証券および証券関連団体などによる「証券コンソーシアム」の第二回全体会が8月22日に実施され、参加企業の代表らが集まった。

証券コンソーシアムは、証券および証券関連団体を中心にファンテック企業、大手テクノロジー企業など51社によって、業界横断的な基礎技術の研究と共通基盤の構築を推進するために組織。分散台帳技術(DLT)や生体認証(AI)などの先端技術を活用して新たな金融インフラを検討することを目的としている。

この日は、各ワーキンググループの進捗報告や、新規参加企業の代表による挨拶などが行われた。

  • 証券コンソーシアムの第二回全体会が行われ、多くの参加企業の代表が集まった

16社が新たに参加

会冒頭では、証券コンソーシアム会長のSBIホールディングス・北尾吉孝代表取締役社長が開会のあいさつを行った。「証券コンソーシアムは、経営効率をアップさせることでお客様の利便性を向上させることを目的としている。参加企業は当初35社だったが、今回51社にまで増え、大きなコンソーシアムになってきた。このコンソーシアムの成果が、最終的には貯蓄から資産形成へというところにつながればと考えている」と、証券コンソーシアムによって、より効率的に貯蓄や資産形成が行えるように取り組んでいきたいと述べた。

  • 証券コンソーシアム会長のSBIホールディングス・北尾吉孝代表取締役社長

新たに参加した企業は、既存の金融インフラやプラットフォームを提供しているエヌ・ティ・ティ・データや日本オラクルほか、ソフトバンクなど16社。新規参加企業の代表として3社があいさつし、各企業が情報共有することでユーザーにとって適切な方向性でさまざまな展開をすることを目指し、金融業界以外からの参加であってもQRコード決済への参画など新テクノロジー面での協力など、あらゆる方向から検討を進めていくと、それぞれ抱負と展望を発表した。

KYC(本人確認・本人認証)共通化に向けて

証券コンソーシアムではワーキンググループを結成しており、それぞれに研究や検討を行っている。この日は3つのワーキンググループで活動の中間報告が行われた。

最初の報告は、KYC(本人確認・本人認証)共通化ワーキンググループ。KYCとは、本人が本人であると確認し、認証する仕組みのことで、現在のところ口座開設時に一度だけ行われるのがほとんど。これを今後は投資におけるライフサイクルやライフステージの変化に応じてなどの必要な都度に行うことを目標としている。そのためには、業務効率化を上げ、一つひとつの処理に取り組んでいくことが必須となると考えている。そして、本人確認情報の保管と再利用までを最終目標にし、対面・非対面を問わず行うべくガイドラインを作成していくという。

  • 共通化の概念と課題について進捗が報告された

この秋から規制緩和や規制強化が進む関係で、その規制の両方に耐えうる新しいKYCの基本設計をするとともに、ユーザーのログインに関する負担を軽減することも検討する。実装時期については、リーダー企業である楽天証券がいち早く導入できるように進めていきたいと展望を報告した。

最先端技術で業務を効率化

続いて、共通事務ワーキンググループについて進捗報告が行われた。このグループでは、ファイナンスとテクノロジーの融合をテーマに、証券会社の枠を超え、IT企業などとの協力により最先端技術を活用してより業務効率を上げていくことを推進していきたいとしている。

SBI証券をリーダー会社に課題解決に取り組み、制度や法令解釈などに関しては、金融庁などと適宜情報交換を実施していく。課題については、証券会社が現在抱えている課題を洗い出し、IT企業などから技術的なアドバイスを受けた上で優先順位をつけて、サブワーキングを設立していく予定だという。

  • テクノロジーによって業務効率を上げること目的にさまざまな検討を行っていく

1つ目として、売買審査AI運用のサブワーキングが設立されている。これについては、2017年8月より、当ワーキンググループのリーダー企業であるSBI証券にて実証実験が行われている。売買の審査には、人手も時間もかかっていたが、AIを用いることで52~90%もの事務効率化が実現しているという。今後もサブワーキングを立ち上げ、さまざまな検討を進めていくとした。

DLT(分散台帳技術)導入へ

最後に、DLT(分散台帳技術)先端実験ワーキンググループより報告が行われた。このグループは、証券業界におけるDLTの導入を見据えて設立されたもので、証券業界のさらなる発展と、顧客利便性の向上と効率化を図ることでコストを削減し、そのコストを顧客に還元することで、顧客の貯蓄から資産形成への流れを促進していくことを趣旨としている。

  • DLT導入を見据えて、専門家や事例などを共有していく

活動としては、DLTの基礎知識や国内外の活用事例などを勉強会という形で共有していく。2018年9月より月1回のペースで、現在のところ5回が予定されている。この勉強会の中で、証券業界におけるDLTの導入を模索していく。第一回のテーマは「DLT及び仮装通貨を取り巻く法整備の状況」としている。今後もDLTに関するさまざまなテーマを予定している。

最後に、証券コンソーシアム副会長を務めるカブドットコム証券の齋藤正勝取締役代表執行役社長、野村ホールディングスの八木忠三郎執行役員、楽天証券の楠雄治代表取締役社長の3名があいさつを行った。その中で、八木執行役員は「証券業界については、異業種の金融参入が進んでいるが、競争分野と非競争分野があると考え、商品についてはおおいに競争をすべきであるが、バックオフィスについては非競争分野として業界全体で連携し、コストを下げることを目指すべき」と述べて、現在の証券業界が取り組むべき姿勢を示し、会を締めくくった。