一人暮らしを始めたものの、なんだか不安を感じる、そんな状況に陥っていませんか? しかし、一人暮らしは寂しいものではなく、とても自由なもののはず! 不安なんかに負けていてはせっかくの一人暮らしがもったいないですね。

  • 一人暮らしで不安を感じることはありますか?(写真:マイナビニュース)

    一人暮らしで不安を感じることはありますか?

というわけで、孤独感や不安を解消する方法を、精神科医の高木さんにお聞きしました。

一人暮らしで感じる不安とは?

そもそも、人はなぜ孤独や不安を感じるのでしょうか。高木さんによると、日本人は特に孤独や不安を感じやすいそうです。元々日本人は、「他者と一緒でありたい」という集団帰属意識が強い民族。

"受け身"の女性はこの傾向がさらに強く、"みんなと一緒がいい、みんなと同じがいい"と多数派に流されてしまう。そして、ファッション、髪形、持ち物、すべて流行に左右されて、みんな同じようなスタイルになってしまうというのです。

たとえば「ゴミ捨て禁止!」という看板が立ててあっても、看板の足元にゴミが捨ててあれば、ついつい自分も捨ててしまったり、赤信号や横断歩道のないところで人が渡っているのを見て、自分も信号無視したり、道路を渡ってしまったりする。

火事などの緊急時に非常口から出るのに、すいている出口に行けばよいのに、みんな一斉に同じ出口から出ようとする……など、イケナイことだと知っていても、周りの人がやっているのを知ると「自分もやってもイイんじゃないか」と思うことがあると、高木さんは指摘します。

「みんなやってるし、まぁいっか」こういった心の動きのことを、社会心理学用語で『集団心理』というそうです。 こうした、集団帰属意識や集団心理により、大勢でいること、多数派、みんなと一緒であれば、人は安心する。 逆に、人と違うことをしていて、自分一人だけ、という環境や状況においては、不安を感じるというメカニズムがあるそうです。

一人暮らしで感じるホームシックとは

では、一人暮らしが陥りやすい、ホームシックとはいったいどのような「心の状態」をさすのでしょうか。

高木さんは、ホームシックになるだいたいのパターンが、初めて一人暮らしをしたとか、一人暮らしが初めてではないけれど、異動や転職などで久しぶりに一人暮らしをすることになった、単身赴任になった、海外留学やホームステイ、という場合がほとんどであるとし、"環境や状況が変わる"ということは、良いことでも悪いことでも少なからずストレスになると指摘。

進学や就職、転職に加え、単身生活という人生やライフスタイルのイベントが同時に重なり、ストレスや不安を感じたり、情動不安定になったりすることがあるといいます。ましてや言葉や文化などがまるで違う海外では、なおさら。

今まで、家事やお世話をしてくれる家族の元で過ごし、何かあればすぐに頼れる人が近くにいて、至れり尽くせりの、ある種「保護された生活」から一変して、すべて自分一人でやらないといけないので、単身生活に慣れないうちは今までとのギャップが大きく、誰しもが少なからず、不安や孤独感、寂しさを覚える時もあるでしょう。

でも逆にいうと、"実家に帰りたい"と思うということは、それだけ実家が居心地が良かった、という証拠。実家でつらい思いをしていたのであれば、"帰りたい"とも思わないとして、自分の家族や実家のことを考えるよい機会になる、と教えてくれました。

一人でもできる不安を和らげる方法

では、こういった不安を和らげるにはどうしたらよいのでしょうか。解消法を、高木さんに幾つか教えてもらいました。

好きなことや趣味を持つ

仕事やプライベートなど生活が充実していれば、あまり孤独で寂しいと感じることはないと思います。仕事以外に、自分が没頭できる趣味を持つことは大事です。

旅行などの大掛かりな趣味でなくても、音楽を聴く、TVや映画を観る、料理、ウォーキングやジョギング、トレーニングジム、読書や漫画を読むなど、一人で簡単にできて、お金もかからず、気分転換になることもたくさんあります。

  • ジムでのトレーニングも有効

    ジムでのトレーニングも有効

家族や友人に連絡をする

突拍子もない時間に連絡をしたり、連日、もしくは一日に何度も頻繁に連絡をしたりしてしまうのはよくありませんが、たまに近況報告的に連絡をするのであれば、お互いの安心にもつながります。

電話以外でも、最近はLINEなど便利な機能ができましたので、以前より手軽に、そしてそこまで時間を気にせず、手も煩わせることがなく、連絡が取れるようになりましたので、うまく活用してみてください。

出会いの場に行く

合コン、パーティー、趣味のサークルなど、人が集まるところに出かけてみる。

  • パーティなど人が集まる場所に行くことも有効

    パーティなど人が集まる場所に行くことも有効

交友関係の見直し

友達がただ多ければよい、というわけではありません。広く浅くではなく、何でも言い合える、心から信用でき頼れる友人を見つけましょう。

心地よい空間を整える

自分の家が居心地がよいと感じるのであれば、さほど寂しいという気持ちにはならないのではないかと思います。部屋の模様替えをする、自分の気に入ったインテリアを揃える、寝心地のよい寝具を整える、癒やされるアロマをたいてみる……など、居心地のよい空間を整えること。

難しいのであれば、部屋の掃除だけでも気分はスッキリすると思います。

孤独感や不安感を紛らわすために意識しておきたいこと

日頃からできる心がけの一つとして、「他人と自分を比較しない」という方法があるでしょう。"みんなと一緒がいい、みんなと同じがいい"という集団心理を持つがゆえに、集団から外れると孤独や不安を感じるのであれば、集団を構成する他人の存在を気にしないのが一番。

他人がどうであれ、自分は自分だ、と思うことは、自立の第一歩といえるでしょう。そのためには、テレビやネット等、他人の情報が入ってくるものを見すぎるのをやめるのも、一つの手かもしれません。

  • 他人を意識しないことも有効

    他人を意識しないことも有効

また、「考える時間を作らないようにする」というのも、コツの一つ。「失恋を忘れるために、仕事に没頭する」というケースがあるように、忙しいと考える時間がなくなり、そもそも孤独や不安を感じる暇がないという状況を作ることができます。

時間が解決することも多いので、一度忘れて寝かせておく、というのも大事かもしれません。

まとめ

高木さんがおっしゃっていたように、"環境や状況が変わる"ということは、良いことであれ悪いことであれ、少なからずストレスになることです。

ライフイベントが重なると、身体が疲れ、それに応じて心も疲れる、というのは、十分に想像できること。そんな時に、今まで保護してくれていた親元や祖国を離れて生活するなんて、武器も盾も持たず戦地に送り込まれているかのような心細さを感じる人もいるでしょう。

外にいる間は新生活に追われ、不安を感じにくい状況にあるでしょう。しかし、いざ一人きりの部屋に帰ってくると、不安が押し寄せてくる、という人もいるかもしれません。

高木さんのアドバイスにあったように、仕事の後に没頭できるような趣味を持ったり、信頼できる友人と会話を楽しんだりする時間を作ることで、孤独感は薄まるでしょう。

一方で、新生活に疲れや身体を癒やすには、誰とも話さず、一人でゆっくりする時間も大切です。この点で、アドバイスにもあったように、一人暮らしの部屋を心地よいものにすることは大事です。

趣味を楽しんだり、友人と会ったりしたとしても、眠りに帰ってくるのは家のベッド。夜中に孤独に悩まされて、眠りにくくなっても、家自体が快適であれば、その気持ちも和らぐかもしれませんよね。

また、一人暮らしでは防犯面も不安という方は、防犯グッズをそろえる等、セキュリティ面での過ごしやすさを追求することも重要でしょう。

そしてどこにいて、なにをしていようとも、「自分は自分」「一人の時間も楽しいもの」と思うことは、結婚して一人暮らしが終わったとしても、大切な考え方といえるかもしれません。

数年後には、一人暮らしがうらやましくなっているかも。貴重な時間を楽しめるようにしたいですね。

監修協力

髙木希奈(たかぎ・きな)
精神保健指定医、日本精神神経学会認定専門医/指導医、日本医師会認定産業医。
長野県出身。聖マリアンナ医科大学卒。精神科病院及び産業医として企業に勤務。美容医療の施術クーポンとコスメを扱う通販サイト「キレナビ」を運営するメディアド代表、一般社団法人 予防医療研究協会の理事等を務める。著書に「あなたの周りの身近な狂気」(セブン&アイ出版)、電子書籍「女医が教える飽きないエッチ」(App Store、Kindle)など。趣味は、海外旅行とスキューバダイビング。オフィシャルブログ