――なるほど。ただ、乳幼児時期からスマホを使用するとなると、少なからず子どもの発育に影響も出てくると思いますが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

これはメリットとデメリットがそれぞれあります。まずメリットとして「大人が教えるのを忘れがちなことを学べる」という点が挙げられます。

例えば、「知らない人についていっちゃダメ」「いざというときにどうやって助けを求めるか」「赤信号のときは止まれ」など、大人からすれば「常識的すぎて教えていないこと」を教えてくれる知育アプリも最近はたくさんあります。もちろん、色や数字、文字、歌などの一般的なものも子どもたちはスマホから学べます。

また、実際に餅つきをした経験がない我が子が餅つきの真似をしたとき、臼の中の餅をこねる動作をしたことががありました。「どこで覚えたの? 」と尋ねると、「動画でやっていたよ」と。このような経験から、「育児におけるスマホ利用は一概にすべて否定的に考えるべきではない」と実感しました。

私の友人の子には、アプリをいろいろな語学で聞いた結果、5カ国語が話せるようになった子もいました。安全なものをチョイスして見せれば、子どもの教育にとってプラスになることもあります。

「使用前にお母さんと一緒に番組をチョイスする」「不適切な動画が見られないようにスマホにセーフサーチなどのロックをかける」「クレジットカードのようなお金が絡む情報はスマホ内に入れないようにする」といった工夫を事前にしておくといいですね。

――確かに「赤信号で止まる」なんて、大人からすると当然すぎて「教えないといけない」という発想に至らないかもしれませんね……。盲点でした。ではデメリットとしてはどのようなことが考えられるのでしょうか。

長時間のスマホ使用に伴う視力低下やスマホへの愛着障害が考えられますね。そのほか、「攻撃的になる」「抱っこを好まなくなる」「スマホで学んだ汚い言葉使いをまねる」「教えていないフレーズを口に出す」「じっとしていられない」「話を落ち着いて聞けない」「会話が一方的になる」「視線が合いにくい」「すぐに叩いたり蹴ったりする」などがあります。

また、子どもは授乳中にお母さんの顔を非常によく見ています。お母さんが授乳しながらスマホばかりいじっていると、子どもも「それが当たり前」と思ってスマホに依存するようになり、表情が乏しく、人の言うことを聞かなくなる傾向があります。

子どものスマホ使用、限度時間の目安は?

――大人でもスマホのゲームアプリに没頭するあまり、日常生活に支障が出る「ゲーム依存症」が問題視されているぐらいなので、子どもにも過度の使用による弊害が出てくるのは、ある意味で当然ですよね……。一日の使用時間の目安はあるのでしょうか。

おおよそ、「2歳以上では2時間まで」が一つの目安になるのではないでしょうか。それ以下の年齢のお子さんですと、一回の視聴を15分程度にとどめたうえで、一日に2~3回までといったところでしょうか。

テレビの話になってしまいますが、幼い子が集中できる分数で番組を完結させ、なおかつ子どもが興味を抱くように一つの番組を3~4つの展開で構成させている番組もあります。親御さんがお子さんと一緒にテレビをご覧になるなかで、こういった条件に合致する番組があれば、積極的に見させるのもいいでしょう。

私も2歳から高校生になるまで毎日、特定の教育番組を見て育ちました。子どもの教育に必要な要素もふんだんに盛り込まれており、小児科医の立場からしても推薦できます。

スマホの動画やテレビの視聴は一回あたり30分までにしておき、見終わったらダンスを踊るとかご飯を食べるなどして、子どもの目のためにも休憩を必ず取らせるようにしましょう。

――「スマホを見る際のルール作り」が大切だということですね。

そうですね。ルールという点では視聴時間の制限もそうですし、見る番組や動画を決めることも重要です。また、ご飯を食べながらなどの「ながら見」は、一つのことに集中できなくなる可能性が懸念されるため、見るときは見るだけ、食べるときは食べるだけに集中させるようにしましょう。その代わり、今日あった面白い話をしたり一緒に料理を作ってみたりと、子どもを退屈させないようにするのが大切ですね。

「子どもの1カ月は大人の1年」とも言われるほど貴重です。幼少期に豊かな心を育てられるよう、コミュニケーションの時間を減らさない努力をパパ・ママがしましょう。