ハウス食品はこのほど、京都大学・高野裕久教授と共同で行った、カレー粉およびカレー粉に含まれる4種類のスパイス(クローブ、ウコン、コリアンダー、桂皮)の健康効果に関する研究結果について明らかにした。

  • カレーおよび各種食品の抗酸化力

    カレーおよび各種食品の抗酸化力

同研究では、カレー粉などに含まれる4種類のスパイスに、PM2.5によって引き起こされる炎症反応を抑える効果を確認した。

PM2.5とは、石炭や石油といった化石燃料や薪などのバイオマス燃料、タバコの燃焼などによって生じる2.5マイクロメートル以下の粒子状の大気汚染物質のこと。非常に粒径が小さいため肺の奥に入り、細胞を傷つけ酸化ストレスや炎症反応を生じさせるという。

吸入すると気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器系疾患や、循環器系疾患などの危険因子と考えられているが、粒径が非常に小さいため、マスクなどで吸入を完全に防ぐことは難しいとされている。

同社によると、カレーは健康増進に効果があるとされるさまざまなスパイスが用いられているが、カレーの健康効果については、研究が進んでいなかったという。スパイス由来の抗酸化物質や抗炎症物質が多く含まれていることから、「カレーの摂取で酸化ストレスや炎症反応が低減され、健康に良い効果をもたらすのではないか」と考え、研究に取り組んできたとのこと。

  • カレー粉、クローブ、ウコン抽出物についての効果確認

    カレー粉、クローブ、ウコン抽出物についての効果確認

研究を行う中で同社が着目したのは、カレー摂取頻度の高い高齢者で呼吸機能が良好に保たれていることが疫学研究の結果として報告されていることだった。カレー中のスパイスによる抗酸化・抗炎症作用が呼吸機能を維持していると考えられるという。

そこで今回はカレー粉、クローブ、ウコン、そしてカレー粉に一般的に用いられるその他のスパイスについて、PM2.5による炎症反応を抑制する効果があるかを試験を行った。

最初にカレー粉、クローブ、ウコンのそれぞれについて、ヒト気道上皮細胞を対象に試験を行った。その結果、カレー粉抽出物、クローブ抽出物、ウコン抽出物は、ディーゼル排気微粒子(DEP)により引き起こされる炎症性サイトカイン産生(IL-6)を抑制することがわかった。細胞外活性酸素種の産生も抑制されており、PM2.5による炎症反応を抑制する可能性があることが確認された。

  • 炎症性サイトカイン産生を抑制する効果が確認

    炎症性サイトカイン産生を抑制する効果が確認

また、カレー粉にはクローブやウコン以外にも多くのスパイスが使用されているが、カレー粉からウコンとクローブを除いたミックススパイスについても、炎症反応抑制効果と細胞外活性酸素種を低下させる効果があることがわかった。

続いて、カレー粉に含まれるその他10種類のスパイス抽出物の効果について検証したところ、コリアンダー抽出物と桂皮抽出物にも炎症性サイトカイン産生を抑制する効果が確認されたという。これらの結果から、ウコンやクローブ同様、コリアンダーや桂皮も、PM2.5による炎症反応を抑制する可能性があることが明らかとなった。

  • 炎症反応をカレー粉に含まれる4種類のスパイスが抑制

    炎症反応をカレー粉に含まれる4種類のスパイスが抑制

以上の結果から、カレーの摂取量が多い人で呼吸機能が維持されていたことの理由として、カレー粉の抗酸化作用を通じた抗炎症作用によるものである可能性が示唆された。PM2.5による呼吸機能低下を予防する対策として、複数のスパイスを含むカレーの摂取が有用である可能性があるとのこと。

また、酸化ストレスや炎症反応は呼吸機能障害以外にも多くの疾患に関与していることから、抗酸化・抗炎症作用の高いカレーの摂取は、さまざまな健康機能を改善する可能性もあるという。

なお、同研究成果は2月1日から3日にかけて開催される第89回日本衛生学会学術総会にて発表される予定となっている。