先日の会議で、社長が突然「今度A社とB社とアライアンスを結ぼうと思うんだが」と話したそう。それって、合併するってこと? というわけで、今回は「アライアンス」の意味やメリットについて解説します。

  • 「アライアンスを結ぶ」の意味を理解していますか?(写真:マイナビニュース)

    「アライアンスを結ぶ」の意味を理解していますか?

アライアンスの意味や類語

ビジネスシーンで用いられる「アライアンス」は、企業同士の提携のことです。たとえば、開発に強い企業と販売に強い企業が協力して事業をおこなっている場合、両社はアライアンスを結んでいるといえます。

日本語の「業務提携」には、生産提携・販売提携・技術提携などさまざまな種類があります。さらに、資本をどちらかに注入したり、共同出資して新会社を設立したりする「資本提携」もあります。

アライアンスはこれらすべてを包括するので、よく使われます。必ずしも1対1の関係とは限らず、複数社による連合もアライアンスと呼びます。

英語の【alliance】は、本来は「同盟」という意味です。望む何かを一緒に達成するために、国や政党などの組織同士がとる姿勢を指します。日米安全保障条約による同盟もアライアンスですし、選挙で与党に勝つために野党が連合するのもアライアンスです。

ちなみに、allianceの語源はラテン語の【alligare】で、これは「結びつける、縛り付ける」という意味を持ちます。二つ以上の金属を混ぜて作る「合金」のことを英語で"alloy"といいますが、これもおなじ語源です。

日本では1990年代後半から航空業界などの国際的な提携が活発になり、アライアンスという言葉に触れる機会が増えていきました。そのため、今でも企業同士の関係を表す際によく使われています。日本語に置き換えたい場合は「企業同盟」「企業連合」「企業連携」などを用いるといいでしょう。

企業間でアライアンスを結ぶ理由

2015年にNTTデータ経営研究所がおこなった「企業のイノベーション・企業間アライアンスに関する動向調査」によれば、「既存市場での新しい製品・サービスの開発(41.2%)」、「マーケットシェアの拡大(36.2%)」、「新しい市場での新しい製品・サービスの開発(34.6%)」 のためにアライアンスを実施/実施予定しているという回答が最も多くなっています。 ※

※出典元:2015年10月1日 NTTデータ経営研究所「企業間アライアンスの成功と失敗を分ける分水嶺とは? ~ 企業のイノベーション・企業間アライアンスに関する動向調査~」

調査結果からは、マーケティング力を強化し、売り上げを増やすことがアライアンス締結の主な目的であることが分かります。互いのノウハウや技術、販売チャネルを持ち寄ることができるので、比較的短期に成果を出すことができるのです。

たとえばスタートアップ企業は、アイディアは優れているものの、ヒト・モノ・カネといったあらゆる経営資源が不足しています。こうした企業は大手とアライアンスを組むことによって、構想の実現に大きく踏み出すことができるのです。

M&Aとの違いについて

アライアンスはあくまでもパートナーとしての企業間連携であり、元請け・下請けなどの強い上下関係がある場合には使いません。M&A(merger and acquisition:合併と買収)との違いも、その点を抑えれば明確になります。

M&Aでは企業丸ごと、あるいは一部の事業を買収したり、吸収合併したりしますが、いずれも買い手側が経営権を引き継ぎ、売り手側はその事業に関する主導権を失ってしまいます。これではアライアンスとは呼べません。関係する両社がどちらも独立性を保てるのがアライアンスなのです。

企業を買収するにしても合併するにしても、経営者や従業員、債権者、株主などの多くの関係者を巻き込むため、M&Aの実行には長い時間と多額の資金を必要とします。この点、アライアンスであれば、より短い期間で相乗効果をもたらすことが期待できるのです。

その他のアライアンスの事例

ANAの飛行機を使って旅行したとき、「スターアライアンス」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。スターアライアンスは世界中のさまざまな航空会社が参加している航空連合であり、企業アライアンスの代表例です。1997年に5社の航空会社によって設立され、現在は26社が加盟しています。

スターアライアンスに加盟する各社は、マイレージの共通化や乗り継ぎの簡略化、共同運航の実施などを実施しています。互いに航路を紹介し、共同利用の価値を向上させることで顧客を獲得することがアライアンスの狙いです。世界の航空連合にはこの他にJALが加盟している「ワンワールド」や、「スカイチーム」などがあります。

たとえば、札幌の千歳空港から成田空港まで飛んで、さらにグアムに行く場合、アライアンスを結んでいる航空会社(スターアライアンスの場合はANAとユナイテッド航空)を使った方が便利というわけです。

アライアンスを用いた例文

「AIを用いた観光サービスを、アライアンスを組んで立ち上げることになった」

近年は、既存産業とIT業がアライアンスを組むことで新サービスを立ち上げる事例が増えてきています。自社でIT技術をゼロから習得するよりも、他社とパートナーを組んだ方が早期に実現することができるからです。

「情報流出のリスクを避けるよう、アライアンス契約はしっかりと確認してほしい」

アライアンスのデメリットとして、相手先のガバナンスが脆弱で、自社のノウハウ・技術・個人情報などが流出してしまう恐れが挙げられます。


ちなみに、アライアンスに失敗することを「ミスアライアンス【misalliance】」といいます。

英語の意味は、「身分違いによる不釣り合いな結婚」だそうです。合併に比べて少々緩い関係とはいえ、さらなる企業の発展のため、素敵なパートナーを見つけたいものですね。