元タレントの坂口杏里に密着した、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション ワケあって…坂口杏里』が、きょう30日(14:00~ ※関東ローカル)に放送される。取材した福田真奈ディレクターは、ナレーションも自ら担当し、涙があふれて声が詰まってしまう場面もあった。

そんな福田氏は、杏里に対してどのような心情でこの密着に臨んだのか。話を聞いてみた――。

  • 『ザ・ノンフィクション』の密着を受ける坂口杏里

    『ザ・ノンフィクション』の密着を受ける坂口杏里 (C)フジテレビ

■好奇の目を向けていた1人だった

福田氏が杏里を取材することになったきっかけは、杏里が3万円の恐喝容疑で逮捕され、不起訴処分で釈放された姿を見た番組プロデューサーから「そんなに根が悪い子ではないんじゃないか。取材してみたらどう?」と提案されたこと。まず、インスタグラムにメッセージを送って取材を申し込み、しばらく返事はなかったものの、ストリップ劇場の浅草ロック座に出演することになった杏里から「その取材だったらどうですか?」と申し出て、密着が始まった。

2013年に母・坂口良子さんを亡くしてホストクラブにハマり、借金を背負い、芸能界から姿を消し、夜の仕事を始め、逮捕までされてしまった杏里。多くのマスコミ、ネットニュースがスキャンダルを面白おかしく書き立て、自身も「好奇の目を向けていた1人だったのかもしれない」と振り返る福田氏だが、「最初にロック座で取材したときから、自分の見え方をあまり気にしない飾らない子だなと思ったんです。『タバコ吸うところ撮らないほうがいい?』とこっちが気にしても『あぁ、全然大丈夫』っていう感じで」と、意外な印象を持ったという。

ロック座のスタッフが撮影を止めようとしても、杏里は「福田さんのカメラは入れてあげて」と、すぐに受け入れてくれたそう。遠くからスキャンダラスに騒ぎ立てる顔の見えないメディアではなく、真正面から取材してくれることに好意を持ったのに加え、福田氏は「“味方だよ”っていう気持ちを伝えるようにしてました」と、信頼を得ていった。

  • 取材した福田真奈ディレクター

■遺書が送られて…

そんな中、昨年9月の深夜、杏里から自殺を図ったという衝撃的な連絡が入った。彼女からは“遺書”も送られ、「取り乱して何があったのかもよく分からなくて、5~6時間話を聞いてました」という。この事件をきっかけに距離も縮まり、最初は「福田さん」だった呼び方も、「福ちゃん」へと変わっていく。

杏里に対しての一番の感情を聞くと、「ほっとけない」という福田氏。「本人は『おバカキャラを演じてた』と言うんですけど、本当に抜けてるところがあって(笑)。信頼できる人があまり周りにいなそうな感じがあるし、今までいろいろ裏切られたりもしてきて、人に対して疑心暗鬼になってるところもあるので、『本当に大丈夫?』って心配な気持ちがあるんです」という。

密着のVTRを見ていると、最愛の母を失って心のバランスを崩した杏里は、約10歳離れている福田氏に出会い、まるで“姉”のように慕って安定を取り戻そうとしているようにも見える。

  • 坂口良子さんのお墓を訪れた坂口杏里 (C)フジテレビ

■「頑張れ」という気持ちから涙

番組の最後には、母の5度目の命日にお墓で話しかける杏里の姿が。ナレーションを読む福田氏は、収録の際に感情がこみ上げ、何度も言葉が詰まってしまった。「実は、お墓の前では30分くらい話しかけていたんです。その前の良子さんの誕生日にもお墓に行ってそれくらい話しているそうなので、あのシーンを見て、また『わざとらしいな』と思う人もいるかもしれませんが、あれは本当の感情でしゃべっていると思うので、グッと来てしまうんです」という。

その心情は「これだけ世間から批判されているのも見ているし、落ちるところまで落ちたのも見ている。でも、もう1回芸能界に復帰したいとか、バンドをやりたいとか、何か新しくやりたいことを見つけて動き出していることが、一歩前に進んでる感じがするので、『頑張れ』っていう気持ちですね」と、胸の内を明かした。

  • 涙でナレーション収録が止まってしまった福田氏

タイトルの「ワケあって…坂口杏里」は、杏里の“訳あり”人生を表すのはもちろんだが、「杏里ちゃんと気持ちを“分け合いたい”という気持ちもあって、ダブルミーニング的につけたんです」とのこと。「この番組が放送されて杏里ちゃんが批判されたりするかもしれないけど、自分でナレーションを読むことで、私も半分背負えるかなとも思ったので」と、“妹”を見守るような視線で語っていた。