現在、日本では2020年開催の東京オリンピックを前にインバウンド需要が増え続けている。中でも人気なのが、旅館をはじめとする日本テイストの宿泊施設だ。そんな折、「泊まれる茶室」をイメージしたカプセルホテルが東京・日本橋人形町に誕生した。「hotel zen tokyo(ホテル・ゼン・トーキョー)」と名付けられた同施設は、4月上旬のオープンを予定している。
「泊まれる茶室」とは?
「禅×ミニマリズム」をコンセプトに、日本的な茶室と日本発のカプセルホテルを組み合わせた同施設。プロデュースするのは、SENの代表取締役を務める各務太郎氏。アメリカでミニマリズム建築の研究を行った同氏は、茶人・千利休が作ったといわれる国宝の茶室「妙喜庵 待庵」をイメージして今回のホテルを計画したという。
そしてこのほど、ホテル・ゼン・トーキョーのお披露目を兼ねたオープニングイベントが開催され、その全貌が公開された。イベントの場では、著名なファッションデザイナーが手がけたルームウェアが披露され、ホテルの世界観を表現したパフォーマンスが行われる場面も。
客室は、「通常ルーム」とフロアの突き当りにある広めの「コーナールーム」の2種類に大きく分けられる。通常ルームは、シングルタイプとセミダブルタイプ、これに畳を敷いたものを加え、全部で5タイプを用意。
部屋の入口は、茶室の「にじり口」をイメージしている。これは、武士も商人も必ず頭を下げて入るという茶室のエッセンスをリスペクトしたものだそう。本物のにじり口はこれよりさらに低いが、外国人の身長などを考え現在の高さに設定したという。
その入口をくぐると、中には天井高2.2mの和モダンな空間が広がる。部屋の並びは、カプセルホテルによくある上下2段タイプではなく1段のみ。これは茶室のコンセプトを重視しただけでなく、騒音問題や宿泊客同士のトラブルなどにも配慮したためだという。
フロアは男女別で、各フロアに入るには暗証番号が必要となるためセキュリティの面でも安心だ。Wi-Fiも完備。宿泊費は6,000円をベースに検討中とのこと。
館内で羽織るオリジナルのルームウェアにも、日本的なイメージを強く打ち出したデザインを採用。第25回毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞などを受賞した気鋭のファッションデザイナー・廣川玉枝氏がデザインを手がけている。
ホテルの宿泊客以外でも利用できるバー・ラウンジ「TAIAN」も同時にオープン予定。Restaurant TOYO 東京ミッドタウン日比谷店の総支配人兼シェフソムリエを務める成澤亨太氏がメニューを監修しており、日本産のワインやリキュールなどが提供される。
バー・ラウンジの正面には茶室を模した鉄のオブジェが。前述の妙喜庵 待庵と同じサイズで設計されているという。イベント当日は、この鉄の茶室にて高津研志住職がお茶のお点前を披露するパフォーマンスが公開された。
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高津研志住職。ドイツ人と日本人の間に生まれる。日本で僧侶としての修行を終えたのちに、ドイツ・ベルリンでDJとして活躍。2016年に日本へ帰国。現在は寺子屋活動などを行いながら、謡と現代音楽、伝統の融合を目指すユニット「能天気」の活動で話題を呼んでいる
同氏はホテル・ゼン・トーキョーのコンセプトについて「禅はメディアを通して世界でよく知られており、このホテルに訪れるお客様も知識を持っている。そういうお客様を相手にどのようなサービスを提供できるのかが課題」と語り、禅の心の普及へ期待を寄せた。
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SEN代表取締役・各務太郎氏。早稲田大学理工学部建築学科卒業後、大手広告代理店にてコピーライターとして数々のCM企画を担当。東京五輪開催の決定を機に、建築家として活動するため退社し、その後ハーバード大学デザイン学院都市デザイン学修士を修了。2018年にSENを設立
ホテル・ゼン・トーキョーの今後の展開について代表の各務氏は、「外国人が観光で訪れる都市が定番の東京・大阪・京都などの大都市だけでなく、札幌・広島・金沢など地方都市に移行しつつある傾向を踏まえて、地方都市にもサービスを展開していく」としている。
また、海外への展開も視野に入れており、東京と同じくホテル価格が上昇している香港、シンガポール、ロンドン、サンフランシスコ、ニューヨークなどにも同様のサービスを展開していくことを検討しているとのこと。最終的には10年で50店舗を目標としているという。