長らく日本では、マンションでも一戸建てでも、「新築がいい!」といわれてきましたが、最近では「中古でもきれいであれば抵抗がない」と答える若い人が増えてきました。また、中古住宅の不安感をとりのぞくための、さまざまな取り組みもはじまっています。今回は現在、注目を集めている「中古住宅」の制度や取り組みを紹介していきましょう。

中古住宅のメリットは割安感、立地重視、現況がわかること

一戸建て・マンションなど物件の種別を問わず、中古住宅を購入するメリットといえば、(1)新築より値ごろ感がある(2)学区内など立地重視で探しやすい(3)現在の状況がわかる点などがあります。

一方で、デメリットとして(1)建物の設備仕様が古い(2)諸費用やリノベーション費用がかかる(3)耐震・断熱性に不安がある、などがあげられます。特に費用面では、リフォーム費用がいくらかかるかわからない、住宅ローンが通りにくいといった点がネックになっていました。

ただ、この数年、特にマンションのリノベーション物件の増加、DIYブームなどもあり、特に若い世代で「中古住宅」への抵抗感、不安感は減っています。今年1月、全国宅地建物取引業協会連合会が発表した<「不動産の日」のアンケートによると、中古住宅について「まったく抵抗がない13.5%」「きれいであれば抵抗ない39.8%」があわせて53.3%になり、約半数は抵抗感が薄いという結果に(※1)。日本でも、中古住宅が十分、選択肢になっているのです。

(※1)全国宅地建物取引業協会連合会「不動産の日」アンケート

プロが購入してリノベ・補修。新築住宅並みの性能に

また、中古住宅のデメリットである、設備面での古さ、性能面や価格面での不安感を払拭するための取り組みもはじまっています。

ひとつは、不動産と建築のプロがいったん建物購入し、耐震性や断熱性を高めて現在の新築並み、もしくはそれ以上として、「リノベ済み物件」として販売する取り組みです。「買い取り再販」「再販住宅」などといい、中古マンションで多く見られてきましたが、最近では「中古一戸建て」でも見られるようになりました。

メリットとしては、(1)新築並みのきれいな内装(2)耐震性や断熱性などは現在の基準の水準に適合している(3)リフォーム済みで費用が明確(4)住宅ローンや税制面でも優遇を受けやすい、といった点にあります。

こうした「買い取り再販」は、現在、リビタやインテリックスといった中古マンションで実績のある企業が取り組みはじめています。特にリビタは、YKKAPと協同で中古戸建ての性能向上プロジェクトを実施。このプロジェクトでは、昭和56(1981)年に建築された建物を買い取り、耐震・断熱改修工事を実施。たとえば、

・窓などの開口部の耐力壁量を増やし、耐震等級3相当の強度に
・ペアガラス高性能樹脂窓への交換で断熱性を高める
・外壁・屋根を断熱改修

といった改修工事により、「長期優良住宅」の認定を受けて、現在、販売しています。

  • YKK APとリビタの協同プロジェクトでフルリフォーム済み

  • 全室ペアガラス・高性能樹脂窓へ交換。飛躍的に断熱性能が向上!

これから実証実験は続いていきますが、プロがきちんと手入れをし、適切な改修を行えば、中古一戸建てだからといって、「新築よりも性能が劣る」わけではないことが分かっています。また、プロによる修繕の履歴を残せるので、万一、売ろうと思ったときにも安心できることでしょう。こうした適切な修繕と情報は、「良い建物を住みついでいく」ため必須アイテムです。

価格も新築並み? 中古戸建ての良さが広がるか

一方で、ネックとなるのは、価格かもしれません。最近の中古住宅においては、中古の魅力である「値ごろ感」を期待していると「え、そんなに高いの…?」「新築並みじゃない!」と感じるかもしれません。先ほど紹介したリビタの中古戸建ては、販売価格は1億円超(税込み)。

土地が222平米あり、近年の新築一戸建てにはない広さを確保していますが、「中古でそこまで高いのであれば、少し土地が狭くても新築でいいのでは?」と思う人もいることでしょう。

価値観は人それぞれですから、一概に「コレが正しい」ということはできません。ただ、これから先、少子化で人口が減っていく日本では新築物件の供給数は減り、中古の住宅を手入れしつつ住みついでいく、というのが一般的になっていくことでしょう。今はその過渡期です。ひと口に「新築のほうがすぐれている」よりも、「きちんと手入れされた中古であれば、価格は維持される」という価値観へと変化していくことになりそうです。

  • 回遊舎

嘉屋恭子

フリーライター。編集プロダクションなどを経て、2007年よりフリーランスで活動。 主に住まいや暮らしに関わる分野で取材・執筆を続ける。FP技能士2級取得