2019年7月5日より公開される映画『GOZEN -純恋の剣-』は、東映と東映ビデオによる「映画」と「舞台」の融合を狙った新プロジェクト「東映ムビ×ステ」のひとつとして製作された作品である。腕自慢の侍が己のプライドをかけて技を競い合う"御前試合"というシチュエーションを同じくしながらも、映画と舞台とで、それぞれに異なる人物を主役に置き、別種のドラマが展開するというこの企画。映画の中に舞台的なビジュアルを配置したり、映画で"脇"に控えていた人物が舞台で重要な役割を担ったりと、"世界"の違いを巧みに活かして予想外の広がりを持たせる意欲的な試みが多数行われている。
今回は、映画『GOZEN -純恋の剣-』で主演を務める犬飼貴丈に、初体験となる「時代劇」への思いや、剣を使った立ち回りの苦労話、そして『仮面ライダービルド』(2017年)以来の共演となる武田航平とのコンビネーションなど、興味深いお話をうかがった。犬飼貴丈ファン、そして『仮面ライダービルド』ファンの方たちには、ぜひじっくりと読み込んでいただきたいインタビューである。
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犬飼貴丈(いぬかい・あつひろ)。1994年生まれ。徳島県出身。2012年に第25回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリを獲得し、2014年に昼ドラ『碧の海~LONG SUMMER~』で俳優デビューを果たす。2017年『仮面ライダービルド』の仮面ライダービルド/桐生戦兎役でテレビドラマ初主演を務め、子どもから大人まで幅広い年齢層に人気となる。現在放送中のNHK連続テレビ小説『なつぞら』に山田陽平役でレギュラー出演しているほか、2019年7月スタートのドラマ「ランウェイ24」、2019年11月に公開予定のVシネクスト『ビルドNEW WORLD仮面ライダーグリス』にも出演することが明らかとなっている。撮影:大塚素久(SYASYA)
――今回は、犬飼さんが『GOZEN -純恋の剣-』の試写をご覧になったタイミングでお話をうかがっています。完成した映画を観た直後の率直なご感想から聞かせてください。
まずはホッとしましたね。撮影している間は、自分が出ていない場面など想像がつかない部分がありましたから、通しで映画を観ることができて、しみじみと「完成したんだなあ」と感じることができました。
――撮影は東映京都で行われたそうですが、時期はいつごろだったのでしょうか。
去年の12月半ばからですね。それから2週間、京都の撮影所で撮っていましたが、一度東京へ戻って別の仕事をしていましたので、ただでさえタイトなスケジュールがいっそうタイトだった印象です。
――最初に『GOZEN』出演の依頼があったときを振り返って、最初はどのように思われましたか。
えっ、また東映?って思いました(笑)。てっきり、また『仮面ライダービルド』をVシネマか何かでやるものだとばかり。でも、マネージャーさんからよく聞くと、今度はライダーではないんだと知りました。『ビルド』でお世話になった大森(敬仁/プロデューサー)さんが新しい企画を始めるにあたって、僕に声をかけてくださったのならぜひ、ということでお引き受けしました。
――犬飼さんにとって初の時代劇映画ということですが、台本を最初に読まれたときの印象を聞かせてもらえますか。
男たちが「御前試合」という場所で、互いの技を尽くして戦い合う……というストーリーは、僕の好きな漫画『シグルイ』(原作:南條範夫/作画:山口貴由)にも通じるところがあって、すぐにストーリーにノれましたね。さらには『ロミオとジュリエット』的な恋愛の要素も含まれて、興味深い内容だと思いました。
――「時代劇」というジャンルについては、どのように考えていましたか。
僕個人としては馴染みのないジャンルでした。どちらかというと、おじいちゃん、おばあちゃんが観るもの……というイメージがあったんです。でも今回の『GOZEN』は、今まで時代劇に触れる機会がほとんどなかった若い世代の人たちにも興味を持ってもらえるような作品になっていると思います。
――よく「京都の撮影所は昔かたぎのベテランスタッフさんばかりで、初めての俳優たちに厳しい」という話をウワサで耳にしますが、実際のところはいかがだったでしょうか。
最初の3日くらいは、確かにあまり話してくれない方もいらっしゃいましたね(笑)。でも、しばらくするとみんな打ち解けてしまって、そんな怖い雰囲気にはなりませんでした。僕は西日本の人間なので平気なのですが、関東出身の役者さんにはスタッフのみなさんが使われる京都弁が少しトゲっぽく聞こえるようで、たぶん「怖い」っていう話はそういう印象の違いから広まっていったんじゃないでしょうか。現場はとてもあたたかい雰囲気でした。
――スタッフさんの話し言葉が違うだけでも、東京撮影所とはずいぶん違う印象になっていそうですね。
そうですよ。関西弁の中でもかなりスルドい言葉が飛び交いますから、慣れていない人はドキッとするでしょうね……(笑)。
――犬飼さんにとっては初顔合わせとなる、石田秀範監督の印象はいかがでしたか?
石田監督の演出は、役者の素の感情を引っ張り出して、お芝居を根本から引っ張ってくれるようなスタイルで、とても情熱的なアプローチをされる方だと感じました。今の時代とは逆行している、"良い意味で古い"方だという印象です。平成仮面ライダーシリーズを多く手がけられた"巨匠"とうかがっていましたが『ビルド』ではご一緒することができませんでしたので、今回は嬉しかったですよ。これで「仮面ライダー」の監督さんとはほぼほぼ、お会いできたんじゃないかって(笑)。スケジュールが厳しかったのもあって、監督もあまり"粘る"ことができなかったんじゃないかと思いましたが、それでも絶対に妥協をしない姿勢で撮られていたのは、そばで見ていてよくわかりました。