JR西日本は新幹線の安全性向上の取組みについて発表した。新幹線重大インシデントから1年が経過したこの時期に、重大インシデントで明らかになった課題を再確認し、今日まで進めてきたハード・ソフト両面の安全の取組みを振り返るとともに、今後の新幹線のさらなる安全性向上に向けた取組みなどをまとめている。

  • JR西日本が新幹線の安全性向上の取組みについて発表

2017年12月11日、東海道新幹線名古屋駅にて運転を取りやめた「のぞみ34号」(JR西日本所有のN700系16両編成で運転)の台車に亀裂などが発見されるという重大インシデントが発生。点検の結果、13号車の歯車箱付近に油漏れを認めたために前途運休とし、その後の点検において当該台車に亀裂および継手の変色が確認された。

JR西日本はこの重大インシデントの発生を受け、台車の亀裂を見つけられなかったことから「車両の安全な状態を確保できなかった(リスクを許容レベルに抑え込めなかった)」、異常を感じながらも運行を継続させたことから「安全最優先の行動を実践できなかった」との課題を認識。また、「新幹線システムへの過度の信頼」による「新幹線の安全に関する感度の停滞」が背景にあり、「安全マネジメントに関する体制や仕組みが不十分」であることを本質的な課題としている。

これらの課題を踏まえた安全マネジメント改善の取組みとして、安全管理体制の強化「新幹線鉄道事業本部設置・新幹線専任の安全管理者の配置」、安全方針の制定と周知・浸透「現場の判断を最優先・安全を確認できない時は“迷わず列車を止める”」、安全重点施策の検討・実施「車両の安全確保・インシデント後に把握したリスクに対する取り組み等」、系統を超えたコミュニケーションの改善「クロスオーバーミーティングの実施・コミュニケーションツール充実等」、実践的な教育・訓練の充実「匂い体感訓練・合同シミュレーション訓練等」を実施している。

ハードウェアの面では、台車の異常を検知するセンサーの整備が進められ、地上から台車各部の温度の監視や温度の傾向から兆候を把握する台車温度検知装置は山陽新幹線新大阪~博多間に5カ所10台の整備を計画。車上装置では、N700Aタイプ16両(対象数32編成)に空気バネ圧力の異常検知装置の整備工事、N700系8両(対象数19編成)に台車部品の振動の異常検知装置の整備工事を2019年1~2月に開始する予定としている。700系の空気バネ圧力と500系の台車の動作音の異常検知装置についても技術的検証に着手する。

車両保守担当社員(走行管理班)の拡充も行われ、広島駅では12月1日に2名体制で、岡山駅では2月に2名体制で設置。これにより、2月から11月末までの間に、乗務員等からの申告を起点とした走行管理班の添乗が84回、乗り心地や状態確認を目的とした定期的な走行管理班の添乗が603回あり、車輪転動音の感知や空調温度センサー不良検出などが行われたという。

JR西日本はこれまでの取組みを振り返り、「新幹線専任の組織が機能し始めている」「異常を感知した際の指令への報告および“迷わず列車を止める”ことは着実に実行」「設備の小さな不具合にも適切に対処した事例」「情報を共有化しチームで新幹線の安全を確保できた事例」「建設的な声を上げる社員が増えてきた」と認識している。今後の課題として、「引き続き、安全方針の浸透に努めること」「チームとしての一体感を醸成する場の設定の継続」「センサー類の整備などのハード対策を計画的に推進」「実施した施策の継続的な評価、現場実態を把握する努力」を挙げた。