今、ビジネスマンの新ソウルフードとなりつつあるのが"ステーキ"。少し前では考えられなかったが、専門店の増加により「今日のランチは、サクッとステーキを食べよう」なんて人も多いはず。しかも、2018年12月に環太平洋パートナーシップ協定(TPP)も発効され、輸入牛がこれまで以上に安価で買えるようになった。今まで半年や月に1度の贅沢に自宅でステーキを食べていた人も、これからは週一ペースで食べることだって可能になるだろう。
しかし、そうなってくると問題なのが"味"。「肉なんて、ただ焼けばいいだけでしょ?」と考えている人もいるかもしれないが、それは大きな間違い。料理素人サラリーマンがコスパ重視の輸入牛を、ただフライパンで焼いても、お店で食べるステーキの味には決してならない。では、どうしたら自宅でおいしいステーキを食べられるのか? お家焼肉&ステーキのプロこと「エバラ食品」さんに、その方法を教えてもらってきた。
ちなみに前回の記事では、家焼肉がおいしくなる方法も教えてもらったので、そちらもご活用を!
安いステーキ肉が、なぜおいしくなるのか?
お財布に優しい赤身の輸入ステーキ肉だが、自宅で焼いてみると、以下のような点が気になるのではないだろうか。
【安い輸入ステーキ肉のデメリット】
・噛みきれないほど"硬い"……
・肉特有の"臭み"が気になる……
・肉の"味"がイマイチ……
これを改善する方法を、エバラ食品のマーケティング部・石井敦史さんに聞いてみると、"漬け込みテクニック"と"焼き方のコツ"を押さえるだけで、以下のように美味なステーキになるという。
【エバラ流の漬け込みステーキのメリット】
・肉の組織にたれが染み込み"ジューシーになる"
・香味野菜や香辛料などのたれの素材が肉の"臭みを消す"
・たれの成分が肉本来の"旨味を引き出す"
しかも、用意するのは「ステーキ肉」と「焼肉のたれ」だけ。あとはどの家庭にもあるものばかりで調理ができるので簡単だ。ではでは、気になる焼き方を見ていこう。
「漬け込みステーキ」の作り方
1.たれを肉に揉みこむ
袋に肉を入れ、肉の重量に対して20~25%のたれを投入。手で軽く押さえながら肉を揉む。そして、冷蔵庫に入れて30分~1時間ほど寝かせる。
2.肉を常温に戻す
冷蔵庫から肉を取り出し、30分~1時間かけて常温に戻す。冷えた状態のままフライパンで熱すると、急激な温度変化で味が損なわれてしまうそう。
3.焼く前に余分なたれをふき、胡椒をふる
たれが余分に付いた状態で焼くと焦げる原因になってしまう。焼く前にキッチンペーパーなどで表面のたれをふき取ろう。
4.フライパンをしっかり熱する
フライパンを中火にかけ、薄く煙が出始める温度(200度)まで熱する。このとき、まだ牛脂は使わない。ここで牛脂を使うと、油だけが高温になって肉を焼いたときにムラができてしまう(※加熱時間はフライパンの材質によって異なるので注意。オススメは熱の持続時間が長いステンレス製とのこと)。
5.火を止めて牛脂をなじませる
一度、火を止めて牛脂をフライパン全体になじませる。これによってフライパンに油の膜ができあがり、肉のこびりつきを防ぐほか、均一な温度で肉を焼くことができる。
6.胡椒をふった面を下にし、「強火で20秒、弱火で1分」焼く
ステーキを焼くうえで最も重要と言えるのが、この焼き時間。最初に強火で20秒焼くことで表面をコーティングして肉汁を閉じ込め、さらに弱火で1分間焼いて火を通す。
7.もう片面にも胡椒をふって裏返し、「強火で20秒、弱火で1分」焼く
胡椒をふって裏返したら、先ほどと同様に「強火で20秒、弱火で1分」焼く。
8.火を止め、アルミホイルを被せて余熱焼きする
火を止めたら、肉全体が隠れるようにフライパンの上からアルミホイルを被せる。2分間、余熱を使って肉の内部に火を通したら完成。
※アルミ製のフライパンの場合、余熱が弱い場合があるので、アルミホイルで肉を包み込む、アルミホイルを二重にする、などの対応が必要な場合もあり
【焼き加減のチェック方法】
「レア」や「ミディアム」などの肉の焼き加減は、お店ではスタッフに伝えればいいが、自宅では自分で調整するしかない。なかなか難しく思えるが、実は片手の指で輪を作ったときの「親指の付け根の固さ」でチェックできるそう。人差し指と親指がレア、中指と親指がミディアム・レア、薬指と親指がミディアム、小指と親指がウエルダンとのことだ。
「漬け込みステーキ」を食べてみた
今回は肉幅1.5㎝程度のオーストラリア産ステーキ肉を使用。100g当たり350円前後とリーズナブルなものだ。これを上記のように「漬け込みステーキ」で焼いたもの、焼き方は同じだが漬け込んでいない「素焼きステーキ」の2パターンを食べ比べてみた。
まず「素焼きステーキ」の方は、肉本来の旨味がダイレクトに味わえるのが魅力。漬け込んでないから硬いのでは? と思うかもしれないが、やはり焼き方にこだわっているので、いつも通りに家でただ焼いたステーキとの差は歴然。ほど良くやわらかく、肉汁が詰まっている。好みのステーキソースをつけて味わうのがオススメだ。
続いて「漬け込みステーキ」を食べてみると、ひと口頬張るだけでわかるのが"やわらかさ"。まるで高級な和牛のようにやわらかく、しかもジューシー。たれと肉汁の旨味がギュッと肉の中に凝縮しており、噛みしめるたびに旨味が溢れてくる。これは旨い!
焼き方のコツだけしっかりマスターして、「漬け込み」にするか「素焼き」にするかは気分に合わせて選んでみるといいだろう。
とはいえ、"ステーキ肉をたれに漬け込む"というのはなかなか斬新。同社の石井さんいわく、これはエバラが創業当時からすすめる伝統の技とのことだ。
「創業当時の60年前、一般的な食卓に並ぶお肉は今のようないい質ではありませんでした。そのため、焼く前に肉をたれに漬け込むことで旨味を閉じ込めたり、臭みを抑えたりといった効果のある『焼肉のたれ』が弊社で開発されたのです。肉の質が向上した現在では『たれは焼いた後につけるのが当たり前』と思われている方も多いかと思いますが、これから増加する輸入肉には、この"漬け込み"のテクニックはとても適していると思います」
専門店の人気、肉の価格低下、連休などのハレの日の増加……これからもステーキ需要はどんどん高まっていく。充実した肉ライフが送りたいビジネスマンの皆さんは、ぜひこのテクニックをマスターして美味なステーキを味わってほしい。