夫婦ともに年収700万円超稼ぐ「パワーカップル」。消費市場を牽引し、高額なモノやサービスへの消費もいとわない購買力を持つと言われています。家計的には何の心配もないイメージがありますが、長い人生のなかではその油断が落とし穴になることもあります。今回は、家計にゆとりがあるパワーカップルが注意すべき点についてみていきましょう。

  • 「パワーカップル」家計の落とし穴とは?(写真:マイナビニュース)

    「パワーカップル」家計の落とし穴とは?

「パワーカップル」の消費実態

多くの共働き夫婦にみられがちなことですが、忙しくて家事にかける時間が少なければ便利なモノやサービスに頼りたくなり、消費支出は上がる傾向にあります。なかでも外食費や家事サービス、クリーニングなどの被服関連サービスなどの消費が目立ちます。また、家庭で調理する食材も、カット野菜や冷凍調理食品などが多くなるのはパワーカップルならずとも働く女性なら納得でしょう。

パワーカップル世帯に目を向けてみましょう。「夫婦ともに年収700万円超」がパワーカップルの定義ならば世帯年収は1,400万円超ということになります。総務省の「家計調査(2017年)」によると、年収1,500万円以上の世帯では、年間消費支出のうち、贅沢品的支出といわれる「選択的支出」が約60%となっています。共働き世帯の平均収入を約700万円とすると、年収700~750万円世帯での選択的支出金額は約48%ですから、12%分多く贅沢な支出をしている計算になります。

なかでも顕著なのが「旅行・宿泊」「スポーツクラブ」「教育」に関する費用。たとえば「旅行・宿泊」は一般的な共稼ぎ世帯の年間4万7,300円に対し、パワーカップル世帯では年間20万2,497円と4倍以上もお金をかけている計算です。スポーツクラブは約4.7倍、教育費用は私立校にかける割合が多いことから約3.4倍という状況です。

余暇を楽しみ、自分達の健康維持や子どもの教育にもお金をかけるパワーカップル。1つ1つのモノやサービスにかける金額も世間と比べて高価な物を選ぶ傾向にあるようです。

「パワーカップル」は家計にゆとりを感じている?

厚生労働省が発表している「国民生活基礎調査(2017年)」によると、総世帯5,043万世帯のうち年間所得が1,400万を超えている世帯は4.4%、全世帯の平均年間所得は560.2万円という状況です。

同調査では、全世帯に対する生活意識の状況も調べていますが「大変ゆとりがある」と答えているのは全世帯のうちわずか0.7%。「ややゆとりがある」という回答が4.3%です。どの所得層がどのように意識しているのかは当調査では示されていませんが、少なくとも、一般的に「大変ゆとりがある」イメージがあるパワーカップル自身はそうは思っていないことは推測できます。

前述したパワーカップル世帯の消費実態からもわかるように、お金があればあるほど高価なものにもお金をかけられるのが通常です。それにも関わらず、「大変ゆとりがある」と思えないのは、お金を使うことが当たり前となっているからかもしれません。高額消費が当たり前になってしまえば、収入的にいくらゆとりがあっても満足度に対するレベルは高くなるばかり。ゆとりへの認識度が薄れていると考えられそうです。

ライフスタイルが変わるリスクに要注意

世帯年収は同じでも、夫婦のどちらか一方が稼ぐよりも2人で稼いでいるほうが、消費意欲が増すといわれています。これは、万一、どちらかに何かがあっても安心という感覚と、互いに遠慮なくお金を使えるという解放感が原因と考えられます。

そのため家計管理に対してあまり深刻に考えることができず、なかには「稼いでいる割に貯蓄がない」という家庭もあるほどです。多額のお金を使っても、それを上回る収入が継続してあるうちは難なく家計は回っていきます。しかし、生涯現役といわれるようになった現在でも、生涯高収入を維持できるとは言い切れません。

今回紹介した統計データだけではパワーカップル世帯の年齢層や家族構成は読み切れませんが、一般的に考えるなら、子どものいない夫婦、ある程度社会経験を積んだ晩婚夫婦などがイメージできます。その場合、将来的に子どもを授かるかもしれませんし、あっさりキャリアを捨てて子育てに専念したいと思うようになるかもしれません。しかしながら、これまでの高額消費グセはそう簡単に変わることがなく、収入が半分になっても支出は変わらないという赤字体質に陥る可能性もあります。

ライフスタイルの変化はいつ、どの世帯に、どのようにやってくるかわかりません。しっかり稼いだ分、ご褒美として出費するのは悪いことではありませんが、高額出費をすることの必要性をあらためて考えみましょう。パワーがあるときだからこそ、ライフスタイルが変わるというリスクに備えてしっかり貯蓄もするべきでしょう。

リタイアした後の生活に備えておくことも大切です。とくに旅行などの余暇に対する支出に慣れている夫婦なら、時間に余裕ができるリタイア後には更なる支出増が予想されます。お金に余裕のあるいまのうちだからこそ、投資商品などにお金を回し、金融資産を増やすことも検討するようにしてください。

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著者プロフィール: 續 恵美子

女性ファイナンシャルプランナーによるお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター。ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)。生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。