頑張らないで可能性を引き寄せる簡単な方法

——たくさんお金を持って贅沢したいと思ったりすることはないのですか?
たまに外食することもありますけど、自分の生活スタイルが快適なので、それ以上何かしたいとは思わないですね。私にとって何が贅沢かというと、必要のないもののために働かなくて良い、会いたくない人に会わなくて良い状態でいることなんです。それらが既に叶ってしまっているので、それ以上の贅沢をしたいとは思わないですね。やらなくても良いことをしない自由。最高の贅沢です。

——人はやりたいことを考えがちですが、大原さんは違うんですね。
「やりたいことをやる」って聞くと、幸せの水準としては高めな気がしますよね。でも、「やりたいこと」は、「やりたくないこと」「会いたくない人」をリストアップして、ネガティブなものを排除しないと見えてこないんです。自分がハッピーでいられるためには、何が必要ないか、やりたくないことを引き算していくことが必要だと思っています。

これは、「自分がどうありたいか」を自分が決めるためにたどり着いた方法です。でも、ありたい自分でいるために最低限だけ働いて毎日健康で楽しく暮らす生き方は、世の中のマーケティングやしがらみから無視されていきます。放っておいてくれるんです。この、いろんなところから対象外にされている快適さは、一度知ると戻れませんね。

——「放っておいてもらえて楽」、とおっしゃいましたが、世間の対象外になることが不安という人の方が多いかもしれません。

私は今、社会のしがらみから逃れて隠居生活をしていますけど、このまま隠居生活に浸ることも、世間のマーケティング活動に乗っかることも、どちらにも行ける自由があります。その自分の位置をわかっていることで、不安を感じることなく余裕を持てているのかもしれません。

私自身を振り返ってみると、不安になるというのは、自分の幸せの基準をまだわかっていなかったからなんですよね。幸せの軸が自分ではなく、世間になってしまっていたのだと思います。

——世間では「やりたいことをやるために頑張る」という目標が必要だと、いいます。しかし、書籍の中で大原さんは「目標は持たないほうが良い」と述べています。なぜでしょうか?

私は、目標がない方が楽だし、寄り道をすることができるので、多くの可能性に出会えると考えています。目標というものは、ある程度自分の想像がつく範囲のことを設定してしまうじゃないですか。私は、20代で隠居して幸せになるなんて想像もしなかったし、目標にもしていませんでした。年収90万でも生きていけるなんて、全然思っていなかったですし、想像もつかなかった。しかも、その年収90万円をさらに下げて台湾にまで行ってしまうんですから。

こうやって、世界は自分の想像をちょいちょい超えてきます。でも、目標に縛られていると、越えそうな瞬間が見えないんです。想像を超えた世界の方が面白そうだなって思ったときに、いつでもそっちに転がれるようにしておくと、人生は実に面白い。社会全体も、もっと面白くなると思います。