俳優の東山紀之がこのほど、主演を務めるフジテレビ開局60周年ドラマ『砂の器』(3月28日19:57~22:54)のクランクインを迎えた。自身が演じる主人公のベテラン刑事・今西栄太郎の自宅アパートでのシーンから撮影開始。その最初の場面での写真が27日、公開された。
松本清張による不朽の名作で、1974年の映画化以降、何度も映像化されてきた同作が、現代を舞台に新しい解釈でドラマ化。東山演じる鋭い観察眼を持つベテラン刑事・今西栄太郎と、中島健人演じる父との“宿命”を背負う天才作曲家・和賀英良の攻防、そして和賀が幼い頃生き別れた柄本明演じる父・本浦千代吉との複雑でせつない“絆”が描かれる。
東山が演じる今西は、警視庁捜査一課のベテラン刑事で、出世コースから外れているが、周りからの評判は気にしていない。普段は穏やかで口数も少ないが、犯人を追い詰めるときは鋭い眼光でその執念をむき出しにする。ハロウィーンの渋谷で撲殺体が発見された事件は、早々に目撃情報をつかむも捜査は難航。今西は後輩刑事とバディを組み、地道な捜査にとりかかる。
そんな今西は、DV・ギャンブル狂いの父とアルコール中毒の母を持ち、不遇な環境で育った。自分は温かい家族を作ろうと思い描き、結婚もしたが、多忙であることから妻に不倫され、その後自殺によって妻を失い、現在はさみしく一人暮らしをしている。中島演じる和賀とは、捜査を通じて対峙。和賀の境遇に思いを馳せ、時に自分の過去を重ね、感情移入していく。
クランクインの現場は、今西が一人暮らしをするさびれたアパート。スーツ姿で、真っ暗な家に帰宅し、ほとんど空っぽの冷蔵庫を開け、ひとり缶ビールを飲みため息をつくという、今西の人となりをうかがえるシーンからスタートした。部屋の中は、着古したワイシャツが壁に掛けられ、テーブルには無造作におかれたつまみの箱や新聞など、色気のない、むしろ寂しささえ感じさせる空間だ。演技の合間、監督からカットがかかっても表情ひとつ変えず、役に集中し続ける東山の姿が見られた。
東山は、今西の自宅アパートについて「雰囲気のあるロケ地で、方向性が見えた気がしましたね。このマンションの外観を見て、今西という役の人となりが何となく自分の中で整った感じがしました」とコメント。「というのも、実際に僕が育った市営住宅にとてもよく似ている。非常によく似た環境だなと思って、共感する部分が蘇ってきました。そんな空気感を知れて、自分の中のイメージと合致する部分が多くなりました」と、自身の育った環境と重ねながら役に入り込んだようだ。
また、「清張先生の作品は何本か出演させていただいています。そんな中でも『砂の器』は名作中の名作ですし、丹波哲郎さん(映画での今西役)とは、役のアプローチ、表現方法は変わってくると思いますが、清張先生の描いてきた“人間の内面”をえぐるような作品ですので、皆さんの期待に応えられるようにしていきたいなと思います」と改めて本作への思いを告白。「清張先生の描きたかった“人間のゆがみ”みたいなものは、現代もほとんど変わっていないのだなと思いました。それを今回は、僕と中島健人とで描いていけたら良いなと思いますね」と熱い意気込みを語った。