本年2019年10月、消費税率が8%から10%に引き上げられる予定ですが、それにともなう駆け込み購入の緩和を目的とした住宅購入&リフォームの支援制度が出揃いました。その内容はどのようなものなのでしょうか。今、まさに家を買おうと思っている人、リフォームしようと考えている人はぜひ参考にしてください。

消費税率引き上げ緩和策は全部で4つ。住宅ローン控除も13年間に延長

住宅を購入するにしても、リフォームするにしても、その金額は大きいだけに、消費税率が引き上げられると決まると、「今のうちに購入しないとソン!」とばかりに駆け込み需要が発生してしまうもの。今回、消費税率引き上げに際し、こうした駆け込み需要、さらにその後の住宅市場の冷え込みを抑えるべく、国によるさまざまな対策が練られています。

その内容は大きく4つ。順番に解説していきましょう。

(1)住宅ローン控除の控除期間を3年延長
(2)すまい給付金の拡充
(3)次世代住宅ポイント制度
(4)贈与税の非課税枠の拡充

(1)と(2)は、増税分の緩和策になります。まず、住宅ローン控除です。現在でも住宅ローン控除は住宅購入時の心強い味方ですが、今回の対策として、この控除期間が10年間から3年間延長され、合計で13年間適用されます(対象となるのは2019年10月1日~2020年12月31日に入居した人)。

年末の住宅ローン残高の1%が、所得税や住民税から控除され、最大で400万円(省エネ住宅なら500万円)まで控除されます(適用をうけるには入居した翌年に確定申告が必要)。

今回の拡充では、10年目までは現在の制度と同じですが、11年目以降は、(A)年末ローン残高の1%か、(B)建物購入価格4000万円まで(省エネ住宅なら5000万円まで)の2%÷3のうち、いずれか低いほうが控除されます。少なくとも増税した2%分の負担を減税しようというのがその狙いです。

すまい給付金も拡充。最大50万円が給付されるように

また消費税率が5%から8%に引き上げられたときに誕生した「すまい給付金」は、今回の制度でさらに拡充します。

給付金を受け取れる対象者について、年収の目安が775万円以下(実際には、住民税の所得割額が17.26万円以下)にまで拡充されるほか、最大給付額も50万円にまで引き上げられます。つまり、今まで対象とならなかった人も利用できる可能性がでてきました。

  • 【現在のすまい給付金制度】

  • 【消費税率10%に引き上げ後のすまい給付金の内容】

※収入額の目安は、扶養対象となる家族が1人(専業主婦、16歳以下の子ども)の場合のモデルで試算

住宅ローン控除は借り入れ金額が大きいほどその恩恵が大きくなりますが(つまり所得税や住民税を多額に納税している中~高所得者層)、すまい給付金では、その効果が小さい人たちに対しての対策といえます。しかも今回は収入額目安が750万円台までに広がったので、今まで対象外になってしまった人でも利用できる可能性が高くなったのがポイントです。

最大の注目は次世代住宅ポイント制度。リフォームも対象に!

今回、注目したいのが、「次世代住宅ポイント制度」です。

たとえば、環境に配慮した仕様の住宅であれば、購入や新築の場合で最大35万円相当、リフォームの場合で最大30万円相当のポイント(※)がもらえるというもの。条件はかなり細かく設定されているので、自分が適用されるかどうか販売・施工会社に確認する必要がありますが、上手に活用すれば、「ポイントを使って照明やエアコンを揃える」ということも可能です。

ちなみに、筆者はかつてあった「住宅エコポイント制度(30万ポイント相当)」でお掃除ロボットや室内の照明器具、外構用建材を購入しました。転居後は家電製品などが新たに必要になることも多いので、その際にポイントを活用するのはおすすめです。

最後に贈与税の非課税枠の拡充についてですが、これは親や祖父母から「贈与」が受けられる人が利用したい制度です。2018年4月から1年間であれば非課税枠が拡大されますので、親子、祖父母でよく話し合うとよいでしょう。

(1)住宅ローン控除の延長(2)すまい給付金の拡充はいわば増税に伴う「還付の施策」いってみれば「痛み止め」の処置です。それに加えて、(3)「次世代住宅ポイント制度」や(4)「贈与税の非課税枠の拡充」と揃えたことで、「増税後の制度をフル活用したほうがトクかも…」という環境をつくっています。まずは、自分はどの制度が利用できるのか確認し、あわてずに賢く判断するとよいでしょう。

  • 回遊舎

嘉屋恭子

フリーライター。編集プロダクションなどを経て、2007年よりフリーランスで活動。 主に住まいや暮らしに関わる分野で取材・執筆を続ける。FP技能士2級取得