斎藤慎太郎王座への挑戦権を争う第67期王座戦挑戦者決定トーナメントは、6月24日に2回戦の羽生善治九段―佐々木大地五段戦、25日に同、豊島将之名人―渡辺明二冠戦が行われ、羽生九段と豊島名人が勝って準決勝へと進みました。
準決勝のひとつは豊島VS羽生の組み合わせに
羽生九段―佐々木五段戦は相居飛車へと進み、開始から60手まで互いに開戦せず、スキを作らぬよう自陣内で玉や大駒の飛車・角、金などを動かし合う、アマチュアには手の意味の理解が難しい応酬が続きました。61手目に先手の羽生九段が歩交換に出てようやく中盤戦に突入。羽生九段がペースを握ったかに見えましたが、終盤、佐々木五段が勝負手を出して千日手、引き分けに持ち込みました。終局は21時33分。規定により先後を入れ替え30分後に指し直し局が行われることとなりました。
指し直し局の持ち時間は千日手局の残り時間を引き継ぐことになっていますが、いずれか、もしくは両者の持ち時間が1時間を切っていた場合は少ないほうの持ち時間を1時間とし、そのために加算した時間を相手の持ち時間にも加算する決まりとなっています。本局の千日手局においては、両者の残り時間はいずれも5時間の持ち時間を使い果たし「0」になっていたため、指し直し局の持ち時間は各1時間となりました。
有利と思われた対局を千日手に持ち込まれ、さらに後手となって条件を悪くしたかと思われた羽生九段でしたが、千日手局で果敢な攻めを見せました。後手番のうえさらに自ら1手遅れるように指す角換わり「一手損角換わり」を採用し、中盤、先手陣に向かって桂馬を跳ね、角を打ち込んで敵陣を切り崩しに掛かります。終盤で佐々木五段のほうに粘る順もあったようですが、結果的には羽生九段が細い攻めをつなぎ切って押し切る形となりました。
終局は日付変わって翌0時44分。一般的にベテランより体力、瞬発力でまさる若手に、夜戦、かつ持ち時間の短い将棋で打ち勝った羽生九段が、無冠返上へ向け大きな1勝です。
豊島名人―渡辺二冠戦は現在第90期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負で相まみえている(※スコアは1-1)両者の一戦。29日に行われる第3局も見据えての戦法選択が注目されましたが、渡辺二冠の先手で、五番勝負でも出現する可能性のある「角換わり」の戦型へと進みました。60手まで公式戦で前例があり、特に渡辺二冠は羽生九段との対局、同じ先手で経験済みの形そのままに進み、61手目に後手の豊島名人が手を変えてようやく別の将棋となりました。
中盤、豊島名人が自陣の中央寄りに配置していた玉を移動させ、金銀の強固な城に収めたのを期に猛攻を開始し、渡辺玉を自分の駒で包囲することに成功します。渡辺二冠も反撃を試みますが、これを見切った豊島二冠が勝負を制しました。
豊島名人は王位、棋聖を持ち現在三冠。四冠へのチャレンジまであと2勝です。
2局の結果により、勝者の羽生九段、豊島二冠が準決勝で対局することとなりました。これまでの両者の対戦成績は羽生九段16勝、豊島名人15勝と拮抗しています。