渡辺明棋王に広瀬章人竜王が挑戦する第44期棋王戦五番勝負第4局が3月10日、新潟市「新潟グランドホテル」で行われ、広瀬竜王が勝ってシリーズ成績を1勝2敗としました。

自身初の二冠達成に望みつなぐ

  • 渡辺(左)―広瀬のビッグカードは追い詰められた挑戦者広瀬が1勝を返した

負ければ挑戦失敗となる一番で粘り腰を見せた広瀬竜王は、タイトル初挑戦となった2010年度の第51期王位戦七番勝負で、深浦康市王位(当時)に対し第4局まで2勝2敗と互角に渡り合って迎えた第5局、苦しい局面を千日手(=引き分け)に持ち込み、指し直し局を制勝。タイトル獲得まであと1勝として迎えた第6局も前局に続き千日手となって、指し直し局に勝ち4勝2敗で初タイトルを獲得しています。また、記憶に新しい今年度の第31期竜王戦七番勝負では、タイトル通算100期を目指す羽生善治竜王に2勝3敗とカド番に追い込まれましたが、第6局、第7局に連勝して2回目のタイトル獲得を果たしました。広瀬竜王のタイトル奪取について回るのは「粘り腰」。第4局をどう戦うのか、第5局につなげられるかに注目です。

広瀬の初タイトル「王位」獲得を報じた『週刊将棋』2010年9月8日号

敗れた渡辺棋王は今期36勝10敗[0.783](※3月11日現在)と全棋士中2位の好調。2月24、25日には久保利明王将(当時)との第68期王将戦第4局に勝ってシリーズ成績を4-0とし王将位ストレート奪取を果たし、棋王戦のほうもストレート防衛か? と期待されましたが、ここは一旦おあずけとなりました。

永世称号「永世棋王」の取得は、有資格者になる条件に「通算○期」(例えば竜王戦の通算7期など)がなく、「連続5期」でないと認められないため大変難しいと言われています。渡辺棋王は4期連続獲得ののち、若手の千田翔太六段を挑戦者に迎えた前々期第42期、スコアを1勝2敗とされて取得に暗雲が立ち込めましたが、第4局、第5局を連勝、晴れて永世棋王となりました。棋界で永世棋王の称号を持っているのは渡辺棋王と羽生九段の2人のみ。相性の良いこの棋戦で連続獲得記録を「7」まで伸ばすことができるでしょうか。

第4局は3月17日、宇都宮市「宇都宮グランドホテル」で行われます。