■見えにくいエレベーターの場所を示す新たな誘導方法に

京浜急行電鉄は28日、羽田空港国際線ターミナル駅に導入する「錯視サイン」の報道公開を実施した。同駅では2番線ホーム(品川方面)に向かう改札を通ってすぐの場所にホーム階へのエレベーターがある。案内は出ているものの、死角となる位置にあるため、その先にあるエスカレーターに向かう人が多かったという。

  • 羽田空港国際線ターミナル駅に設置された、ホームへの行先を示す錯視サイン

そこで改札内コンコースの床面に、目の錯覚を活用した案内サインを設置した。これにより、カートに大きな荷物を載せた利用者が誤ってエスカレーターに向かうことなく、エレベーターを利用してホームへ行くことができるようになるという。

京急電鉄によると、言語の異なる外国人にもわかるものであり、それでいて案内看板のように場所を取らなことから、このような錯視サインを作ったとのこと。床に貼り付けた立体的な絵が行先を示すことにより、はっと目が行く案内をできるようになった。物を置くスペースも不要のため、視覚障がい者などの妨げにもならないとのことだ。

  • 従来は立て看板で案内していた

  • 天井でも案内していた

  • エレベーターは死角にあり、わかりにくかった

  • 立体に見えるものは、床に貼り付いている

  • 反対側から見てみる

改札からホームへ向かう際、エスカレーターまたはエレベーターを利用することになるが、エスカレーターに大きな荷物を乗せた場合、誤って落下させてしまう事故も起こりうる。そうした事故を防止するためにも、エレベーターへの誘導を行うこのサインは有効となる。「いままでの案内だけではエレベーターを利用できないという問題がありました。カートをホームまで押して行けることで、利便性も向上します。錯視サインには、床を使い場所も取らないというメリットもあります」と京急電鉄の担当者は説明する。

■作品展も開催、錯視の世界を駅に展開

この錯視サインは、案内サインが浮き上がるように見えるだけでなく、穴が空いているように矢印を見せ、それによってエレベーターに乗ることを促すしくみになっている。案内サインには日英両言語の表記に加えてピクトグラムも表示され、穴に見える矢印には青空と雲が描かれ、この建物が中空に浮かんでいるかのように見せている。

同じ錯視の手法で、京急電鉄1000形が壁から飛び出すかのように見えるフォトスポットも設けられた。そこに立って写真を取ることで、1000形の屋根の上に乗っているかのような気分を味わえる。このコンコースには訪日外国人を歓迎する「けいきゅん」の案内看板もあり、錯視サインと一般の案内看板ではどう違うのか、わかるようになっている。

  • 飛び出す赤い電車のフォトスポット

  • 横から見ると、壁・床に貼り付いていることがわかる

  • こちらは通常の立体看板

  • フォトスポットに駅長が立つ。電車の上に乗っているように見える

羽田空港国際線ターミナル駅での錯視サインの作成にあたり、明治大学研究・知財戦略機構先端数理科学インスティテュート特任教授の杉原厚吉氏が協力した。どんな図形を採用するか、またどのように見せるかをアドバイスしたという。結果として、穴に見えるような矢印を作ることになったとのことだった。

同駅のコンコースでは、錯視サインの設置とともに、杉原氏による「錯視作品展 ~杉原厚吉のふしぎ? 錯視展~」が5月6日まで行われる。杉原氏は不可能図形のだまし絵を立体化する手法を見つけた人物であり、今回の展示では円形が四角形に見えたり、矢印の向きが逆さまになったりする作品が展示されている。羽田空港国際線ターミナル駅を利用する機会があれば、ぜひ見てほしい。

  • 明治大学研究・知財戦略機構先端数理科学インスティテュート特任教授の杉原厚吉氏

  • 「錯視作品展 ~杉原厚吉のふしぎ? 錯視展~」では、杉原氏の作品が並ぶ

  • 鏡では違うように見える作品が展示されている

数理科学が駅の案内をわかりやすくする。今回の試みで、羽田空港国際線ターミナル駅のエレベーターの位置がわかりにくいという問題が解決されれば良いと思う。