日本の高齢化率は28.1%で、4人に1人が65歳以上の超高齢社会(※1)。社会の高齢化に伴い、年々、深刻化しているのが空き家問題です。消費税率の引き上げ、税制改正など、刻々と制度や状況が変化するなかで、何から手を付けたらいいのか途方にくれている人もいるのではないでしょうか。

今回は、「将来、実家が空き家になりそう」「空き家を相続することになるかも」、そんな空き家予備軍の人に向けた、はじめの一歩をご紹介しましょう。

増える一方の空き家! 書店には関連書籍がずらりと並ぶ

総務省の住宅土地統計調査によると、現在、日本にある空き家数は 846 万戸と推計されています(2019年4月発表データ)。

これは5 年前と比較すると26 万戸(3.2%)ほど増えており、住まい全体に占める空き家の割合は13.6%と過去最高を記録。この数字をもとに、よく「7軒に1軒が空き家」といわれていますが、今後、さらに進んで4件に1件が空き家または空き家予備軍とも言われています。

そうした状況に呼応するように、書店には「相続した空き家をどうするか」「空き家問題を一挙に解決」といった雑誌・書籍がずらりと並んでいます。また、東京都は空き家対策をまとめた一冊「東京空き家ガイドブック」(※2)を刊行。都会で暮らしていても、空き家問題は他人事ではいられないのです。

空き家問題の最大の難しさは、相続を含めた現行制度を理解したうえで、リフォーム・解体・売却など自身で情報を集めて、方針を決め、決断しなくてはならない点にあります。若い年代であれば負担になりませんが、60代70代と年齢を重ねるほどに、体力的にも精神的にも重荷に感じる人が多いようです。

また、すでに1つの空き家であっても複数の相続人がいることがあり、権利関係が複雑で意思決定が大変ということもあります。しかも古い不動産であれば不動産登記がされておらず、文字通り「誰が関係者かわからない」「どこから手を付けたらよいのかわからない」というケースも多いようです。

相続前の情報収集と整理、意思確認が大切に

引き継いだ空き家の対処法を大きくまとめると、(1)売却する(2)賃貸する(3)用途変更して活用する(住まいを取り壊して駐車場にするなど)の3種類が考えられます。

具体的な対応策については、先ほどご紹介した「東京空き家ガイドブック」などを参考にしていただき、今回は「将来、実家が空き家になりそう」「空き家を相続することになりそう」という人に向けた、空き家トラブルを回避するための予防策について解説していきましょう。

空き家問題が発生するのは、相続および住み替えというタイミングです。このときに空き家の問題解決を困難にしているのは、今は決められないからと決断を「先送りすること」。逆に相続前の情報収集・整理整とん、意思確認さえできていれば、大きな問題にならずに済むのです。

そのため、まずは「今の家」の情報収集が欠かせません。そもそも家、不動産は実勢価格と相続税評価額があり、金額が異なります。親が所有する不動産はいくつあり(子どもも知らない土地やマンションを所有していることもあります)、金額がいくらなのか、また相続人は誰になるのかを確認し、それとなく意向を確認しておけると良いかもしれません。

情報収集という意味では、権利関係の書類の確認も欠かせません。書類といっても1つではなく、登記簿や権利証、設計図面、測量図面、近隣との合意書、売買契約書など、多岐に渡ります。こういった書類がどこにあるのか、まとめておいてもらえると慌てることが少なくなります。

また、古い建物では、土地境界があいまいであったり、土地や建物が共有状態になっていたりすることもあります。その場合、土地家屋調査士に依頼し、土地境界を明確にしておきたいものです。測量代金がかかりますが、相続を「争族」にしないための必要な費用だと考えるようにしましょう。また、共有状態になっているのであれば、できるだけ一本化してもらえるよう、話し合っておきたいところです。

お盆休みや夏休み期間中は家族や親戚が集まる機会が増えます。こうした「相続」の話は、親や親戚ができるだけ元気なうちに明るい雰囲気で進めたいもの。家の思い出を振り返りながら、「将来、親や家族はどうしたいと考えているのか」を話し合えるとよいですね。

  • 回遊舎

嘉屋恭子

フリーライター。編集プロダクションなどを経て、2007年よりフリーランスで活動。 主に住まいや暮らしに関わる分野で取材・執筆を続ける。FP技能士2級取得