モノが多くても少なくても、家が狭くても広くても、大切なのは「ホッとする」時間と空間があること。その感覚をヒュッゲ(HYGGE)と呼ぶ幸福大国“デンマーク”をはじめとする北欧諸国の部屋づくりから、幸せを取り入れる秘訣を紹介します。

心地よい居場所づくり

デンマークの人が初任給で買うモノは何だと思いますか? 両親へのプレゼントでしょうか? それともバッグ、時計、服など自分へのご褒美でしょうか? 実はデンマークでは椅子を買うのだとか。デザイナーものやメーカー家具の中から、長く使い続けたい一生ものを選ぶのだそうです。

そもそも椅子というのは自分の身体と密接に関わる存在です。食事をしたりくつろいだり、部屋での過ごし方に深く関わります。そのため、どんな椅子を選ぶのかということは、自分の居場所を心地よくするための第一歩となるのです。

灯りとほっこり過ごす

北欧では、ほぼ毎日のようにキャンドルを灯す家庭が多いそうです。ダイニングテーブルだけではなく、窓辺にもキャンドル。寒い冬を温かく過ごせるように厚い壁に覆われていて、窓枠にも奥行きがあるので、キャンドルなどを飾れるスペースがあるのです。夏にはそこに植物やガラス瓶を並べて、道行く人の目を楽しませてくれたりします。窓辺からの自然光やキャンドルの灯りを組み合わせて、空間を豊かに演出する北欧の暮らしでは、照明にもこだわりがあります。

天井照明で部屋全体を明るく照らすのではなく、テーブルの上には吊り下げ式のペンダント照明、リビングにはフロアランプ、ベッド脇には読書灯といったふうに、部分照明による明暗で部屋のムードを生み出しています。昼間は窓からの光で爽やかに、夜間は灯りでほっこりとくつろいで過ごす。小さな照明器具がもたらす、ゆったりとした時間を楽しんでみてください。

布で気軽に模様替え

冬が長く日照時間が短い北欧ならではの土地柄なのか、太陽光を部屋に導きたいと思う気持ちが強いようです。また、フィンランドのマリメッコに代表されるビビッドで個性的なファブリックには、森や湖、鳥や植物などのモチーフが使われています。自然環境とは距離のある都市生活であっても、その絵柄から自然を身近に受け取れるかのようです。

日本の窓辺には必ずと言っていいくらいにカーテンが使われていますが、北欧ではそうではありません。カーテンには外からの視線や光を遮るという役目があるものの、北欧ではホワイトや明るい色をベースとして、窓からの光を部屋いっぱいに取り入れ、暗く沈んだ空間にならないようにしているのです。そのため、薄い生地を使って光の透け具合を楽しんだり、好きな色や柄の布を1枚吊るして気軽に付け替えたりしています。カーテンのように大きな布ではなくても、ランチョンマット1枚から自分好みの部屋にアレンジができます。

心地よく過ごせる部屋づくりが幸せの原点。椅子と灯りと布を取り入れて、よりいっそう自分らしくいられる空間を目指しましょう。


すはらひろこ
整理収納アドバイザー認定講師・一級建築士・インテリアコーディネーター。インテリアのプロならではの収納術が、オシャレでやる気がわくと好評。片付け講座を定期開催するほかテレビ・雑誌でも活躍。著書「シンプルに暮らす 無印良品で片づく部屋のつくり方」(エクスナレッジ)、「朝、着る服に迷わないハッピー収納術」(大和書房)、「1分からはじめるかたづけ術」(だいわ文庫)など著書・監修書多数。

 



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