ渋谷」は12月開業予定とされ、入居するテナントの詳細は9月11日に発表予定とのことだった。
1階にはバスターミナルを設置。一般の路線バスだけでなく、羽田空港直行便のバスが1日31便、成田空港直行便のバスが1日29便乗り入れるという。12月上旬から乗入れ開始する予定となっている。
バスのりばの目の前に、観光支援施設「Shibuya-san(シブヤサン)」を設置。そのまま敬称で「渋谷さん」と覚えるとわかりやすい。観光コンシェルジュが来訪者に寄り添う形で観光案内を行い、初めて渋谷を訪れる外国人にも親しみやすく、街の一員になれたと実感してもらえる場を提供する。「Shibuya-san」は12月の開業を予定している。
3つ目の発表は、渋谷駅地下広場の概要と渋谷駅地下出入口番号変更について。渋谷駅前エリアマネジメント事務局次長も務める東京急行電鉄渋谷開発事業部開発計画グループ課長補佐の秋元隆治氏が登壇した。
渋谷駅ではJR線東口改札口および地上交通広場から東急電鉄・東京メトロ各線の改札口へと至る動線上に東口地下広場の設置を予定している。渋谷川の下をくぐるように広場が整備され、開業後は頭上に川が流れる壮大な空間を利用者が行き交う。
今後は観光案内機能を有するカフェや都営バスの定期券発売所兼案内所、新しい公衆トイレ、コインロッカーの設置を予定。あわせてフリーWi-Fiも提供される。
渋谷駅地下出入口番号の変更については、エリア制を導入し、出口ごとに「A」~「D」のエリアに分かれて表記されるようになる。各エリアとも今後の新設出入口に対応するため、最も遠い出入口から番号が振られる。こちらも11月1日から供用開始する予定だが、「D」エリアのみ工事が続いており、桜丘口地区の工事に合わせて2023年度の開業を目標としている。
渋谷駅周辺の開発が2019年で節目を迎えることにより、今後は街が一体となって地域を盛り上げる取組みが行われていく。「HELLO neo SHIBUYA」をテーマに、「まちびらき」として世界に発信していく姿勢もうかがえた。
4つ目は今回新たに発表される内容で、「渋谷二丁目17地区第一種市街地再開発事業」についての情報となる。東京急行電鉄渋谷開発事業部開発計画グループ課長の田邊秀治氏による説明が行われた。
計画地は「渋谷ヒカリエ」の東側となっており、国道246号(青山通り)に接する。他施設と同じく下層部に商業施設、上層部にオフィスを設置予定となっている。
同施設へは「渋谷ヒカリエ」から2階の貫通通路が通じており、デッキでつなぐことによって雨に濡れることなく移動が可能に。そのまま歩道橋を介して「渋谷クロスタワー」にもつながるため、これまで課題だった坂道の移動を解消することになり、回遊性が向上する。
渋谷二丁目17地区市街地再開発事業は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会以降の「変わりゆく渋谷」のひとつとして、2024年度の開業をめざしている。
続く第2部では、渋谷のまちづくりの経緯と変化について、東京急行電鉄渋谷開発事業部開発計画グループ課長の宇留間範昭氏がプレゼンを行った。
これまでのインフラ整備や鉄道・道路によって街が分断され、さらに駅施設の増改築が行われてきた結果、渋谷駅周辺は構造が複雑化している。また、谷地形ゆえに自然災害の影響を受けやすい側面も抱えている。しかし一方で、2013年に東急東横線が地下化されたことにより、新たな再開発の機運も高まっている。
こうした背景の中、行政・住民・事業者間で「渋谷駅中心地区まちづくり指針2010」がまとめられた。この指針にもとづき、まちづくりの戦略が立てられ、渋谷川の再生、動線の改良、安全性の強化、にぎわいのあるまちづくりなど、多くの取組みが行われてきた。
それらによる変化として、2012年以降の来街者数が増加し始め、再開発の進行にともない回遊性が向上。オフィスワーカーの数も増加している。東急グループは「エンタテイメントシティSHIBUYA」を将来ビジョンに掲げており、これまでの取組みと変化を踏まえ、渋谷をより楽しく、利便性のある街にすべく開発を続けていくようだ。
「渋谷スクランブルスクエア第I期(東棟)」と「渋谷フクラス」の開業、駅東口地下広場の供用開始と地下出入口番号変更などを皮切りに、今後の街の変化に期待したい。