一日ごとに気温差の激しい季節の変わり目は体調を崩す人が多いもの。小さな子どもやお年寄りがご家庭にいれば、なおさらでしょう。また、幼稚園・保育園に通いはじめると感染性の病気にかかってしまい、子どもはもちろん、親や祖父母にも伝染ってしまい全員でダウン……なんて悲劇も見聞きします。

こうした事態を防ぐには、実は住まいや幼稚園・保育園などの施設の室内温度が大事なんです。今回は家の暖かさと子どもの健康について解説していきましょう。

健康に影響大! 家と幼稚園・保育園の温度

「健康に気を使っていますか?」と聞かれれば、「YES」と答える人は多いのではないでしょうか。ただ、その内容といえば、食事やサプリメント、運動、睡眠、入浴などと答える人が多いことでしょう。もちろん、健康には食事や睡眠も大切ですが、実は室温、もっといえば「家の暖かさ」が強く影響することが、近年の住まいと健康科学の研究でわかってきました。

たとえば、子どもが長い時間を過ごす家、さらに幼稚園と保育園の環境を対象にした研究では、住まいと幼稚園・保育園のいずれも暖かい場所で暮らした子どもたちと、両方ともに寒い場所で過ごした子どもを比較した場合、どちらも寒い場所で過ごしている子どもはインフルエンザや風邪を引き起こしやすく欠席率が高いということがわかっています(※1)。

子どもの病気はときに重症化することもあり、親の心配はつきません。また看病する親・祖父母の看病疲れによる疲労も積み重なっていきます。保育園であれば、親は看病のために仕事を休む必要があるほか、休めない場合は病児保育に預ける必要もあり、親・子どもともに精神的・肉体的負担も大きいことでしょう。こうした病欠が「室温」で防げることは、今まであまり知られてきませんでした。

また、子どもの運動についても、興味深い研究があります。近年、子どもの運動量が活発・消極の二極化していることが指摘されていますが(※2)、子どもが自然と動きたくなる環境があるというのです。

それは、先程の温度と床に無垢材をしようしているかによって変化するようです。下表の比較を見ると、無垢材の二重床(無垢材は合板等ではなく、丸太から切り出した天然木材。室内の湿度を調整する働きもある。無垢材の床はヒヤッとせずに暖かみがある)の幼稚園児と、コンクリート+板張り(ヒヤッと冷たい)の幼稚園児を比較した場合、子どもの歩数や活動強度では、無垢材二重床のほうのほうが活発に動く研究結果が出ています。木の感触は、素足にも心地よいため、楽しくなって自然と走り回りたくなる、ということが理由と推測されています。

確かに木のやわらかさ、ぬくもりは大人でも心地よいもの。子どもであればなおのこと、自然と身体が動くのかもしれません。

住まいと園舎の「暖かさ」を意識してチェック

ただ、残念なことに日本の家の75%(※3)は断熱性能に劣る住まいといわれています(無断熱もしくは1980年の省エネルギー基準に達していない、断熱性に乏しい住宅)。「断熱性能が高い家」とは、壁・床・天井などに断熱材を使用したり、高断熱窓を取り入れたりすることで、高い断熱性・気密性を兼ね備えた家のことです。断熱性が高いと、家の外の熱を伝わりにくくするので夏涼しく、冬は暖かい環境が実現するのです。

この断熱性能に劣る住まいが75%を占めているということは、「寒い」のが当たり前なので「暖かい良さ」に気が付きにくいといわれているのです。

では、暖かい家を探すにはどうしたらよいのでしょうか。ポイントは窓にあります。住まいの熱は開口部、つまり窓から逃げていくため、窓の性能が室内の暖かさにつながるのです。窓はサッシとガラスからできていますが、アルミと樹脂を組み合わせたサッシを使用している「ハイブリッド窓」がとくに断熱性にすぐれています。また、ガラスも1枚ガラスではなく、複層ガラス、さらにガスが充填されているタイプだと熱が逃げにくくなります。

現在の家が寒いなと思ったら、今の窓に内窓をもう一枚加えるリフォーム(5万円台~)、現在あるサッシを新しいサッシで覆う窓のリフォーム(10万円前後~)を検討してみてもいいでしょう。また、100万円の断熱リフォーム工事は、11年で回収できるという試算もあり、「コスパのいい工事」ともいえます(※4)。

また、これから住まいを購入する人であれば、国の定める省エネルギー対策等級を指標とするのも賢い選択です。最低でも、次世代省エネルギー基準を満たし、フラット35S(可能であればA)が適用される住まいであれば、すぐれた断熱性・気密性といえるでしょう。

これからの季節、「保活」などで保育園や幼稚園を見学してまわる人も多いと思います。残念なことに公立の学校をはじめ、幼稚園や保育園の建物の断熱性は乏しいところがほとんど。そのなかでも、「暖かい園舎」や「無垢材」を採用している保育園や幼稚園もあります。それは、環境が子どもの健康に良い影響があることを知り、意欲的に取り組んでいる保育園・幼稚園といえるでしょう。見学の際はひとつの指標として、参考にしてみてはいかがでしょうか。

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嘉屋恭子

フリーライター。編集プロダクションなどを経て、2007年よりフリーランスで活動。 主に住まいや暮らしに関わる分野で取材・執筆を続ける。FP技能士2級取得