あなたの周囲に、こんな困った人はいませんか? 意識的か、無意識かは分かりませんが、特定の人をターゲットにしてハラスメント(いじめや嫌がらせ)を繰り返す人。セクハラ、パワハラは今では一般的に知られていますが、それ以外にも細かく分類すると30種類上の様々なハラスメントが存在します。その中でも特に最近話題に上がることが多いモラハラ(モラルハラスメント)について解説します。
モラハラとは何か?
モラハラとは、モラル(道徳・倫理)による精神的な暴力、嫌がらせのことを指しますので、セクハラやパワハラを包括した概念といえます。パワハラについては、2019年度中に女性活躍推進法の一部改正の中に盛り込まれる予定ですので、これまで以上に企業側には対応が求められ、従業員の意識が高まり、一定の改善が進むものと思われます。
厚労省の統計を見ると、民事上の個別労働紛争(裁判になる手前の労使紛争)のテーマはこれまで「解雇」が圧倒的でしたが、平成24年度を境に「いじめ・嫌がらせ」つまり、ハラスメントが主体となってきました。
セクハラやパワハラなどハラスメントの意識の高まりを受けて、これまで耐えてきた被害者が声を上げるようになってきたのは良い傾向といえます。しかし、法制化にまで至っていないモラハラについては、まだまだあなたの職場で放置される可能性がありますので、被害に遭わないように自己防衛する意識が必要です。
パワハラは、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性(立場が上)を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、又は職場環境を悪化させる行為をいいます。つまり権力・権限を盾に理不尽な要求を押し付けてくる行為ですから、分かりやすいのですが、モラハラは上下関係に関わりなく行われる嫌がらせですので、周囲が気づきにくいという特徴があります。
モラハラとはどのような行為か
「無視をする」「組織内で仲間はずれにする」「陰口を言う」「誹謗中傷する」「馬鹿にしたような視線を送る、態度を取る」「冷笑する」「仕事に必要な情報を与えない」「過小な業務しか与えない」「やたらプライベートに介入してくる」など職位の高低に関わらずこのような行為はモラハラに当たります。
モラハラの事例1「お菓子外し」
例えば"お菓子外し"という言葉を聞いた子があるでしょうか。「お正月、久しぶりに広島に帰ってきましたー。モミジ饅頭を買ってきましたのでご賞味くださいー」と職場の仲間にお菓子を配るのは、長期休暇直後の一般的な職場風景ですが、職場内の一人にだけお菓子を配らなかったとしたら、貰えなかった人はどういうマインドになるでしょうか。
ささいなことのように思えますが、このような特定の人を常にのけ者にしているような"村八分"的な行為は、明らかに相手に嫌な気分にさせることを目的にしたものです。それもその行為を繰り返すことで相手に相当な精神的ダメージを負わせることになるだけでなく、職場全体の雰囲気も悪くしてしまうことになります。
モラハラの事例2「逆パワハラ」
筆者が最近相談を受けることが多くなったモラハラは、"逆パワハラ"です。新たに赴任してきたばかりであったり、転職してきたばかりの上司に対して、部下が「管理職のくせにこんなことも分からないのか」といった馬鹿にしたような態度をとるようなケースです。組織の内情や「本来なら組織のことをよく理解している自分が昇格して責任者になったはずなのに、別のところから上司が来た」ということが面白くないのでしょうか。子供じみた反抗をする部下が上司を悩ませています。
また、パワハラ教育が行き過ぎている企業では、叱られて当たり前の行為をしておきながら、「これってパワハラに当たるのではないでしょうか」と逆に上司を威嚇するような行為もよく耳にします。これが元で部下にしっかりと指導ができずに思い悩む真面目な新任管理職が増えています。
モラハラの被害者になりやすい人の特徴
モラハラに遭う被害者の一般的なイメージとして、生真面目で自己主張をしない人、口数が少ない大人しい人、自己肯定感の低い(自信のない)人が想定されますが、逆に"仕事が出来る人"も被害に遭うことがあります。転職してきたばかりの新参者が、古参の社員からいじめられるのはよくあるケースです。新規に採用された社員は、組織の責任者からの期待が高いので余計に既存社員からの妬みを買う恐れがあります。いきなり活躍したいという思いは理解できますが、周囲の既存社員のマインドに配慮する姿勢も必要です。