そんな親子を演じる上野と時任のクランクインは、被災地を訪れた三陸鉄道の車内のシーン。その後、上野が1人で泣きじゃくる場面を撮影したのだが、「素材としては車窓から海が見える瞬間を使いたいんですが、トンネルがすごく多い路線なんです。でも、上野さんはそんなことを気にせず、何十分も泣きじゃくってくれて、それを見るだけでこっちも涙が出てきて…。そのシーンが終わって、監督が『ごめんね、トンネルの部分はそんなに使わないから、休んでもらってて大丈夫だったんだよ』と気遣ったら、上野さん、いつトンネルに入っていたか気づいてなかったそうなんです」と、完全に役に入り切っていたそう。
クランクインから号泣するシーンの撮影は異例。「泣き芝居って役者さんにもストレスがかかるものなので、普通、プロデューサーなら『大丈夫かな…』と心配しなきゃいけないんですけど、思わず『朝顔、かわいそうに…』と見てしまいました」と、引き込まれたそうだ。
上野の“座長”ぶりを聞くと「座長というよりも“軸足”という感じです」とのこと。「時任さんも風間(俊介)さんも山口(智子)さんも、みんな上野さんより年上なんですが、引っ張っていくと言うよりも、すごくナチュラルにみんなの拠り所のようになってるんです」という。
■風間俊介は「かわいい人」
朝顔の恋人・桑原役を演じるのは、風間俊介。「上野さんと時任さんが、ふと暗い過去に入る瞬間がある中で、桑原は常に明るく振る舞ってくれるんです。物語として、視聴者の方が新しい事実を桑原と一緒に知るという役割を果たすときに、すごく純粋な表情を見せてくださるので、私より年上なんですけど、『かわいい人だな』って思っちゃいます(笑)」と印象を語る。
また、朝顔の母・里子役で石田ひかり(93年『あすなろ白書』主演)、法医学教室の主任教授・夏目茶子役で山口智子(96年『ロングバケーション』主演)という“月9レジェンド”も集結。上野も『のだめカンタービレ』(06年)以来の月9主演だが、入社8年目で、月9全盛期を現場で経験していない金城Pは「結果的にそうなったんです(笑)」と意識していなかったそう。それでも、月9という枠に対して、石田が「特別な思い」、山口が「ホッとする親近感」とコメントを寄せたことで、金城P は「先輩方の礎のもとに日本の皆さんに愛されてきた枠だったんだということに、あらためて気付かされました」と話した。
この月9で、前の4月期に放送された『ラジエーションハウス』の特別編(6月24日放送)に、法医学教室の検査技師・高橋涼介役の中尾明慶が“クロスオーバー出演”したことが話題となった。これは『ラジハ』の中野利幸プロデューサーが、後輩である金城Pにつなげようと発案して成立したものだ。『ラジハ』現場での中尾の様子は「前から出演していたかのように、一瞬で皆さんと仲良くなっていました(笑)」と、完全になじんでいたという。
両作では、『ラジハ』主演の窪田正孝が『朝顔』のセットに来て、上野への“バトンタッチ”セレモニーも行っており、金城Pは「月曜9時にチャンネルを合わせることが少しでも楽しみにしてくださっている方に対して、ご期待に沿える作品になれば」と、気を引き締める。
そして、「豪華なキャストの皆さんがいろんな表情を見せてくるドラマなので、長く見ていただければそれぞれのキャラクターのことをもっと好きになってくれると思います。夏の月曜9時、ぜひいろんな方に見てほしいなと思います」と呼びかけていた。
●金城綾香
1987年生まれ、兵庫県出身。12年フジテレビジョンに入社し、『5→9~私に恋したお坊さん~』『営業部長 吉良奈津子』『グッド・ドクター』『犬神家の一族』などを担当。19年7月期の『監察医 朝顔』をプロデュース。