ホテルのカテゴリーは多様だ。シティホテルにビジネスホテル、リゾートホテルやカプセルホテルなど、それぞれの業態に応じてサービススタイルも異なる。

筆者は、『ホテル評論家』として“横断的評論”を心がけている。さまざまなスタイルのホテルを利用者目線で横断的に批評することで、評論活動におけるホテルサービスの最適解を導きだそうとしているのだ。「ラブホテル」もそのフィールドである。

今回は「ラブホテル」について話を進めよう

ラブホテルは「レジャーホテル」へ

ラブホテルとは伝統的な表現であり、近年業界では「レジャーホテル」という呼称が一般的だ。筆者が連載している業界誌のタイトルもレジャーホテルという用語を用いている。以前ネット記事で、“ラブホテルは昔ながらの淫靡な雰囲気を醸し出している施設”で、レジャーホテルは“現代的なおしゃれ感のある施設”を指すという見解を見かけたが、あくまで呼び方の変化であり、ラブホテルがレジャーホテルと言われるようになっただけだ。

近年、ラブホテルはレジャーホテルと呼ばれている

呼称はさておき、現代的でおしゃれ感のある施設が増加していることは事実である。確かに昔ながらの淫靡な雰囲気を醸し出している施設も存在感を放つが、多様なスタイルのホテルが誕生する中で、レジャーホテルに区分されるものの、淫靡な雰囲気が見られないホテルが生まれているのだ。リゾートホテルのようなクオリティに加え、一般ホテルに近い形態で利用できる施設もある。

フロントでの対面手続きも珍しくなくなった

では、レジャーホテルの定義とは何か。

レジャーホテルに限らず、料金を受領して人を宿泊させる場合、「旅館業法」が適用される。旅館業法では「旅館・ホテル営業」のほか「簡易宿所」(カプセルホテルやホステルなど)、「下宿」とカテゴライズされているが、レジャーホテルは当然のことながら「旅館・ホテル営業」として届け出されている。

中でも特有の設備を持つ施設は、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)第2条第6項第4号の「専ら異性を同伴する客の宿泊・休憩の用に供する政令で定める施設を設け、当該施設を当該宿泊・休憩に利用させる営業」に該当する。

それら施設、設備などを設ける場合は、旅館業法の許可と共に風営法の届け出をしなければならず、店舗型性風俗特殊営業の4号営業に分類される。業界ではこのような設備を持つレジャーホテルを「4号営業ホテル」と呼んでいる。

4号営業ホテルには「フロントによる対面接客がないこと」や「客室で自動清算できる機器を設置していること」など、さまざまな要件があるが、その一方で最近はフロントでの対面接客がある施設も目立つようになってきた(対面接客のないレジャーホテルにも正確にはフロントがあるが、遮へいされた場所にありスタッフの顔も見えないようになっている)。

「新法営業ホテル」のフロント(左)、客室に設置されていない新法ホテルの自動精算機(右)

対面接客で料金や鍵のやりとりが行われる施設は、一見するとレジャーホテルでも、実は風俗営業法が規定する要件にはあてはまらない。これらの施設は、ホテルを4号営業ホテルに対して「新法営業ホテル」と呼んでいる。4号営業許可はハードルが高いことも、この「レジャーホテルの一般ホテル化」という新たなフェーズ移行が進んでいる一因なのかもしれない。

「ホテル不足」がレジャーホテルの人気を後押し?

新法ホテルとレジャーホテルの一般ホテル化について考察してきた。

男女が特定の目的のために利用する施設という側面を保ちつつ、ビジネスプランの提供や女子会プランなど多目的な利用が周知されている現況もある(4号営業でもビジネスプラン・女子会プランなど提供する施設はある)。アメニティや備品、食事のサービス、ドリンクサービス等の充実もレジャーホテルの定番であり、レジャーホテルがセレクトされる理由になっている。

「タオルウォーマー」が用意されていたり、無料でスイーツを選べたりと、サービスが充実している

ここで誤解のないように申し上げたいのは、「業態としてはレジャーホテルに区分されるものの淫靡な雰囲気は皆無で、リゾートホテルとしてもクオリティが担保できるような施設も増えている」という前述部分であるが、これは決して“4号営業=淫靡な雰囲気の施設で、新法営業はそれ以外”ということでない。4号営業であっても一般ホテルでみられるようなコンセプトを有するホテルもあるし、新法営業でもアダルトな雰囲気を持ち合わせる施設もある。

近年訪日外国人旅行者の激増もあり、ホテル業界が活況を呈している。それに伴い、これまでになかったスタイルやサービスが見られるホテルが増えている。たとえば、デイユース(休憩利用)といえばレジャーホテルの十八番だったが、最近ではビジネスホテルなども積極的に採用する利用形態だ。一般ホテルのスタイル多様化は、レジャーホテルの業際化ともいえる新たなシーンを創出している。

ここ数年、ホテル不足問題という観点からもレジャーホテルがフィーチャーされている。一般の宿泊予約サイト(OTA)でもレジャーホテルの取り扱いがなされるようになった。都市部では駅近や繁華街至近といった場所に立地していることが多く、何より客室の設備、アメニティについては一般ホテルを凌駕しているケースも多い。たとえば、ドライヤー類4台というのはレジャーホテルでは常識である。

複数のドライヤーが用意されている

そのほかにも、一般ホテルは相応の料金変動がみられる中、レジャーホテルの料金は均一感があったり、一般ホテルが満室でもレジャーホテルは稼働に余裕があったりすることも、レジャーホテルの人気を後押しする。ホテル不足問題は、レジャーホテルの一般ホテル化への流れを促進し、かつその周知性を高めていると言えるだろう。

次回も引き続き、レジャーホテルについての話が続きます。ホテル評論家の選ぶ、3つの“驚きのレジャーホテル”とは? 掲載は1月5日を予定しています。

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(瀧澤信秋)