2015年に『20代で隠居 週休5日の快適生活』(著:大原扁理/K&Bパブリッシャーズ/)、2016年に『年収90万円で東京ハッピーライフ』(著:大原扁理、イラスト:死後くん/太田出版)を出版し、その隠居生活が話題となった大原扁理さん。以前にマイナビニュースのインタビューでも紹介した、週休5日・月収7万円でもハッピーな生き方は、どこか仙人的であり哲学的でもあった。

そんな大原さんが現在隠居生活を営んでいる場所は、なんと台湾。しかも日本にいるときよりも収入は下がっているという。

昨今、貧困や格差、ブラック企業が社会問題となり、政府は働き方改革を推し進める。そんな試行錯誤で右往左往する世間から離れ、淡々とハッピーに生きる大原さんにとって、「働くこと」と「お金」とは何か。3冊目の著書『なるべく働きたくない人のためのお金の話」』(著:大原扁理、イラスト: fancomi /百万年書房)出版に際し一時帰国した、大原扁理さんに話を聞いた。

  • 大原扁理
    1985年愛知県生まれ、東京都在住。高校卒業後、3年間引きこもり、海外一人旅を経て、現在隠居6年目。最近、木食行(木の実だけて食べて暮らす生活)にあこがれている。著書に『20代で隠居 週休5日の快適生活』(K&Bパブリッシャーズ/1,300円+税)

さらに低所得となった台湾での隠居生活。でも幸せでいられる理由とは

——『年収90万円で東京ハッピーライフ』の出版後、台湾に行かれたのですね。なぜ台湾に行こうと思ったのですか?

1冊目の本が台湾で翻訳されたんです。ちょうど海外でもこの隠居生活ができないのかなって考えていて、それなら台湾にしようと決めて行ってしまいました。何も、日本でだけ隠居しなくても良いわけですしね。

——現地ではどのような仕事をされているのでしょうか。

基本的な生活は、日本にいるときと変わっていません。仕事のメインは、3カ月に1回くらいの頻度で日本の出版社から依頼される、旅行雑誌の取材と執筆です。他には、日本にいたときに介護の仕事の傍らにやっていた翻訳やメディアコーディネートですね。興味があることだけやっているので、楽しいです。

——台湾での生活はどうですか?
楽しいですね! そして、とても楽です。台湾は、屋台で食事をする人が多いのですが、その屋台はどの店も似たり寄ったりのメニューを提供しています。その中で、ものすごく人気があって行列ができる店も、その日の分を稼ぎ終わったら店を閉めてしまうんです。稼ぐことよりも、早く仕事を終えて帰ることを選ぶのですね。

「今日の分を稼ぎ終わったからもういいや」と、家族が待つ家に帰ったり、誰かと過ごしたりすることを大切にしているんだとわかります。日本のように、お金があることだけを幸せとは考えず、それぞれの幸せの形を持っているのでしょう。そんなところも、居心地が良くなる要因だと思います。

  • 『なるべく働きたくない人のためのお金の話」』(著:大原扁理、イラスト: fancomi /百万年書房)

——大原さんの収入は日本にいたときと同じくらいですか?
収入は下がりました(笑)! 日本でやっていた介護の仕事のように毎月決まった収入があるわけではないのですが、月に換算すると5万円くらい。でも、物価が低いので同じだけ稼がなくても良くて、台湾だと快適な生活を送るのに必要なお金が5万円だから、その分だけ稼いでいるという感じです。

——フリーランスになったということで収入が不安定になったわけですが、不安はないのですか?

今、台湾に来て1年9カ月ほどですが、「仕事がなくなったら日本に帰ればいいや」という気持ちで過ごしています。日本に帰ったら、いつでも介護の仕事に戻れるわけですし、焦りはないですね。それに、自分が必要なお金の最低限がわかっているので、その分が稼げていれば必要以上の不安はないという感じです。だから、変わらずハッピーですし楽ですよ。このスタンスは、日本にいたときと何も変わっていません。

——幸せの基準がしっかり大原さんの中にできあがっているということですね。
そうだと思います。私は20歳くらいのときから世界中を歩いていたのですが、実はそのころから生活スタイルが変わっていないんです。住む場所によって左右されない生活スタイルを持っていると、すごく楽なんですよね。社会の価値観が変わっても、同じように過ごしていくだろうなと思っています。自分の幸せの基準がわかっていれば、どれだけ世間の「こうあるべき」という風に吹かれても、ぶれないでいられるんです。