フジテレビが秋の新番組を発表した改編説明会から10日後の昨年9月13日、さらに将来の新番組が産声をあげようとしていた。この日行われたのは、フジのバラエティ番組を制作する編成局制作センター第二制作室が開催した、公開イベント形式の「第3回企画プレゼン大会」。

1年前に行われた第1回で優勝した千葉悠矢氏(当時入社2年目)の『超逆境クイズバトル!!99人の壁』は、レギュラー化され奮闘中だが、今回はどんな企画が番組化されたのか――。

  • フジテレビ「第3回13階クリエイター企画プレゼン大会」ファイナリストの面々

第二制作室のオフィス階数にかけて「13階クリエイター企画プレゼン大会」と名付けられたこのイベントは、会場に集まったフジテレビ社員らの投票で上位に入った企画を、編成部が枠を空けて番組化を即決定。前回までは上位3本を選出していたが、今回は上位2本に加え、“トライアウト枠”として編成部に推薦されるというシステムだ。

集まった企画は、フジ社員43本+外部スタッフ16本の計59本で、8本がファイナリストとして登壇。プレゼン大会の立案者である坪田譲治第二制作室担当局長は、ヒット映画『カメラを止めるな!』を念頭に、「予算がない中でも、極上のエンタテインメントが作れるということを我々に示してくれた。“テレビを止めるな!”もっと言えば“フジテレビを止めるな!”という気持ちで、夢のある企画がこの場から生まれることを願って開催したいと思います」と期待を示した。

会場に配布された企画書

こうして始まったプレゼンは、口頭で1人持ち時間3分・A4用紙1枚の企画書で説明していくが、今回から小道具の使用を解禁。スケッチブックでのフリップ芸や、ドローンを飛ばすといった仕掛けも見られ、会場は大いに盛り上がった。

会場には今年入社した新人アナウンサーの姿も。「年齢の近い若い方が多くて、ビックリしながら楽しく見させてもらっています」(今湊敬樹アナ)、「面白いことを考えている方がいっぱいいらっしゃるんだなというのがあらためて分かって、とてもうれしいです」(井上清華アナ)、「いつか担当できたらいいなと思える企画がたくさんあって、とても楽しんでいます」(杉原千尋アナ)と、目を輝かせて感想を語っていた。

■芸能人が“期間限定の転校生”に

この結果、第2位(銀メダル)に選ばれたのは、入社5年目で現在は『ホンマでっか!?TV』を担当する田中良樹氏の『BACK TO SCHOOL!』(1月3日24:50~)。芸能人が“期間限定の転校生”として実際の高校に入学し、学生たちと一緒に高校生活を送ることで、当時かなわなかった青春を取り戻すという内容だ。

田中氏は、ある女性タレントが「高校が通信制で6人のクラスだったので、学園ドラマみたいな青春を送りたかった」と願望していた例を紹介。その上で、「教室に入って制服を着て、徐々に昔の自分に戻って、当時の空気感や若い時に思い描いていた夢や悩みを思い出す一方で、クラスメイトの中に昔の自分と同じような人を見つけて、恋に悩んでる人に告白のお手伝いをするときに『今やんなきゃ後悔するよ』という言葉が出たら、その言葉は生徒に向けての言葉でありながら、おそらく昔の自分から自分に言われてるメッセージになる。そういうことが描けるんじゃないかと思います」とポイントを説明した。

それを見た視聴者側も、昔の自分と今の自分を絡めることで、「明日からも頑張ろうと思ってもらえるような番組にすることが、今求められているリアルな番組じゃないかと思います」と力説する。

さらに、入社5年目ということで「フジテレビが(視聴率)3位になってからこの会社を選んで入った人間ですので、ベテランの方より経験値は負けますが、フジテレビを自分の手でもう一度1位にしたいという思いは負けていません」と熱くアピールし、会場の心をつかんだ。

  • 『BACK TO SCHOOL!』(1月3日24:50~)
    写真は、プレゼンする田中良樹氏(左)と、転校生経験をした岡井千聖

■“下には下がいる”を活力に

そして、第1位(金メダル)に選ばれたのは、かつて『トリビアの泉』を立ち上げ、現在は『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』の総合演出を担当する木村剛氏の『私まだマシTV』(1月19日16:30~)。「小づかいが少ない夫」「貢ぎまくり女子」「超偏食家」などのテーマで、「よりヒドい人=違う意味で“上”の人」を探し出し、どちらが下か上かをスタジオでジャッジしていくという番組だ。

「パッヘルベル カノン」をBGMにフリップ芸スタイルの木村氏は「競争社会の中で、癒やされたい、ホッとしたいと思いませんか?」と切り出し、視聴者がこの番組で“下には下がいる”ことを確認することによって、「俺、まだマシかも」と、明日への活力がわいてくるのだと強調。「例えば『片付けられない女』『でかいミスをしたアスリート』『遅刻グセのある芸能人』…画力も考えられると思います。ゴールデンの対応も可です」「私のほうがまだマシと主張し合う姿が面白くなると思います」と、具体的な番組のイメージをかき立て、プレゼン力も相まって見事優勝を果たした。

しかし、このイベント冒頭で、齋藤翼編成部長が「若い人たちの力を精いっぱい応援したいと思いますので、頑張ってください!」とエールを送っていただけあって、入社21年目で参加者最年長の木村氏は、優勝のコールがかかった瞬間、その場で土下座。「若い芽が育ってきているのはもちろん感じていますが、ベテラン勢も頑張っていきたいなと思っております。これからもどんどん企画出していきますので、みなさんよろしくお願いいたします」と宣言しながら、「ここまで複雑な気分になることはそうそうない経験でして…」と苦笑いしていた。

  • 『私まだマシTV』(1月19日16:30~)
    写真は、プレゼンする木村剛氏

イベント後に取材に応じた銀メダルの田中氏は、木村氏の企画に「完敗だなと思いました。僕は、見た人が変わらないと番組として意味がないと思ってるので、そういう意味では一番見たい番組だと思いました」とお手上げ。その木村氏は、田中氏の企画を「見てノスタルジックな気持ちになる視聴者の方もいるでしょうし、『今やんなきゃ後悔するよ』という言葉も響くでしょうし、その1つ1つがドキュメンタリーの中に出てくると思うので楽しみです」と評価した。

また、このプレゼン大会について、田中氏は「新しい試みをしようという風土が、僕が憧れたフジテレビのバラエティなので、すごくうれしいイベントです」、木村氏は「単純に制作マンとしてうれしい限り。テレビのソフトを作るバッターボックスに立てるという場があるというのが一番いいことだと思うので、ありがたいです」と、印象を語っている。

坪田氏は「今回の企画は粒ぞろいだったと思います。本数は59本でしたが、1人3~4本くらい考えていて、その中から1本を厳選させているので、実は約200本から選んでいる珠玉の8本で、全体のレベルはいい感じでした」と総括。前回の第2回大会からは3本が番組化・放送されたが、「(銀メダルの)『ロケ最強芸人決定戦 外王』が、特に評判が良かったんです。演者さんも『もう1回やりたい』と言ってくれているので、第2弾も検討しています」と明かした。

■情報バラエティの演出にミュージカルを導入

そして、後日選考した“トライアウト枠”では、『ダウンタウンなう』総合演出の入社12年目・田村優介氏の『学べるミュージカる』(1月2日24:50~)を選出。普通にお店のロケをしていると、店員にふんしたミュージカル劇団員が、歌と踊りに乗せて楽しく情報を伝えるという斬新な企画で、「さまざまな情報バラエティがある中で、“伝え方”にこだわって見たら忘れない番組はどこにもないと思ってます」と力説した。

この企画のきっかけは、田村氏が体調不良で入院した際、映画『ラ・ラ・ランド』を見返したことだったそう。「ミュージカル映画って、普通に会話してるのに突然歌が始まりますよね。リアルじゃないのに、なぜストーリーが入ってくるんだろうと考えたら、やっぱり『次にいつ歌い出すんだろう』とか、『何を歌うんだろう』と思って物語に引き込まれるからなんですよ。この演出手法は情報バラエティ番組で効果的になるんじゃないか」と自信を示している。

なお、ミュージカル部分は、日本のトップランナーである東宝演劇部が全面協力するなど、力の入った企画になりそうだ。

  • 『学べるミュージカる』(1月2日24:50~)
    写真は、プレゼンする田村優介氏(左)とロケをする井上清華アナ・堤礼実アナ・杉原千尋アナ

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