女優の上野樹里が主演するフジテレビ系月9ドラマ『監察医 朝顔』(毎週月曜21:00~)が、きょう8日にスタートする。上野演じる新米法医学者・朝顔と、時任三郎演じる父であるベテラン刑事・平が遺体の謎を解き明かしていくのに加え、東日本大震災を通じた人間ドラマも大きな要素として描かれていく。

プロデューサーを務めるのは、昨年7月期に放送された『グッド・ドクター』も手がけたフジテレビの金城綾香氏。同作でほれ込んだという上野の魅力や、 制作の裏話などを聞いた――。

  • 『監察医 朝顔』に主演する上野樹里

    『監察医 朝顔』に主演する上野樹里 (C)フジテレビ

■遺族のその後を描く作品がなかった

原作の漫画をドラマ化する理由を尋ねると、「『グッド・ドクター』で山崎賢人さんと上野さんといろんな病院を見学させていただいたとき、小さな命が頑張って生きているんですが、やっぱり『この子はもう助かる見込みがないんだ』という話を聞いたり、『グッド・ドクター』の3話で上野さん演じる夏美先生が治療に尽力したお子さんが亡くなるという話をやったりして、医療ドラマは命が助かる話ばかりをしてると思ったんです。一方で、刑事ドラマがたくさんあって、殺人事件があふれているんですけど、みんな犯人を捕まえると終わって、残された遺族の方のその後は描かれないなという印象がつながって、このタイミングで“亡くなった方”をテーマにやってみたいと思ったんです」という金城P。

それに加え、「『グッド・ドクター』をやっていたときに、仲の良かった友達が亡くなって解剖されたという話も聞いたんです。すごく身近な人が亡くなるという出来事も、企画した理由の1つにあります」といい、上野とまた一緒に仕事をするにあたって題材を選定する中で、「ピタッとハマった」のが『監察医 朝顔』だった。

こうして実際に撮影が始まると、そのハマり具合は「自分の想像力なんて甘かったんだと思い知らされました」というほど。「脚本家さんや監督と打ち合わせして台本を作って、『このシーンはこんな感じになるんだろうな』なんて予測するんですけど、そんな想像がチープだったと思わせるくらい、抜群の表情や言葉でお芝居をしてくれるので、自分もいち視聴者として『なんて面白いお話なんだ!』って思える感じがあるんです」と、上野を起用した手応えを語る。

上野は今作でも、事前に医療監修の医師が勤める病院を訪問し、前日に実際使っていたという解剖室も見学。スタジオ撮影では、監修の先生に動きなどを細かく確認する姿があった。「ドラマってある程度ウソをついて、ある程度守らなきゃいけないリアリティーもあるという中で、説得力を持たせるのは役者さんの芝居でしかないと思うんですけど、そこを本当にうまく表現してくださるんです」と、あらためてその演技力に舌を巻く。

  • 上野樹里 (C)フジテレビ

  • 上野樹里 (C)フジテレビ

■「東日本大震災で行方不明」に設定変更の理由

朝顔の母・里子は、原作では阪神大震災亡くなっているが、ドラマ化するにあたって舞台を2019年の現在に置き換え、8年前の東日本大震災で被災・行方不明という設定に変更した。

「私は出身が兵庫で、小学1年生で阪神大震災を経験したんですが、8年経った時は街として立ち上がっていたイメージがあったんです。でも、今回3・11に置き換えようと思って調べたら、8年経った今もまだ立ち上がってる途中でいらっしゃると知って、津波の恐ろしさをあらためて実感しました。それをどう表現したらいいんだと思ったときに、毎回解剖するご遺体と向き合う親子にとって、最愛のお母さん・奥さんの遺体が見つかっていない、“無い”悲しさをドラマで扱ってみるのはどうかと考えました」と、背景を説明する。

また、「『亡くなったかどうか分からない』という“不明確”なものを、ドラマではあまり扱わない印象だったので、脚本家さんにも相談してあえてやってみることになりました。この悲しさは、私たちには到底想像が及ばないところなので、手探りではありますが」と狙いを明かしてくれた。

  • 上野樹里(左)と母・里子役を演じる石田ひかり (C)フジテレビ

このための役づくりとして、上野は、東日本大震災の被災地・岩手県陸前高田市にも2泊3日で訪れている。津波で妻を亡くした福田利喜市議会議員に案内され、“奇跡の一本松”といった象徴する場所に行ったり、話を聞いたりし、最後には地元の人たちと夕食を囲んだ。「ここまで丁寧に役づくりをしてくださる方はなかなかいないと思うので、クランクイン前にできたというのは貴重でした。この経験を朝顔の中に入れてくれたからこそ、ハッとするような表情をしてくださるだろうなと思います」と、演技に生きているそうだ。

被災地訪問では、弟さんがいまだに行方不明という人にも話を聞いたそう。「行方不明という事実に対して、親族の人によっていろんな思いがあるということも知れて、その方にも『(行方不明者の家族を描くことを)やってくれたらいいと思います』と言ってもらい、勇気を頂きました」といい、第1話から、“今も妻を探し続ける父”と、“8年経っても1回も東北に行けなかった娘”の姿が描かれる。

「朝顔と平は仲が良くて寄り添っていても、お母さんのことに対して立場が違う“グラグラ感”があります。とんでもないショックな出来事があって、2人で精いっぱい立っているので、これ以上何かがあるとどちらかが崩れ落ちてしまうという絶妙なバランスが取れたら…という話を、上野さんと時任さんともしています」という。