鈴木雅之監督

――鈴木監督と言えばシンメトリー(=真上や真横など左右対称の構成)の画面作りが特徴ですが、何かきっかけはあったんですか。

『世にも奇妙な物語』(※1)というドラマがあって、それを監督の星(護)君と、落合(正幸)と小椋(久雄)さんと4人、プロデューサーの石原(隆)で立ち上げたんですけど、その時に他の3人の監督にすごく刺激を受けましたね。特に星君には驚かされることがいっぱいあったんですけど、それまでテレビドラマって、リアリティーや自然体が重要で、演出という存在をあまり見せないというのが多かったんだけど、星君はグイグイ来る感じでね(笑)。そこに触発されたんです。

自分の感覚的に気持ちいいっていうものがシンメトリーなんだけど、カメラマンは嫌がることが多い。画がフラットだから「パタッと倒れちゃいそうだ」って言うわけですよ。だけどそれが全然分かんなくて(笑)。それでカメラマンと対決していくうちに、意地になってどんどんシンメトリーになってきちゃったりね(笑)。1回それで撮ると、次の画もそういう風に撮らなきゃいけない感じになる。正面の画を撮ったら、次に横顔を撮るときも斜めからじゃなくて真横からってなるんですね。だからこれは生理的な問題もあると思うんだけど、それが自分にとって正しい気がするんだよね。もうね『白鳥』(93年放送、松雪泰子主演『白鳥麗子でございます!』)の頃からは完全にシンメトリーになってますね。

(※1)…鈴木監督は『世にも奇妙な物語』の前身で89年に放送された『奇妙な出来事』から参加

――監督は、2002年7月期の『ショムニFINAL』、10月期の『天才柳沢教授の生活』、翌年1月期『熱烈的中華飯店』と3クール連続で演出(※2)されたことがあり、いずれもオープニングが“地球”から始まるんです。これは狙っていたのですか?

いや、狙ってない(笑)。『中華飯店』は地球から入ってたっけ?

(※2)
『ショムニFINAL』…安田弘之氏の同名コミックを江角マキコ主演で実写化した、連ドラ第3シリーズ。江角のほか、宝生舞、京野ことみ、櫻井淳子、戸田恵子、高橋由美子らが演じるOLの掃き溜めと呼ばれている庶務二課(ショムニ)の面々が、満帆商事で巻き起こす痛快ドラマ。FODで配信中。

『天才柳沢教授の生活』…山下和美氏の人気漫画を松本幸四郎=現・松本白鸚主演で実写化した、規則正しい柳沢教授の日常を描いたコメディ。鈴木雅之監督らしい個性あふれる演出が満載で、その演出を踏襲したような西浦正記氏(『コード・ブルー』シリーズなど)が監督を務める回も見どころ。FODで配信中。

「熱烈的中華飯店」…豪華客船の中にある中華料理店が舞台のコメディで、手違いによって有名シェフたちが乗船しないまま出航してしまい、船内に残った見習いや皿洗い、乗客たちが偽物のシェフに扮して奮闘するという物語。主演の鈴木京香ほか、二宮和也、椎名桔平、伊東四朗らが出演。脚本は『コード・ブルー』などを手掛けた林宏司氏の初期作。

――『ショムニ』は冒頭のタイトルバックが地球からスタートして、『柳沢教授』はファーストカットが地球で、『中華飯店』は隕石が地球に近づいていくみたいなカットから始まるんですよ。

あーそうだった(笑)。『柳沢教授』は覚えてる。とにかく柳沢教授は時間にきちんとしてるっていう設定だったから、地球が回っているのと時計をからめたイメージだったんだよね。

――『熱烈的中華飯店』は監督の作品の中で、一番アグレッシブで、いい意味で荒っぽくてこれまでにない作品だなと思って見ていました。

荒っぽかったですか?(笑)。よくあんな企画が通ったなとは思います。『中華飯店』はね、確かに思い出深いですね。『柳沢教授』もありがとうございます(笑)

  • (C)フジテレビ

――その“オープニングが地球問題”なのですが、今年1月公開の映画『マスカレード・ホテル』のオープニングも地球ですよね。

あれは地球じゃなくて、日本です。ちょっと照れたのかな(笑)

――そうだったんですか? てっきり監督はこの作品のためにこれまでオープニングを地球にしていたんだと感慨深くなったんですが…。

よく見ていただき、ありがとうございます。ちょっと汗出てきちゃったよ(笑)

――あと、これまで地球を見下ろしてたんですが、今回の『ラジエーションハウス』のオープニングは、太陽を見上げるカットから始まりましたよね。“地球”と“太陽”、“見下ろす”と“見上げる”というのは、かけているんですか?

いや、かけてないかけてない(笑)

――でも4話くらいまで、何かを“見上げる”ところから始まってましたよね。

実は徹底的にそうしていこうかと思ったんだけど、連ドラってそうはいかないですよね。他の監督もいて、みんなにいろいろ撮りたい画があるから。5話で違った感じになったので、(鈴木監督が担当した)6話で「俺もいいや」ってなりました(笑)


●鈴木雅之
1958年生まれ、東京都出身。79年に日活芸術学院卒業後、共同テレビジョンを経て、94年にフジテレビジョン入社。『白鳥麗子でございます!』『29歳のクリスマス』『王様のレストラン』『世界で一番パパが好き』『ショムニ』『HERO』などのドラマや、『GTO』『HERO』『プリンセス・トヨトミ』『マスカレード・ホテル』などの映画を監督。編成局第一制作室長を務めた後、現在は第一制作室役員待遇エグゼクティブディレクター。