声優・駒形友梨の初となるワンマンライブ「Komagata Yuri 1st Live ~starting in the 〔CORE〕~」が2月10日、東京・新宿BLAZEにて開催された。昨年6月にシングル「トマレのススメ」でアーティストデビューを果たした彼女の初のワンマンライブは、持ち歌すべてを披露するこれまでの集大成的な、満足度の高いライブとなった。

  • 「Komagata Yuri 1st Live ~starting in the 〔CORE〕~」

■自身のルーツを辿るかのような、デビュー曲のアコースティックでの披露

オールスタンディングのフロアは、開演前にはファンでぎっしり。そんななかOPSEが流れブルーの光に会場中が照らされると、ステージ奥の幕が開いて駒形が登場。昨冬リリースされたミニアルバム『〔CORE〕』同様、「starting in the haze」からライブをスタートさせる。斜め上方からの逆光に照らされながら歌い始められたこの曲は、優しく穏やかに歌われていき、サビで前方から照らされた際にはしっとりと歌に入っている駒形の表情も見て取れた。

そのまま続けた「メイズ」も、ミニアルバム通りの曲順。澄んだみずみずしい歌声には力強さが加わり、それは高音部でも難しい旋律のBメロでも変わらない。その技術とまっすぐさを持ち合わせた彼女の歌声に、フロアを埋め尽くしたファンも体を揺らしながら聴き入っていた。

MCでは彼女の挨拶に声と手が挙がり、続けて拍手が起こるフロア。「始まってしまうと本当にあっという間ですね。夜の部も最後まで精一杯心をこめて歌います!」と宣言したところで、「Lonely Blueが終わる頃には」の歌唱へ。この曲はマイクスタンドを用いての歌唱となり、サビではときおり手を伸ばして振り返る昔の恋へと想いを馳せるような姿も見せたり表情も含めて音源以上に切なさが見えたりと、歌声のみずみずしさは保ちつつ生ならではの表現を見せる。

その後スタンドからマイクを外すと、切なげなギターの音色が印象的なナンバー「ソノヒ」へ。悲しげな歌声ではあるものの沈んで終わりなわけではなく、先を向きながら想いを燃やしているさまが、歌声にも見せ方にもうまく現出している。それを彼女の持ち味である涼やかなボーカルが暑苦しく感じさせないのも、マッチングの妙だ。

曲明け、今度はチケットのソールドアウトに感謝。「最初は、チケットが売れなかったら椅子とか出そう、みたいな話もしていました」と杞憂を笑い話にしつつも、オールスタンディングで開催できる喜びを語っていた。「ラジオの影響か、ちょっとずつ女性も増えていて。年齢・性別を超えて応援していただけてうれしいです」とも語っていた。

そしてここで、ピアノとパーカッションが登場。学生時代フォークソング部に所属していた彼女は、アコースティックで歌うことも好き。ということで、ふたりのミュージシャンをバックにしたアコースティックコーナーへ。

1曲目に歌われたのは、デビュー曲「トマレのススメ」。普段は疾走感を伴って歌われるこの曲が優しく歌われるのは、非常に新鮮だった。しかしこの曲へ向けた感情は変わらず、希望に満ちた表情でにこやかに歌っていく駒形。むしろテンポを落としてこの編成での披露だからこそ、よりじっくりと想いを増幅して届けられたのではないだろうか。そう思わせるほど、大サビではそのポジティブな感情が歌声だけでなく表情にも思いっきり表れていた。

さらに、同じくデビューシングルに収録された「はじめからきっと」もアコースティックで披露。爽やかさはそのままに、アコースティックならではの穏やかさと丸みのある歌声で初々しい感情を見せる駒形。Dメロの歌声オンリーになる「大好きだったのに...」の部分など、要所要所をよりキュンとくるバージョンとして聴かせてくれる。また、冒頭含め間奏の、この曲ならではのリズムのクラップを再現するフロアにうれしそうな表情を見せ、曲明けにも「いやー……たのしー!」と満面の笑みを見せたのだった。

■本編を締めくくったのは、初めて歌詞を手がけた大事な曲

アコースティックコーナーが終わると、ステージ上に据えられていた“〔〕”のオブジェについて言及。実はこれはアルバムジャケット撮影の際に使用された“実物”。横に立ってのポージングでジャケットをステージ上で再現する姿に、またも歓声が上がっていた。

ここからライブも後半戦。「次は私の持ち曲の中でも明るく楽しい曲。ここからは皆さんと一緒にほんわかと楽しめたら」と呼びかけ、「It's HEAVEN」から後半戦スタート。イントロのコール部分で早くも大きな声の上がったフロアに向けて「ありがとー!」と礼を告げたら、ファンクの要素の含まれた’90年代J-POP調のラブソングを、クラップに支えられながら左右にステップを取りながら歌唱。

身体を揺らしながらなのにもかかわらず歌声のブレがほとんどない盤石のステージングをみせる。それに続くのは、鈴の音から始まるクリスマスソング「Talk 2 Night」。ハッピーなシャッフルに、イントロから左右にステップを取りながらうれしそうな表情の駒形。表情だけではなく、歌声にもきらめきをうまく散りばめてこの日いちばんのハッピーな空間を作り上げていき、終始幸せいっぱいの歌声と表情で楽曲を表現した。

そしてアルバムリード曲「クロックワイズ」では、再び歌声は暖かさよりもみずみずしさ・爽やかさが強めのものに。吹っ切れた女性を描いた失恋ソングなので、その表現が非常によくハマる。1サビのリフレインにフェイクが混じった大サビの、生ならではのグルーヴ感も非常に魅力的なもので、さらなる彼女の歌声の成長に期待が高まる1曲となっていた。

曲明け、次がラストであることを告げると「まだ持ち曲が10曲しかないんですけど、これから皆さんにたくさんの曲をお届けできるように頑張っていきます」と一礼し、初めて作詞を手がけた楽曲へ。「普段大切に思っていることや忘れたくないことを詰め込みました」と紹介されたその曲は、「時の葉」。

再びスポットライトを受けて、しっとりと穏やかに歌い出す駒形。言葉として紡いだ、自らの胸に抱えていた想いを大事にしつつ、前へ進む決意を伸びのある歌声に乗せて発信していく。それは伝える対象を目の前にすることで、より実感を伴って届けられるものになったのではないだろうか。なかでも2コーラス目の“ありがとう”の深さ・優しさは、とりわけ聴き手の胸にジンとくるものだったことを、ここに特記しておきたい。