俳優の間宮祥太朗が主演を務めるテレビ朝日系新ドラマ『べしゃり暮らし』(毎週土曜 23:15~24:05)が、26日からスタートする。
このドラマで演出を務めるのは、お笑い芸人の劇団ひとりだ。『べしゃり暮らし』は間宮演じる高校生・上妻圭右が漫才コンビを結成するストーリーだが、ひとり自身も高校生漫才コンビとして活動していた過去があり、「圭右とダブった部分はあります」と明かす。
そして、圭右のように「お笑い界で売れたい」と野心を抱く人たちに対してのアドバイスも語った。
■役者陣の漫才シーンは「ぜひ温かい目で見守ってほしい」
――過去には映画監督のご経験がありますが、連続ドラマの演出を務められるのは、自身初ですね。
とにかく海外ドラマを観るのがすごく好きなので、ドラマをやってみたいなとずっと思っていました。海外ドラマはもう何十年と夜な夜な見ているんですよ。数えてないですけど、おそらく1,000作品は見ていると思います。そんな折、テレビ朝日の方とまったく別の話をしているときに、「こんな話があるんだけどどうかな。実はお笑いの話なんです」と言われて、「僕がやることに意味がある話が来たな」と、即答で快諾しました。
――映画とドラマでの、演出の違いはなんですか。
初めてのドラマなので、他のドラマはどうなのか分かりませんが、かなり臨機応変にやらなくちゃいけないと感じました。時間的、金銭的な制約も含めて、現場現場でやらなくちゃいけないことが多かったですね。映画の場合は、クランクインする前に大方見えているといいますか、お芝居やカット割りも全部決まっているし、全体像がかなり細部まで見えた状態で撮影するので。なので、今回の作品では、現場で役者さん、スタッフさんとよく話し合いました。本当に一丸になって撮っているなという感じがしますね。
――今作では、役者さんの漫才シーンも見どころの1つです。
それが今回、1番苦労したところですね。漫才シーンの説得力というか、「これじゃ客は笑わないだろ」というネタだと、視聴者の方も冷めると思うので。そういう意味では、ある程度の芸人としてのたたずまいがないと、お客さんを説得できないなと思ったので、役者さんに頑張ってもらいました。
よくテレビドラマの中に出てくるステレオタイプな姿ではなく、もうちょっと地に足のついた、リアリティのあるネタにはできたかなと思います。いろんな役者さんがすごく一生懸命考えて、汗水流して頑張ってくれたので、ぜひ温かい目で見守ってほしいです。
――今作は、高校生がお笑い芸人を目指す姿を描いています。ひとりさんも、高校生時代から漫才コンビを組んで活動していましたが、かつての自分と劇中の登場人物が重なることはありましたか。
主人公の圭右は"井の中の蛙"で、学校の中ではすごく面白いとされていたけど、お笑いの世界に入って挫折をします。でもこれは、大半の芸人が経験していることじゃないかなと思います。僕も中学高校ではみんなから「面白い」と言われた人間ですけど、お笑いの世界に飛び込むと、学校一のひょうきん者が全国から集まっているので、挫折も経験しました。そういう意味では、圭右とダブった部分はありますね。
■「負け組として売れるのか、勝ち組として売れるのか」
――ひとりさんは圭右のような、「お笑い界で売れたい」と野心を抱く1人の名もない高校生に対して、どんなアドバイスをしますか。
どのスタイルでいくか、というのを明確に決めた方がいいですね。「負け組として売れるのか、勝ち組として売れるのか」。どちらを目指すのか、まず自分の力量を見定めた方がいいと思います。ストロングスタイルでいくんだと決めたら、徹底的にネタをどんどん作ってくべきだし、そうではないわき道から入っていくんだというなら、なにか1個、他の誰もが太刀打ちできないすごい特殊な芸や知識を持つべきです。
どうしても特殊なことをやっていると、「もうちょっとまともな方がいいのかな」とやり通せなくて、すごく中途半端になる芸人が多いんですよ。だから、自分の信じるものがあったら、それをやり通すべきですね。そのことに関しては誰にも負けないというものを1個持っておくのは、テレビに出ることをひとつの価値観とするんだったら強いと思います。
――同じ事務所のマシンガンズ・滝沢(秀一)さんも、最近はゴミの知識を武器に、いろいろなお仕事をされていますね。
あれなんて特殊も特殊ですけどね(笑)。いわゆる王道のスタイルでやっていて、「もうお笑いは厳しい、生活できない」って半ばあきらめて、ゴミ清掃員を始めたら再ブレイクするという。あのルートは、さすがに誰も気がつかなかったと思います(笑)。でもなにかしら1個、強みを持っておくというのは、テレビに出ることがすべてではないですが、テレビに出たいのならば分かりやすいですよね。番組でこの特集をするから、アイツを呼ぼうってなりますから。
――ひとりさんは、自分が面白いと思うことを貫き続けて、結果を出すのは難しいと思いますか。
お笑いを始めて何年かすると、みんなぶつかることなんですよね。自分が面白いと思うことをやるべきか、お客さんが面白いと思うことをやるべきかってすごく悩むんですけど、結論を言えば、両方とらなきゃダメだし、両方とれない芸人は売れないです。
お客さんにウケることだけを考えてやって、ライブではすごい人気あるコンビもいっぱいいたんですけど、全員消えていきました。お客さんに迎合して、自分がないんですよね。かといって、「俺はこれが面白いんだ」って突き進んでいる人はアングラで、続けていても売れはしないんですよ(笑)。テレビに出てお金を稼ぐということを成功とするならば、やっぱり両方できないとダメです。
――そうなんですね。
自分が面白いと思っていることが世間と合わないということは、ほぼないので、どうやってお客さんに面白いと気づかせるかが芸人の力量です。例えば、(ビート)たけしさんや松本(人志)さんは、それまでみんなが気づいていなかったところに、「これが面白いんだ」と笑い方を教えて、お客さんを育てた部分があると思いますね。
■劇団ひとり
1977年2月2日千葉県生まれ。A型。1993年にデビューし、2000年から劇団ひとりとしてピン芸人に。2006年、『陰日向に咲く』で小説家デビューし、100万部を超えるベストセラーに。2014年、初映画監督作品『青天の霹靂』公開。現在は日本テレビ系『幸せ! ボンビーガール』、テレビ東京 『ゴッドタン』などに出演中。
■『べしゃり暮らし』
テレビ朝日系で7月27日(毎週土曜 23:15~24:05)からスタート。単行本累計7,500万部以上を記録した漫画家・森田まさのり氏の漫画『べしゃり暮らし』の初映像化となり、主演を務める間宮祥太朗が渡辺大知と漫才コンビ役に挑戦する。劇団ひとりが連続ドラマの初演出を務める。